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散歩していたらカラスに頭掴まれたけど田舎者のプライドを保った話

 最近、ダイエットも兼ねて近所をよく散歩しています。
九州のド田舎から東京に出てきて約4ヶ月、スタバでMacBookを開いて仕事をしている人、立ち並ぶ高層マンションとそれに出入りするハイカラな家族、そんな風景を見ながら散歩をすることで、ポップでキッチュなアーバン感を存分に味わっています。

 そんなある日、ぼくはいつも通り軽く額に汗をにじませながら近所を散歩していました。
 とある駅前についた時、歩道橋を渡った先に昔ながらの床屋さんが目に入りました。実は東京に引っ越してきてから今まで、良い床屋さんに巡り合えず、街で床屋さんを見かけると欠かさず、値段と店内の雰囲気をチェックするようにしています。

 ちなみに少し話は逸れますが、一ヶ月前に行った床屋さんでは、後頭部をすごい高さまで刈り上げられ、完全なるカッパになってしまいました。
それがすごく恥ずかしかったので、家に帰ってすぐにバリカンを引っぱり出し、丸ボウズにすることでことなきを得ました。なので今はボウズが少し伸びた状態で、見た目はほぼほぼタワシです。

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 そんなことで、歩道橋を渡ってみることにしました。
 その歩道橋のすぐ左隣には、歩道橋と同じくらいの高さの木が一本立っていて、枝葉が少し歩道橋にかかっている状態でした。それを避けるように歩道橋の階段を上がっていくと、そこにはカラスが2羽、歩道橋の手すりに止まっていました。

あ、カラスだ。怖いけど、近づいていったら逃げていくだろう。

 そう思い、そのままカラスが止まっている歩道橋を渡り始めました。
カラスに近づいていき、2メートルほどの距離になると案の定、歩道橋に止まっていたカラスは、バサバサッと飛び去っていきました。

 ホッと安心して、そのまま歩き出し、隣に立っている木を左手に見ながら通り過ぎたその時、

バサッ!バサバサバッサ!!

と、その木から4羽のカラスが一斉に飛び出してきました。
 木の枝とカラスの羽が激しくぶつかり合う音と、けたたましい鳴き声が一気に響き渡り、心臓がキュッと小さくなるのがわかりました。
恐怖心から、ダッシュで逃げよう。早く歩道橋を渡り切ってしまおう。そう思い、一歩目を踏み出したとき、ふとこんなことが頭によぎりました。

ここは大都会東京、慌てふためいたら田舎者だとバレてしまう

 もしここでパニックになったら、歩道橋も落ち着いて渡れない田舎者と言うレッテルを貼られてしまう。
 そんなことを思った僕は、ダッシュで逃げ出したい気持ちをグッと抑え、すまし顔で軽く小走りで歩道橋を渡りきることに決めました。
 カラスのけたたましい鳴き声を背に、小走りを始めたその時、

ガシッ!!

頭をカラスに掴まれました。はじめての体験です。
しかもこちらはボウズ。装甲がうすいです。カラスの爪の感触をしっかりと感じることができます。
しかし、カラスに頭を掴まれても、僕の考えは変わりません。ダッシュはしません。強い気持ちで小走りを続けます。案の定、歩道橋を渡りきるまでに5回掴まれました。

 歩道橋を渡り、階段を下るとカラスは追ってこなくなりました。振り返るとそこには、歩道橋の上から見たこともない黒色をしながらこちらを見下ろしているカラスがいました。

#エッセイ



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