月桂

僕たちは確かに呼吸をしていた 誰だって正気じゃいられない

月桂

僕たちは確かに呼吸をしていた 誰だって正気じゃいられない

マガジン

  • 自粛生活

    自粛中に思ったことをつらつら

最近の記事

ぐう

滲み出た 宵に溶ける 傷が消えないほど年を重ねました 眠るだけの魔物 矮小な存在になってしまった気持ちはどうですか 正しい言葉を調べなくてはいけないほどに無知を拗らせる 馬鹿はヨイヨイパエリア三昧 殴られラブマッチングアワー 名も知らない男にインクをこぼす 急かされると泣いてしまうの なんだって浮世離れのあからさま ショートショートショート ポットをくぐり抜けた寂寞の彼方 柑橘のワックスをつけたから、きっと気づいてくれた 大人になったら、 好きな人と中古の家を買って金木犀と椿

    • rubber

      彼女は、中学校の時に永遠を誓った仲であり宗教そのものに近い プリクラに誓いをたてたよね 君にとって幸せの形が違っていても、パズルを削るのは得意なんだ お酒を飲んだら体が冷えてしまった 温めて とろけるチーズよりもスライスチーズの方がお好みかい

      • 無性

        目的のないまま惰性に生きていたくないのだ、永遠に命を燃やして生きていたいのだが。如何にもこうにも、僕には陳腐な炎に見えてしまう。転んだ時の高揚感に身を任せて、踊った痕跡をつるりとなぞる。彼女のピアノを弾く指先が、髪型が、眼鏡が。全てをみていたいが逃げられてしまうことを恐れこうして管を巻いている。小指でワセリンをひとすくい。唇に色を灯してはにかむ、目尻の皺一本一本が深くなる、腰が曲がって立てなくなる、指輪をした左手の薬指を燃やす。 打ち込まれた抗生剤。ジュリーによろしく。 君に

        • 明くる夜

          予備を持つことは嫌いなので なんとかはならないのです 天国とか楽園だとかそういったモノに 左心房を奪われていました 敬語が抜けなくて困りました しつこくこびりついた内腿の黒子 いゝ加減にくださひよ 君の思い通りにならない私が好きなら黙って 誰もが 誰もが 煌めきに目玉をくり抜かれてはいけない もうリセッシュは効かない 汚らしい、もう一人称も使えやしない 21gの救いをよこせ 傲慢さが運転にあらわれております 許されたいだなんて 阿呆なことをおっしゃるのですか

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        • 自粛生活
          4本

        記事

          昏睡

          あえやかな吐息 鼻がひん曲がるような悪臭が漂ってくる いつのまにけがれてしまったんだい お気に入りのタオルでくるんだ 愛おしかった慰め きらびやかなベッドタウン 火傷跡を見ないで レモングラス 気を失うように首をかたげる 意識が消えそうだ 麻酔の死亡率はわずか デスマーチに参列いたしますか? 夢も見させないで 左手でもてあそんだ 契約を交わした薔薇色の人生 約束は破るためにあり、死は平等に訪れる あんまり死んでは死神がかわいそうだろうか

          バランス

          比較的、いわゆる「正しい生活をしている人」に近づいてきた気がする 朝に太陽の光を浴びて起きる 野菜は残さず食べる 毎日お風呂に入る 素直さは美德 目覚ましが鳴る前に起きることができるようになった 少し悲しい アルバイトを掛け持ちして 週に一回の授業に行って 毎日バラバラにちぎれた生活をしている私も愛おしかったのだ

          バランス

          季節が知らない間に変わってしまった。 あの花も、湿気のある匂いも。 草は刈られてしまって、藤の枝も垂れ下がるほどに生い茂っている。

          季節が知らない間に変わってしまった。 あの花も、湿気のある匂いも。 草は刈られてしまって、藤の枝も垂れ下がるほどに生い茂っている。

          自転車と拙い旅をした 幼い頃の耳にいた蛙の鳴き声 畦道ですれ違うおじさん 湿気を吸って波打つ髪の束 揺らめくカーブミラー セーブポイントの公園 ここへ来るまでに三回人影を見たが、全て自分の影であった まつげが夜に反射した 海までは遠くて戻れない ひれはパーカーにしまって 鱗を撃ち抜いたの こんなに気持ちいいのに、一時間で終わっちゃうんですか 腹の縫い跡は押すと痛い ここからは立ち入り禁止です ご協力宜しくお願いいたします

          さめる

          得意氣に唸つちやつてさあ 雜音消去のヰヤホンで何から守れると御思ゐですか 一緒に狹ゐ浴槽で呼吸を分けあふ ぢつとり汗ばんだ背中はひんやりしてゐて 冷ゑ性な私より先に、夏の訪れを感じてゐた 本日の晩御飯はラムネで御坐います バタアとマアガリンはべつもの チヰズはくせものぢやあ であへであへ うなじに開けたピアスが痛む 記憶にこびりついた頑固者はお掃除 いややつぱり幻肢痛だつたのかも 困つちやふのヨ 私は聖人ぢやないの 君のことを救へないの な

          さめる

          名前

          私は自分につけられた名前になろうとしている 名前にふさわしい人物を目指した 「あー、それっぽい」とか言われてみたり 昔から名前はいじられる原因になる 特徴になるからだ 自分の名前は特別だと、誇らしく思っていた もうそのくだりは聞き飽きた そのいじりはもうつまらない 冗談だと、笑えると思っているのか 一生付き纏う呪いをかけるのか 馬鹿にされてみろ 存在否定にも等しい 君は名前で泣いたことはあるか 男か女なんて関係あるのか なんて返答すればいい いい加減にしてくれ 名前を

          準備

          これは垂れ流しだから気にしないで 私は、生殖行為の準備に大変魅力を感じる 魅力、よりも興奮の方が合っているかもしれない 前段階で興奮するから、本番になると萎んでしまう 非常に申し訳ない 事前の食事は少なめに シャワーを浴びて、肌を整えて 体は温めておいて 水分は多めに摂取 装飾品は外して 髭を剃って、爪を切って タオルはそばに 薄くお化粧をして 香水は少なめに 相手を傷つけないように補助道具を使って 生きるために備わっているものを手放した行為は、慈愛に満ちているような錯覚

          観察日記

          実は、少し期待していたんです 君ならきっと許してくれると思ったから 僕たちは、やっとここまで似てきたんだ 好きな味も 仕草も 脈拍数も 覚えたての癖をなじませて 花の冠は完璧に作れる 爪も欠かさず切る 皺も黒子も素敵だ どうにかして取り込みたかった そっくりな名残と残骸 もう覚えていない自分の癖 あの興奮は一生わかるまい 死にたくなる

          観察日記

          自粛生活 3

          緩やかな自殺行為 マスクの紐が回り回って首にかかる 跳ね上がる光熱費 垂れ下がる二重顎 ふっくら焼けたパン ためこまれた在庫 お持ち帰りされたっていいじゃない 需要があるうちに切り売りしないと どうにかこうにか生きているのだから 生涯で一度はこんなことが起きる予定調和 神様って概念捨てちゃって 仏壇にお供えしたご飯はもう腐っている 減らないラメのアイシャドウ 穴の塞がった耳 粉物に湧き出る虫退治 地震雷火事親父 なんて通用しない 人は忘れる生き物 断捨離で候

          自粛生活 3

          軟化

          ぬるくなったコーヒーはまずいから 歌詞の意味に共感するようになったら気をつけて 感受性が上がっているのなら 私のお葬式に涙を流して カッコよくハウリングしたマイク 手放した豊かな暮らし うなじに噛みつく 舌にのたうちまわる青 金属の痕跡 消えない痣 素直さにひれ伏せ 歯磨きは忘れないで 時には二人で散歩して お洒落をしたら褒め合おう 月に一度だけ贅沢をして お互い健康を目指そう 幸せになろう 虫食いだらけのからだ 空っぽに 寒いから温めて 羽化させて 変化を疎まないで

          売買

          なんてわがままなんでしょう 友人の友人と会う時の気まずさ 犬か猫か見分けのつかない狸 特売大セールだよ 寄ってらっしゃい見てらっしゃい うちではぶすくれているあの子 いきいきしているだなんて、魚みたいな言い方 買ったら買った分だけ酒は消えていく 体の内側から消毒を 洗濯をしたてのお気に入りのタオル プラグの違うイヤホン 端子が間違っていますよ 聞こえるようにチャンネルを合わせて 旧仮名遣いで私の名前を呼んで 春はお嫌いですか 夢のようなひととき 知らない女の名前 いつもの

          髪を解いた瞬間思わせぶりにため息 狂ったパース ずれた消失点を追いかける 熱い唇がお好きかしら 明るいのは嫌だから電気を消して 見なくていいものまで見えてしまう 育たない観葉植物 今、僕はあなたの腕の中 あなたにも産毛が生えていて 人間であることを確認し心の底から安堵する 油性のボールペンは粘ついていて嫌になる 一人の夜に戻らせて 遊んで祈りを捧げて 上書き保存の準備はお済みでしょうか やっと洗濯をした枕カバー 散らばした花弁 哲学的な質問ですね ぶっ壊してやるから 覚悟をし