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クルール・プレフェレの話 〜パパン編〜

なしみです。
引き続きこちらもよろしくお願いいたします。今回はヴィオレッタに続くクルプレ重要人物のパパンのお話です。

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「おやパパンちゃんじゃないか!おはよう、今日も元気だね〜」
「おはようございます!行ってきま〜す!」

「パパンちゃんいらっしゃい!焼きたてだよ〜」
「わあいい香り!どれも美味しそ〜う!今日はどれにしよっかな〜……」

「あ、パパンこの前公園で転んでたでしょ〜」
「見られてた〜>< でも平気!」

あの子が駆けると挨拶したくなる。あの子と話すと笑顔になる。あの子の明るい笑顔は皆を元気にする。あの子にはどこか街を活気づける不思議な力も感じる、そんな気もする。

パパンは郊外に住む女の子。夢に向かって勉強するため、オシャレで可愛いお店を求め、大好きな友人に会うためによく街へ出かける。誰にでも笑顔で接する明るい性格のため人々の評判は良い。ちなみによく走り回っているのだが運動音痴のためよくつまづく。……と言っている間に既に2回ほど転びそうになっている。

ある日友人へのプレゼントを買いに街を巡っていると見慣れない店を見つける。あまり通らない道のため記憶が曖昧だが、確かこの店はしばらく誰も管理されていなかったはずだ。以前は……なんだっけ、それすら思い出せないくらい人から忘れられている。だが今は外観がきれいに塗り替えられ電気も付いている。よく見ると人影もある。ひっそりとできた新しいお店だと思い、何のためらいもなくドアを開ける。

「こんにちはー、何のお店ですかー?」

中も劣らず清潔で少し高級感があるオシャレな空間が広がっていた。だが寂しい雰囲気が漂いワクワクする感じが湧かない。

「あらごめんなさい。まだ開店の準備すら終えてないの。」

しまった、まさかの開店前!!寂しい雰囲気の正体はこれだったのね!!ということはこの方はお店の人……?店長さんなのかな?髪型がフワフワのホイップクリームみたいだから……ひょっとして新しいパティスリーかな?でも今ここに長居するの失礼だよね〜、ずっとこちら見てくるしすごく考え事しているしさすがに居心地悪いな〜。ひとまず今日は帰って開店したらまた行ってみようかな……。そう思い店から出て行こうとする。

「すみませんでした。また日を改めて……
「ちょっと貴方!待ちなさい!名前なんて言うのかしら。」

突然大声で引き止められ、思わず名乗ってしまう。

「ひえ、ビックリしたー!えっと、パパンって言います。」
「ワタクシはヴィオレッタ。これからここでパティスリーを開こうと思っているの。もし良ければワタクシの力になってくれないかしら。」

私が……力に?何のことか分からないまま新品のソファに案内され経緯を聞くことになる。ヴィオレッタは突然父親から店を貰い、立て直して新しいパティスリーを始める予定であること。人手が足りないので欲しいこと。そしてゆくゆくは街を代表するパティスリーを目指すこと。あれ、お客さんになろうとしたのにひょっとしてお店に立つ側になりそう?でも好きなものに囲まれてお仕事するんだよね?友達と一緒にできたらとっても楽しそう!あれこれフワフワと店員側になって想像をしているとヴィオレッタが動き出す。

「パパン、私とここでこの店を盛り上げてくれないかしら。もちろん報酬は払うわ。」

予想通りの展開ではあったがやはり目の前で言われると少し驚く。でもスイーツが大好きで好奇心もあるパパンは当然断る訳がなかった。

「ヴィオレッタさん、私頑張ります!よろしくお願いいたします。」

***

「……ていうことがあったの!私びっくりしちゃった〜!でも楽しみだな〜。」
「すごく楽しそう!パパンちゃんなら大丈夫だよ」

数日後、パパンは一番の親友であるシャルロの家にプレゼントを渡しに出かけていた。シャルロは街の隅にある借家で暮らしている。狭く古い建物だがパパンはお構いなしによく出入りしている。2人で紅茶を飲みながらヴィオレッタの新しい店の話をしている。シャルロはスイーツ作りが大得意なのでこの話に興味深々である。だが……

「私も一緒に働いてみたいけれど……ごめんね。体調が心配でみんなに迷惑かけちゃうから……」

シャルロは幼い頃から体が弱く、すぐ体調を崩してしまう。そのため普段は学校へ行かずパパンから教科書を借りて家で勉強している。以前は作ったスイーツをイベントで販売していたが体調不良を理由に今は外すら出る機会を失っている。他にも事情を抱えているが、それらを知っているパパンは無理を押し付けることはしなかった。

「ううん、大丈夫だよ。まずはヴィオレッタさんと頑張ってみるね」
「お店楽しみにしているね。もし力になれることがあったらお話してね。」
「どのスイーツを作るかとか参考にしたいな〜!そのときはお世話になります!」

ヴィオレッタとパパンの2人となった新しいパティスリー。まだ課題は多いが新たな一歩を踏み出せた。これから開店に向けて準備が進むのである。だが、店の名前はまだ決まっていない。