クルール・プレフェレの話 〜ヴィオレッタ編〜
なしみです。
本日から不定期でクルール・プレフェレ(略:クルプレ)のお話を更新していこうと思います。と言ってもメモ書きをお話風に改造したものですが。超久々にお話を考えて書くので頑張っていこうと思います(誤字や変な文章は発見次第修正予定)。今回は店のオーナーでリーダーのヴィオレッタのお話です。
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舞台はどこかの国にある小さな街。
メインストリートにはたくさんのお店が並び、着飾った人々が流れてゆく。都会とまではいかないが街全体が華やかで溢れている。そこから1本入った道沿いに活気を失い寂れた店があった。
「はあ……こんなボロ店を任されるなんて」
1人の貴婦人が呆れたような様子で店を眺めていた。彼女の名前はヴィオレッタ。起業家の娘で我が道を貫く堂々とした性格。だが、そんな彼女も店に入るのを戸惑っている。この店は父親が数年前に開業した店の一つでパティスリーとして営業していたそうだ。しかしこの店だけ全く経営が上手くいかずわずか2年ほどで閉店。以来人から見捨てられたままである。ある日父親から挑戦状として突然立て直すよう鍵を渡されたのだ。立て直すというか、もう一からやり直した方が良さそうである。店の前にずっといても仕方がない、まずは入って状況を確認するかと気合を入れて店の玄関口を開けた。
ところどころ塗装が剥がれた店に入るとショーケースや棚は埃だらけ。奥のキッチンもせっかく機能が整ったものが揃っているのに埃のせいで古びたように見える。天井にはクモの巣もあり……これ以上は見なかったことにしよう。廃墟同然である。いち早く清潔な場所にしたいため、まずは知り合いの業者を呼び掃除や修復を行った。1階の店舗部分と2階のオフィス部分は1ヶ月かけて人に自慢できる程の美しさを取り戻し、ついでに店舗部分の外壁も薄い紫色に塗り替えた。せっかく自分の店になるのだから好きな色にしても許されるだろう。
次は経営の方向性だ。父親の代ではケーキのみを販売していたそうだが他店舗と商品の種類に差がなく競争に負けてしまったらしい。今まで競争に勝ち続けてきた父親なのにどうしたものか、とヴィオレッタはため息をつきながら思う。しかし彼女も何を販売するか全く決まっていない。これでは父親の二の舞だ、それだけは勘弁である。経営に関する手続きの準備は進むが商品のラインナップが決まらないまま数週間が過ぎた。
ある日、空のショーケースをぼんやり眺めていた。
ショーケースを見れば何か思いつくかもしれない。あーやっぱり思いつかないものね。仕方ないから棚の移動でもしようかしら。照明も変えようかしら……そう考えているとドアが開いた。
「こんにちはー、何のお店ですかー?」
まさか始める前に客が来ると思わなかった。照明をつけていたから勘違いをしたそうだ。仕方ない、ここは断って後日来店してもらうようにしましょう。
「あらごめんなさい。まだ開店の準備すら終えてないの。」
入ってきた女の子は見たところ10代後半、格好を見るなりいかにも可愛いものやスイーツが好きそうだ。どこでケーキのような小さい帽子とマカロンを彷彿させる衣装を手に入れたんだ。ん、待てよ。この子が間違えて入ってきたということはある程度若者には受けるかもしれない。この子から聞き出せば良い案が浮かぶかもしれない……あ、帰りそう!帰らないで!!
「ちょっと貴方!待ちなさい!名前なんて言うのかしら。」
「ひえ、ビックリしたー!えっと、パパンって言います。」
「ワタクシはヴィオレッタ。これからここでパティスリーを開こうと思っているの。もし良ければワタクシの力になってくれないかしら。」
なんとか引き留め、初対面のパパンから情報を聞き出した。彼女はやはり可愛いものとスイーツが大好きで日頃から周囲の気になる店を見ていること、服や絵を描くことも大好きで将来はファッションデザイナーになりたいこと、そして友人にスイーツ作りが得意な子がいること。ちょっと、この子優秀な人材じゃない!もしかするともっと利用……いえ強力な仲間になるかもしれない!そう思いヴィオレッタは思い切って前に出る。
「パパン、私とここでこの店を盛り上げてくれないかしら。もちろん報酬は払うわ。」
最後に人員。ヴィオレッタは今まで1人で仕事をこなしてきた。人と関わっているときは大体取引相手か業者しかいなかった。しかし今は1人ではできないと確信している。ボロボロだった店を渡されてから既に2ヶ月経過しているのにいまだ開店できずにいる。こんなに人と作り上げていきたいと思ったことがない、そうかこれが心細いというものなのか。
ここからヴィオレッタの経営物語が始まる。この先仲間が増えメディアにも載るような店になるが、現段階ではそんな将来なんてまだ見えていない。まだ店の名前すらも決まっていないのだから。完全に闇の中である。