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「機能性表示食品」について

小林製薬の「紅麹」健康被害に関する問題が世間を騒がせている。

この件については、腎疾患の原因である「未知の成分」にういて、「プベルル酸」の可能性があるとされているものの、詳細については続報を待つしかない。

それよりも、改めて注目されることになったのが、「機能性表示食品」というものの存在である。

大括りでの「食品」なるものの中には、単なる「一般食品」の他に、「保険機能食品」なるものがあって、①「特定保健用食品」(トクホ)、②「栄養機能食品」、③「機能性表示食品」の3つから構成される。①~③がどのようなものであるかについては、概略、以下のとおりである。

①「特定保健用食品」(トクホ):健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められ、「コレステロールの吸収を抑える」等の表示が許可されている食品。表示されている効果や安全性については国が審査を行い、食品ごとに消費者庁長官が許可しているもの。

②「栄養機能食品」:1日に必要な栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)が不足しがちな場合、その補給・補完のために利用できる食品。既に科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品であれば、特に届出などをしなくても、国が定めた表現によって機能性を表示することができる。

③「機能性表示食品」:事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたもの。ただし、特定保健用食品とは異なり、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではない

今回問題となっている、小林製薬のサプリメントは、これらのうちの③「機能性表示食品」に該当する。したがって、当該食品の安全性や効果の有無については、国は責任を負っていないことになる。

そもそも。この「機能性表示食品」制度自体が、<特定保健用食品の審査が厳しく、認可取得までの時間と費用がかかり過ぎるという問題を受けて導入された制度である>(Wikipedia)とあるように、「特定保健用食品」(トクホ)や、「栄養機能食品」よりも遅れて、15年4月に導入されたものである。つまり、制度ができてから、まだ10年にも満たないということになる。

消費者庁の審査を受けることなく食品の機能性表示が容易に行えてしまうということは、当然のことながら、デメリットもあるわけで、<「チェックの方法があいまいである」「国は健康被害のリスクを全面的に消費者に負わせている」など制度を問題視する意見がある。また、届け出のあった商品の一部には消費者団体などから効果や安全性を疑問視する意見が消費者庁へ提出されている。その後、届出後の機能性表示食品の中から、効果が疑わしいものは撤回される事例が多数出ている。>(同)といった感じで、不適切な事例は、今回以前にもあったとされている。

実際のところ、この制度が導入されたタイミングも、安倍政権時代に規制緩和による経済成長戦略の1つとしてであったわけだし、安全性よりも経済性を優先した制度設計そのものに内在したリスクが、たまたま露呈したのだと考えるのであれば、個別事案に関して小林製薬をバッシングする以前に、そもそも「機能性表示食品なんて制度を導入して、ホントに良かったのか」という話にまで遡るべきなのであろう。また、そこまで俯瞰的に考えるならば、今回の事案に関しても、国の責任はないとは断定できなくなる。

「日本医師会」のホムペを見ると、「国民のみなさまへ」として、「「健康食品」・サプリメントについて」というコメントがある。

「あなたは、「健康食品」やサプリメントを摂りすぎてはいませんか?」という見出しに続いて、
<「健康食品」には、成分を濃縮していたり、医薬品の成分を含んでいるものも、多くあります。
効果を期待して摂り過ぎたりすると、危険性も増します。また、服用している医薬品との相互作用で、思わぬ健康被害が発生することもありえます。
体に不調を感じたら、すぐに、かかりつけの医師にご相談を!
そして、医師に、「健康食品」やサプリメントを摂っていることをきちんと伝えましょう。
また、三度の食事をきちんとバランスよく食べることが、大事です。>というコメントが記載されている。

意地の悪い解釈をするならば、「「健康食品」やサプリメントなどをアテにするのではなく、ちゃんと医者のところに行きなさいよ」という、医者の、医者による、医者のための広告宣伝活動という感じもするのだが、「三度の食事をきちんとバランスよく食べることが、大事です」というところに関しては、きわめて当たり前のことであり、全面的に同意する。

今回の問題は、結局のところ、何かあったらすぐにクスリを飲みたがる日本人の国民性が問われているような気がする。クスリには、効能もあるが、副作用もある。体質的に合う合わないもある。医者の処方に基づき、慎重に投与されるべきものである。

ましてや、「機能性表示食品」はクスリですらない。シロウトからすれば、限りなく「クスリ」っぽい感じがするが、断じて「クスリ」ではなくて、先に書いたとおり、広義の「食品」の1つにすぎない。だが、普通の食品と違うところは、何が入っているのか、外見には判断できないところである。

いろいろな食材は、何万年も何千年も先祖が食べてきたものである。健康に悪くなかったことは証明されている。カラダに悪いものであれば、それを食べていた先祖はとっくに滅んでいるからである。我々が絶滅せずに、存在すること自体が、何物にも代えがたいエビデンスということになる。

つまり、伝統的な食事というのは、実はとても理に適っているし、バランスの良い食事こそが、健康管理の基本であることは、医師会に改めて言われるまでもなく、当然の話なのだ。我々のカラダは、我々が食べたもので出来上がっているからである。

サプリメントをありがたがって、大量に摂取する人がいる。そういう人たちは、野菜を食べるよりも、サプリメントでビタミンを摂った方が効率的だと言う。でも、野菜にはビタミン以外のいろいろなものが含まれているはずである。それらが我々のカラダにどういう作用を果たしているのか、すべてが解明されているわけではない。

逆にサプリメントの中に、我々のカラダに良くない作用を及ぼすかもしれない成分が微量でも含まれていたらどうするのか。1回くらいならば、ごく微量でもあり、たいした影響はなかったとしても、毎日毎日服用することで、中長期的には深刻な影響を及ぼす可能性があるかもしれない。今回の「紅麹」サプリの「プベルル酸」も同様であろう。

結局のところ、伝統的な食事に含まれていないものを日常的に摂り続けるということは、エビデンスの乏しい「よくわからないもの」を自分のカラダの中に摂取し続けるということと同じである。

今回は、たまたまサプリメントであり、制度として導入されてまだ日が浅い「機能性表示食品」であったが、厳重に審査されているクスリ、医薬品だって、あまり信用しない方が良いと思っている。これらは、所詮は人工の化学製品であり、効能もある代わりに副作用もある。

緊急時に、対処療法的に服用するものはやむを得ないとしても、恒常的にクスリを服用することに関しては、もう少し懐疑的になった方が良いような気がする。本来は、バランスの取れた正しい食生活を送ることで、健康なカラダを保つことは可能なはずだからである。

したがって、今回の小林製薬の事案の幕引きとして、「現行の「機能性表示食品」制度を改めるべきだ」とか、「やはり、公的な審査をもっと厳格にやらなければダメだ」といった方向に議論が流れるようなことになるとすれば、警戒した方が良いと思う。

そうなると、結局、いろいろと新たな制度や仕組みをこしらえて、厚労省が権益を拡大するだけ、「焼け太り」みたいなことになるだけだからである。

そうではなくて、重要なのは、我々1人1人が、自分の口に入るものに対して、もっと意識的になること、自分自身で責任を持つことであり、中身や由来のよくわからないものを正しく警戒すること、そして安易に他人を信用しないことである。

今回の事案に関しては、小林製薬が事実を検知してから公表に至るまで、時間がかかり過ぎたことについても問題となっている。こちらの件については、改めて書いてみたい。

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