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無駄な仕事について

日本の政治家は、最近は二世とか三世の、いわゆる「世襲議員」が多くなった。それでも能力が優れているならば、何も問題ないのだが、外国の政治家と比べて能力が劣るのであれば、何らかの対策が必要なのかもしれない。

国会での質疑応答の裏側で、官僚が深夜残業をさせられて、質問取りやら、質問に対する答弁案の作成に追われ、そういう彼らの本来業務から外れた仕事による長時間労働に疲弊した若手官僚がどんどんと辞めているという話を聞かされると、本当に本末転倒だと思う。

日経新聞の記事を見て驚いたのだが、英国では、議員が首相に質問する場合、原則として事前に質問通告する必要はないのだそうである。で、しかも、首相は担当閣僚に答弁を丸投げすることは許されず、自分自身ですべての質問に答えなければならないのだという。この慣習はサッチャー首相から始まったそうである。

日本であれば、首相答弁は秘書官ら官僚が準備するが、英国であれば、政党のリサーチ部門の若手スタッフらが担う。スタッフは総じて優秀であり、将来の閣僚や首相の卵も、まずはそこからキャリアをスタートさせるのだという。だから、閣僚も首相も答弁くらいは自分でこなすくらいは朝飯前なのだ。というか、それくらいのこともできないようでは、到底、政界でのし上がるなんて無理だということになる。

日本の場合、当選回数によって年功序列的に閣僚になれてしまうし、〇〇大臣になったところで、本人も周囲も短期間の腰掛けだと思っているから、深く勉強しようとも思わない。質問も答弁も事務方の官僚が作成して、政治家は単に読み上げているだけ、それもつっかえたり、漢字を読み間違えたりしながらだったりするから、官僚にも国民にもバカにされる。まったく無駄である。

だったら、そんな茶番のようなセレモニーは廃止して、お互いにメールのやり取りで質疑応答をして、それを国民に公開すれば良いのにと思うのだが、そうなると、選挙区の有権者に対して、「仕事をやっています」というアピールをする機会が失せるだろうから、たぶん国会議員はこぞって抵抗するに違いない。

政治がダメなのは、他ならぬ我々、有権者の責任である。

前に同じことを書いたが、福澤諭吉の『学問のすすめ』の中で僕がいちばんグッとくる大好きなフレーズは、
<西洋の諺に「愚民の上に苛き政府あり」とはこのことなり。こは政府の苛きにあらず、愚民のみずから招く災いなり。愚民の上に苛き政府あれば、良民の上には良き政府あるの理なり。ゆえに今わが日本国においてもこの人民ありてこの政治あるなり。>という個所である。

要約するならば、「政府が愚かなのだとすれば、それは愚かな国民自身が招いた災いである」という意味である。

まさに、今の日本にぴったりの言葉ではないだろうか。

アホな政治家を議員のまま放置して、落選もさせずに、のさばらせているのは、有権者が怠慢だからである。

二世、三世の「世襲議員」はケシカランと思うのであれば、彼ら彼女らを当選させなければ良いのだ。選挙にも行かずに文句だけ言うのは、無責任だし、国民としての義務を果たしていない。その結果が、今の日本だと思う。

僕も、現役時代は、あちこち転勤してばかりで、ロクに選挙にも行かなかったし、自分の選挙区の国会議員の名前も知らなかった。自分の1票があったところで何も変わらないという諦めもあった。でも、皆んながそんなことでは、ますます日本は沈んでいくしかない。

一般的に、投票率が下がると、与党の議員に有利に作用する。だから、与党の政治家たちは、投票率なんか上がってもらいたいとは思っていない。政権交代が起きる時は、だいたい投票率が上がる時、都市部の若者や、ふだんは政治に無関心な層が投票所に行く時である。

したがって、とりあえずは18歳以上の有権者たちは、まずは投票日には投票所に行かなければならないのだ。それだけでも、ふだんサボっている議員に喝を入れることになるし、うかうかしていられないと思わせる牽制機能を発揮する。

だが、今の日本で残念なのは、野党がどこも揃って不勉強で何もやっていないことである。政権交代しても政権を担う能力がないから、与党の方がマシだと思われてしまう。つまり、国民に与党以外の選択肢が提供できていないのが事実なのだ。

で、その中ではちょっとマシそうで、格好良いことを言っている、「維新」が徐々に勢力を伸ばしているのだが、「維新」の問題は議員の質が玉石混交すぎることにある。明らかに「いかがわしい(?)」感じの議員も(地方も含めると)相当程度は含まれている。大丈夫かと思ってしまう。

要するに、投票には行きたいし、行かなければならないとは理解しつつも、誰に投票すべきなのか、そもそも投票するに相応しい相手がいないという不幸に気がつく。

現在、国会議員の投票権は18歳以上の国民に与えられているが、被選挙権については、衆議院25歳以上、参議院30歳以上となっている。いっそのこと、被選挙権も18歳以上にしてしまえば、若い政治家が増えるのではないだろうか。将来の日本を担う若者から多くの政治家が出るような仕組みを作った方が、まだ可能性を感じる。

ついでに、被選挙権の上限を設けるのも悪くない。「65歳未満」とでもすれば、今の国会議員のかなりの部分を淘汰することができる。

それくらいの荒療治でもやらないと、現在の世の中の閉塞感は取り除けそうもない。


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