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ギャンブルについて

金銭感覚は麻痺する。自分のおカネでなくても麻痺する。銀行員で不正を犯す人は、たいてい金銭感覚が麻痺していた。自分のものではない、他人のおカネであるにもかかわらず、巨額のおカネを見慣れてしまうと、正常な金銭感覚が失われてしまうのだ。

大谷の通訳である水原も、おそらくそうだったのではないか。

周囲のメジャーリーガーは、一般人が一生かかっても稼げないような巨額の年俸を稼ぐセレブばかりである。大谷などは、その中でも最高年俸を稼ぐスター選手である。公私にわたり、大谷と行動を共にするうちに、精神的に大谷と同化してしまい、ジャイアンではないが、「大谷のおカネは自分のもの、自分のおカネは自分のもの」といった感覚になってしまったとしても不思議ではない。

「不正のトライアングル」というものがある。「動機」「機会」「正当化」の3つである。

「動機」については、ギャンブルで負けが込んで、借金を抱えてしまい、それを決済するためのおカネが欲しかったということである。

「機会」については、大谷の預金口座からおカネを外部に送金する手段を水原が有していたということになる。

「正当化」については、「大谷からすれば、数億円なんてハシタ金みたいなものだ」「ギャンブルに勝って、戻しておけば大丈夫」といった考えに基づいて、不正を犯したということであろう。

このうち、大谷の会見でもよくわからなかったのは、「機会」についてである。ネットバンクで資金移動するにしても、2段階認証くらいの機能はあったのであろうから、大谷にまったく知られることなく、水原単独で資金移動させることができたとすれば、どういう仕組みになっていたのかである。

水原は、大谷を公私にわたってサポートしていたこと、長年のつきあいで、信頼しきっていたことから、預金口座のアクセス権限も含めて、全部丸ごと任せっぱなしにしていたのであろうか。

あるいは、水原からの何らかの説明を受けて、資金移動を一旦は承認していたということも考えられるが、この辺りに関しては、さらなる説明がないことには、はっきりとしない。

僕は、自分がギャンブルをやらないし、まったく興味がないので、ギャンブルをやる人の心理というものが、まるで理解できない。

理論的にも、ギャンブルというものは、胴元が必ず儲かるように設計されている。したがって、ギャンブルする人というのは、よほどに自己肯定感が強い人なのだろう。つまり、「他の奴らは損したとしても、自分だけは儲けることができるはずだ」という根拠なき確信でもなければ、高い確率で損をするはずのギャンブルに手を出したりしないではないか。

国内の公営ギャンブル、競馬、競輪、競艇等、それと宝くじ。ぜんぶ胴元が必ず得をするような制度設計になっている。ビギナーズラック等で、稀に儲かることがあったとしても、最終的な収支としては損をすることになるであろう。

それなのに、「自分だけは大丈夫」という強い自信というか確信はどこから来るのだろうか。

同様に、株式投資(個別銘柄へのアクティブ投資)とかFX投資も、僕は基本的に手は出さないことにしている。こういう分野は、プロが生き馬の目を抜くような勝負を繰り広げている。シロウトが手を出したら、カモにされるだけである。

自己肯定感の著しく低い僕のような人間は、タンス預金か、定期預金でもしているのがお似合いである。新NISAが始まったので、インデックスファンドの積み立て投信くらいはと思ってスタートしたが、それとて損をしても惜しくない範囲内である。

起業する人も、たぶんギャンブラーなのであろう。したがって、スタートアップ企業で仕事をしているが、自分で起業しようとは思わない。

人間には2種類あると思っている。起業できる人と、人に使われるのがお似合いな人である。僕は、どこまでいっても、後者の方でしかない。こういう人は、ギャンブルもできない。

そう言えば、去年暮れまで勤めていたスタートアップ企業の創業社長は、競馬が大好きだったなあと思い出す。こういう御仁は、前者のタイプなのである。


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