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「異次元の少子化対策」について②

僕が、いま仮に20代とか30代の若者だとして、未婚あるいはパートナーはいるが子どもはいない状況だとして、昨日の岸田首相の話を聞いて、「よし、子どもをつくろう」とはならないんだろうなあと思った。

少子化については、前にも何度か記事に書いた。少子化の原因を掘り下げていけば、根本的には日本という国が国民に支持されていないこと、先々に明るい未来が展望が期待できないことにある。政治家としては、特に若い人たちから「不信任案」を突きつけられていると謙虚に受けとめるべき事態なのである。

まだこれから子どもをつくろうか、どうしようかと思っている若者に対して、「オタクのお子さんがもし高校生になったら、新たに10千円支給しますよ」と言われて、心に響くかどうか。こういう些末な施策が、国民に「刺さる」と本気で思っているとすれば、想像力が欠如しているとしか言いようがない。

先日も政治家の世襲化について触れる記事を書いたが、二代目や三代目の世襲議員にとっては、もはや一般庶民の生活と自分たちのそれとが隔絶しすぎてしまっており、臨場感をもって想像することすらできなくなっているのかもしれない。

「子どもは国の宝」とか「社会全体で子どもを育てる」といった耳障りの良い言葉が、何やら軽薄に使われてしまっているが、本当にそういう覚悟があるのならば、日本国籍を有する子どもの教育費はすべて無償化するくらいのことはやれば良いと思う。子どもを1人成人まで育てる上で、教育費はかなり大きな負担になる。「すべて国が責任を持ちます」と宣言すれば、大きなインパクトがあるはずである。

ドイツに住む知人に聞いた話だが、ドイツは小学生の段階で選別が行なわれ、大学に進学するコース、義務教育で修了するコースに振り分けられるという。その代わり、大学入学資格試験に合格すれば、基本的にはどこの大学でも入学できるし、学費は無償である。ただし、小学生でも落第があるような国なので、大学に入学しても、無事に卒業できるとは限らない。要するに機会は平等に与えられるが、結果は本人の努力と能力次第ということである。

フランスなどは、新生児の半分以上が婚外子であるという。日本でも、結婚制度にこだわらず、事実婚でも構わないから、どんどん子どもをつくりましょう、生まれた子どもはちゃんと国が面倒を見ますよというスタンスになれば良いと思うのだが、たぶん保守系の政治家はまだまだそこまで開明的ではない。でも、はっきり言えば、親が誰であろうが、子どもに色はついていないのだ。将来の勤労者、納税者だと思えば、国にとってもかなりコスパの高い投資のはずなのにである。

戦争における典型的な「愚策」として、「戦力の逐次投入」というのがある。同じだけの戦力を投入するにしても、さみだれ式にチマチマとみみっちいやり方をしても意味がない。ポイントを絞って、思い切って投入してこそインパクトがある。

政府のやっていることは、はっきり言えば、みみっちくて、インパクトがないのだ。たぶん財源をどうするとか、細かい計算をしているから、なかなか思い切ったことが言えないのだろうが、口約束で「子どもにかかる費用は、国が責任を持ちます」とトップが請け負えば、さしあたってはリップサービスだけで済むし、インパクトは絶大である。財源はあとから考えれば良いのだ。国の成長がずっと停滞していることが問題なのだから、再び成長トレンドに乗れば、税収はあとからついてくるはずだ。


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