見出し画像

「ふるさと納税」について②

以前、「ふるさと納税」の恩恵を被りつつも、この制度はいろいろと問題が多いという話を書いたことがあった。

日経新聞に、改めて「ふるさと納税」に関する記事があり、それによれば、<寄付額が1兆円規模に拡大したふるさと納税のゆがみが大きくなっている。自治体間の返礼品競争激化で経費は5000億円近くに膨らみ、寄付の半分相当が消失。税収が流出した自治体への財源補塡も増え、大都市中心に制度見直しを訴える声もある。国に抜本対策の機運は乏しく、いびつな自治体競争に終わりは見えない。>とある。

自分自身も利用させてもらい、恩恵を被っているから、書きたくはないのだが、前にも書いたとおり、「ふるさと納税」というのは、ホントにロクでもない制度である。簡単に要約するならば、以下のようなことである。

  • 都市部は単純に税収が減ることになる。

  • 地方も「返礼品」制度があるので、結局、4分の1の自治体は収支マイナスになってしまっている。

  • マイナスの補填は、結局、「地方交付税」頼みなので、政令指定都市等の都市部が尻ぬぐいをさせられることになる。

  • この制度でトクをしているのは、制度を活用している高額納税者(=富裕層)と、「返礼品」ビジネスで潤っている一部の業者である。

  • 結果的に、彼らが潤っている分だけ、世の中の税金が非効率な使われ方をされている可能性がある。

そもそも、どうしても自分が住んでいる場所ではなく、どこか他所の特定の自治体を応援したいのであれば、「返礼品」なんて制度は設けることなく、シンプルに税金の納付先である自治体の「振り替え」を行なう制度であれば良いのだ。

それなのに、「返礼品」という制度があるがために、「返礼品」の調達、配送、広報、決済等に関わる費用で約半分が費やされることになり、税金が本来の使途に使われることなく「消失」することとなる。結果的に、本来の税収が流出する都市部も、寄付される地方も、あまりハッピーとは言えず、「返礼品」で潤う一部の業者と、高額所得者のみが恩恵を受ける制度ということになる。

まさに、新聞記事にも記載のとおり、「官製通販」というのが実態である。

じゃあ、どうすれば良いのかという話であるが、本来の趣旨に立ち戻るというスタンスに基づき、「返礼品」を全部廃止すれば良いのだ。

「そんなことをすれば、誰も「ふるさと納税」なんかやらなくなる」と言われるかもしれないが、「返礼品」に誘導されるような「ふるさと納税」自体が、制度として明らかに歪んでいたのであるから、そんなものは一旦リセットするしかない。

それでも、たとえば、現在は大阪市内に住んでいるが、生まれ故郷の〇〇市を応援したいと思うような人であれば、「返礼品」がなくても、「ふるさと納税」制度を利用するに違いないし、そういうのこそが本来の当該制度の趣旨に則った正しい「ふるさと納税」の姿なのである。

でも、こういう話をすると、「返礼品」ビジネスで潤っている一部の業者が猛反対するに違いないし、そういう業者とツルんで、何らかの形で利益の一部が還流されている一部の政治家も猛反対するのだろう。

結局、「ふるさと納税」に限らず、世の中の多くの政策というものは、それを実施することで、政策の直接の受益者以外にも、別の誰かが得をするような仕組みになっているものなのだ。

それらが一般的に「利権」と呼ばれている。似たような話は、「ふるさと納税」以外にも、他にもいくらでもある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?