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日大の理事長について

18年5月の日大アメフト部の悪質タックル問題の頃からずっと疑問に思っていたことなのだが、日大には理事長と学長2つの役職があるようだが、両者にはどういう違いがあって、どういう役割分担になっているのだろうか。そもそもどちらの方がエライのか。タックル事件の際には、田中前理事長は一切会見にも姿を見せず、当時の学長が対応に追われていたと記憶している。

同じ私立大学である早稲田大学のHPによれば、<現在の私立大学は、教育基本法・学校教育法・私立学校法等の法律に基づいて管理運営を行っています。これら法令のもとで、私立大学は「大学の設置者としての学校法人」と「学校法人が設置する大学」という2つの姿・形をもっており、学校法人の長を「理事長」、学校法人が設置する大学の長を「学長」とよぶことになっています。>とある。わかりやすい説明である。

要するに「理事長 = 法人としてのトップ」で、「学長 = 法人が運営する大学のトップ」ということである。企業に置き換えれば、理事長が社長、学長は事業部長といったイメージであろう。つまりは、理事長の方が学長よりもずっとエライということになる。

にもかかわらずというか、記者会見の中継を見ていると、ひな壇の真ん中が学長、理事長は向かって左側、副学長は向かって右側という席順になっていた。常識的な感覚では、これだと3名の中でいちばんエライのは学長というように見える。理屈の上ではこの3人のうちいちばんエライはずの理事長が学長の左端というのは明らかに違和感がある。

理事長が向かって左側、副学長が向かって右側であることについても、日本の伝統的なルールでは、左側が優位なので、向かって右側の方が序列が上となる。京雛なんかはそうなっている。左大臣と右大臣だと左大臣の方がエライ。京都市左京区は東側、つまり内裏を中央として向かって右側である。その考え方でいくと、日大では理事長よりも副学長の方がエライのかという話になる。ただし関東雛は逆の配置になるので、東京に本部がある日大はそちらに準拠したのかとも取れる。ということで、左右問題については諸説あるのでこれ以上は深追いしない。

日大の事務方がすごくポンコツなので、席順には無頓着だったのかもしれないが、さすがにそこまでアホではないだろう。理事長 - 副学長の序列はともかくとしても、脱税でポストを追われた田中前理事長の後任として、棚ボタ式に理事長の椅子に座った女流作家なんか、日大内部では「お飾り」程度にしか思われておらず、つまりリスペクトされておらず、学長の風下に置かれていたのだということが、図らずも露見したということであろう。

もっとも、記者会見での林理事長の釈明内容もあまりに稚拙な印象を受けた。さんざん遅れに遅れて大学側の会見を催した挙句、この程度の話しかできないのであれば、学内で舐められても仕方ないのかもしれない。というか、学内で事前にちゃんと打合せをしたようにも思えない。

ざっくりとした印象では、「報告が上がってこなかったから、私は知らなかったし、私は悪くないもん」という意味の言い訳であった。元検察上がりの副学長のところで重要な情報が握り込まれており、そこから上にはまともに情報が上がっておらず、理事会で真面目に議論した経緯もない。要するに組織としてのガバナンスが依然として機能していない大学であることが改めて世間に明らかとなった会見であった。

企業が何か不祥事を起こした場合に、経営トップが、「報告が上がっていないから、私は知らなかったし、だから私には責任がない」なんて言い訳をしたら、世間から袋叩きになるのは確実である。そのようなアホな言い訳をした時点で、経営者としての資質が欠如しているとの烙印を押されるであろう。重要な情報が速やかにトップまで報告されるような内部体制を常日頃から構築しておくのはトップの仕事であるし、もし副学長が握り込んでいたのであれば、そのような副学長を含めて「報連相」ができない不届きな学内関係者をさっさとクビにするのもトップの仕事であろう。

お神輿の上に乗っかって祭り上げられているだけで仕事をしているような気分になっていたのだとすれば、まったくおめでたい話である。元々、林真理子が理事長に就任したのも、田中前理事長のワンマン体制下で大学としての正常なガバナンス機能を喪失していた日大を何とかしなければということで、何のシガラミもないからという理由で白羽の矢が立ったのではなかったのか。腐りきった体制を本気で改革する気があるのであれば、相当な覚悟で荒療治を行なわないことには何も変わらないのは明白である。学内に波風を立てまくり、忌み嫌われるくらいにならなければ、組織の膿を出し切ることなど不可能である。なんだかんだで既に就任して1年以上が経過しているのだ。この間、いったい彼女は具体的に何をやっていたのだろう。

結局のところ、「女性初の日大理事長」という、格好の良い肩書(?)が欲しかっただけの人物ということであろうか。少なくとも先日の会見を見る限りでは、そういう評価しかできなかったし、ずいぶんと世間の評判を下げたことだけは間違いなさそうである。


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