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「朝ドラ」について

僕の「朝ドラ」キャリアは相当に長い。「朝ドラ」についてだけで、2時間や3時間くらいは余裕で語れる自信はある。

いま放映している「ちむ」何とかは、きわめて評判が悪い。これだけ叩かれる作品もちょっと珍しいかも知れない。

僕も、世間の評価に概ね同意見である。たしかに、ちょっとひどい。

何がひどいのか。いくつか列挙する。

まず第一に、主人公にまったく共感できないこと。主人公は、どういうわけだか自己肯定感がとても高く、自分のやり方や考え方を周囲の人間に対して暴力的に押しつけようとする。その結果、周囲の人間に迷惑をかけるようなことになってもちっとも反省しない。

実はこういうタイプの人間は、最近、とても増えてきているような気がする。少子化で親に甘やかされて育ったからなのか、「個性の尊重」「自分らしさを大切に」といったキーワードが重視される風潮だからか、理由はよくわからない。会社の中でも、自分の未熟な考えに固執するあまり、先輩や上司からちょっと否定的な意見をされただけで、「自分を否定された」と傷ついてみたり、果ては「パワハラだ」と訴えるような若者が少なくない。

僕らのようなおじさん世代は、そういう若者に手を焼いている。だから、朝ドラの中にまで、そうした若者が登場して、単なる思いつきのような好き勝手な言動で周囲の大人たちを振り回して、「うちは何か間違ったことしてる?」と居直られると、朝から気分が悪くなるのだ。

第二に、そういう根拠なく自己肯定感の高い主人公たちを育ててしまった両親に対する不満である。「親の顔が見たい」という言葉があるが、本当にこの親にしてこの子ありという感じなのだ。

主人公は4人きょうだいであるが、世間的に見てまあ普通なのは学校教師になった長女くらいなもので、あとの3人はそれぞれかなりの問題含みである。なのに両親はまったく叱ることもせず、甘やかし放題で彼らを育てている。戦争中に苦労したからという理由もあってか、それが彼らの教育方針なのであろうが、結果として周囲の善良な人たちの迷惑を顧みず、そうした教育方針を貫き、わが子を溺愛している姿に、視聴者はイラつくのだ。長女だって他の3人に比べたら少しくらいマシというだけで、これもかなり面倒くさい奴である。

だんだんと書くのに飽きてきたので、後は端折るが、時代考証が適当であること、ストーリーがご都合主義で無理やり感が随所に目につくこと、人物造形がいかにも薄っぺらくて生きている人間には見えないこと等、突っ込み始めたらキリがない。

民放だったら打ち切りという選択肢もあるが、公営放送なので半年間やると決めたら評判がどれだけ悪くても途中でやめない。不愉快ならば見なければいいのにという話もあるが、国民から受信料を取っている以上、そういう言い訳は通用しない。

とは言え、この評判の悪かったドラマもあと1ヶ月ほどで終了となる。

ちなみに、自称「朝ドラ評論家」の僕のイチ押しの過去作品は、「カーネーション」である。

しばらく前にBSで再放送をしていたが、改めて見直してみて、今の「ちむ」何とかと見比べて、何をどうすればこんなに違いが生じるのか、本当に「月とすっぽん」というのはこういうことかと改めて考えさせられる。


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