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「ビッグモーター」と「ジャニーズ事務所」について

それぞれ不祥事で大騒ぎとなっている「ビッグモーター」と「ジャニーズ事務所」であるが、これら2つの会社はどちらも非公開会社である点で共通する。

「ビッグモーター」は銀行団から借入の継続を断られたとのことで、経営破綻の可能性も取り沙汰されている。「ビッグモーター」の株式を保有しているのは、創業者(前社長)とその子息(前副社長)の資産管理会社であるらしい。「ビッグモーター」が経営破綻した場合、同社の株式は当然に紙屑になる。

破産手続きになった場合、破産管財人が資産・負債を整理して、債権者に配当することになる。同社はロードサイドに店舗不動産を保有し、在庫として中古車を抱えているので、これらは換金性が高い。同社の有利子負債は総額600億円くらいとのことだが、資産を処分して債権者にどれくらいの割合で配当できるかは、やってみないことにはわからない。

中小企業の場合、経営者個人が会社の借入の連帯保証人を務めている場合が多いが、最近の世の中の流れとしては、経営者保証を外す方向にあるし、同社くらいの業界大手だと既に個人保証は外れている可能性が高い。

そうなると、「ビッグモーター」を清算した結果がどうなろうと、創業者一族は「ビッグモーター」の株式が紙屑になることさえ覚悟すれば、それ以上の負担を求められることはまずないと言えそうである。

豪邸とか別荘とか、その他諸々の資産は、おそらく個人所有なのか、資産管理会社所有なのか、いずれにせよ事業会社とは切り離されているだろうから、そちらに「ビッグモーター」の債権者の手が及ぶことはない。もちろん、同社の借入の担保にでも入っていれば別であるが、その可能性は低い。

早い話が、創業者親子にとっては、「ビッグモーター」が潰れたところで、おそらく痛くも痒くもないし、同社を潰した時点で、逃げ切りが完了することになる。

同じようなことは「ジャニーズ事務所」にも言える。

週刊誌の記事によれば、同事務所は都内の一等地に数多くの優良不動産物件を保有しており、その時価総額だけで優に1,000億円を超えるのだという。

芸能事務所の商品は所属タレントであるが、今回の不祥事で主だったタレントが仮に全員退所したとしても、これだけの資産があれば、不動産賃貸業に看板を付け替えてでも、悠々と食べていくことができるだろう。

ジュリー社長は同事務所のオーナーなのだから、社長を退任してもしなくても、実態は何も変わらないし、変える必要もない。依然としてオーナーである以上、自分が好きなように経営できる。肩書なんかあまり関係ない。

このように考えると、上場企業のサラリーマン経営者よりも、非公開企業のオーナー経営者というのは、よほど強力な立場に置かれていることがよくわかる。もちろん、零細企業のオーナーなどは、会社と一蓮托生であり、薄氷を踏む思いで日々を送っているのかもしれないが、「ビッグモーター」「ジャニーズ事務所」くらいになると、下手に上場しなくて良かったねと言いたくなる。株主にあれこれと不愉快なことを言われなくて済むし、外部の目も気にする必要はない。敵対的買収を心配する必要もない。

IPOをめざすスタートアップ企業の場合、上場が1つのゴールみたいな感じになってしまっていることが多いが、企業にとって、上場がゴールではないのは言うまでもないことである。

その企業が何をめざすのか、社会に何を問いたいかが重要であり、そのためのプロセスであり選択肢の1つがIPOなのである。

企業を私物化して、ずっと私腹を肥やしたいのであれば、上場せずに非公開のままの方が都合が良さそうである。「ビッグモーター」と「ジャニーズ事務所」の昨今の騒動を見ていて、そのような思いを新たにした次第である。


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