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企業の新陳代謝について(続き)

いよいよ、「経営者保証」を求めないというのが、今後の事業金融の流れとして定着化しそうである。

でも、これは金融機関にとっては、「劇薬」でもある。このことについては、前にも書いた。

はっきり言えば、日本の銀行の事業金融能力というのは、あまりたいしたことがない。特に地方では恵まれたポジションにあって、長年、「殿さま商売」をやっていた地銀(この場合、第二地銀(旧相互銀行)は除く)の実力はかなりショボい。あまり苦労していないからだ。

中小企業というのは、そもそも決算書もテキトーだし、オーナー個人と法人の財布の区別も曖昧だし、財務基盤も脆弱である。しっかりした担保でもあれば、まだしも、そういうものもない場合、最後に頼れるのは「経営者保証」しかない。

中小企業の経営者の中には、個人保証をしないとなれば、一種の「モラルハザード」を起こす奴も必ず出てくる。会社がヤバくなれば、会社から個人におカネを抜いたり、計画倒産を企てることになるだろう。

そういうことが起きないようにするには、取引先企業の事業資質、経営者の能力や人柄を見きわめる審査能力、取引先企業を継続的にモニタリングする監視能力が金融機関に求められることになるが、甘やかされて育った地銀の行員にそういうことが本当にできるとは思えない。

メガバンクは、たぶん中小企業取引をかなり整理することになる。手間がかかるわりには不採算だからである。というか、既にそういう動きは進展しているのではないだろうか。僕はもう銀行を卒業して随分になるから、知らんけども。ある程度の規模以上の中堅企業取引は引き続き存続させるとして、それ以下の中小零細企業の取引は、AIやネットを活用して、徹底的に省力化や効率化を進めることになる。人件費の高い層の行員は使わない。

ドブ板営業の信金・信組の職員は、狭い担当エリアを毎日のように集金等で駆けずり回っているから、接点が濃密である。変な噂でも立てば、すぐに反応するだろうから、意外と足腰は強い。そういう点でも、中途半端な立ち位置の地銀がいちばん危険である。

これも前にも書いたことだが、金融庁の本音は、「地銀が減れば良い」というところにあるのではないだろうか。「経営者保証」を原則廃止とすることで、「その程度のこと、貸出金の回収にしくじるようなボンクラな地銀は、さっさと潰れてしまえ」と思っているのだとすれば、いろいろ納得がいくような気がする。

日本には、潰れるべきなのに潰れない中小企業も多いかもしれないが、そもそもオーバーバンキングで、金融機関がちょっと多すぎるのだ。


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