iDeCoを始められない理由で意外と多いもの
私は「金融機関の窓口」で仕事をしている。
今後の資産形成について相談を受けることがある。その際に、つみたてNISAよりもiDeCoが合っているな、と思うことが多い。
「年金が貰えるか分からないから、老後の生活が心配で何か始めたいし途中で引き出しはしない」という相談は結構ある。
そもそもの私の中の優先順位が以下である。
iDeCo>つみたてNISA>つみたて貯金>投資信託購入
私は税控除と非課税が好きなので、お客様に税制面のメリットが大きいものからお話ししている。(ちなみに、私の会社ではiDeCoが成約しても特に評価されない。世知辛い。)
iDeCoといえば、掛け金が全額控除できる上に非課税運用期間がすごく長い。出口の事はそこそこ考える必要はあるけれど、今のところ退職所得控除を選択できるというのもありがたいところだ。もちろん何を選ぶかは重要だが、金融機関の人間はそこに触れてはいけないのでモヤモヤするところではある。
なんにせよ「始めること」のメリットは大きい。
そして始めたい人も、多い。
それでも、始められない。
理由は「60歳まで解約できない」ことでも「投資信託がよく分からない」ことでもない気がしている。「5,000円がムリ」ということ以上に明らかに大きな壁があるように感じるのだ。
それは「自分の会社に書類を提出する」ことの抵抗感だ。
会社の人にiDeCoをしていることを知られたくない人達
分かる人は分かるだろうが、この相談は女性にとても多い。
「なんとかして会社にばれずにiDeCoはできないのか」
減税と非課税よりも目先の人間関係が気になる。
初めて聞いたときは内心(え、自分の人生の話なのに?)と耳を疑った。
でもよくよく聞くと、中々に根深い話の様だ。
「総務の人が嫌な顔をする」(なぜか女性に多い)
「総務部(課)に行ったことが無い」(中小の製造業に多い)
「現場と本部が離れているから面倒」(製造業に多い)
「事業所の証明をもらうのにお願いするのが精神的につらい」(なぜか家族経営の従業員に多い)
インターネットで何でも分かる時代に、わざわざ金融機関の窓口に相談しに来たということが既に答えなのだ。
ネット証券と違う抜け道のようなものがないか。
つまりは私達金融機関側の成績になるのだし、書類提出を代行してくれないかと。一種の交換条件である。
でも、できない。気持ちは分かるができない。
実際に「何でただでさえ忙しいのに仕事を増やすのか」と言われたという人もいた。そしてiDeCoができなかった。
個人的には給与天引きにしなければ、事業主証明くらい無くてもいいんじゃないの?と言いたくなるが、加入している健康保険の種類で金額上限が違うのだからこればかりは仕方がないのだ。
実際の加入数はどうなのか
実際のiDeCo加入数は一応右肩上がりだ。
iDeCo公式HPよると2022年4月現在で新規加入者44,374人、合計2,429,294人
そして令和3年度の非農林業雇用者が約5,900万人。
実際に加入できる人数はもっと少ないだろうし、既に企業年金に加入している人が全員iDeCoに加入できるわけではない。それでも少ない。
ちなみにつみたてNISAはというと、2021年12月(速報値)で5,181,403口座だ。多分10人に一人はつみたてNISAをしている。ちなみに一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの合計は17,665,509口座となっている。
iDeCoの伸び悩みは会社の人間関係かもしれない説
投資信託の選び方は他の方が山ほど情報出しているし、なんなら証券会社のHPでも紹介されている。
ただ、もしかしたら、つみたてNISAの方が選ばれる理由の一つに「iDeCoだと会社の人に知られるけど、つみたてNISAならばれない」というネガティブな心理は働いていると思う。
老後のために資産形成をしたい30代の人が「会社に言うの面倒くさいからつみたてNISAでいいや」と安易に決めるケースも結構ある。
仮に30歳の人が現行制度でつみたてNISAをする場合運用期間は20年、iDeCoは30年だ。この10年は大きい。
本当に老後のために資産形成したいなら①iDeCo②つみたてNISAというのは、多分ほとんどの人が分かっていると思う。
でも進まない。
勉強はやる気次第でいくらでもできるが、人間関係となるとかなり難しいだろう。
長期・分散・継続を60歳まで確実にできるのは現状iDeCo
資産運用で大事なのは「長期・分散・継続」だ。もう呪文だ。
そして、納付期間が「原則60歳まで」とゴールが明確なのは一部の個人年金保険を除くと公的年金とiDeCoくらいだろう。私的に運用方法を決められて、超長期の運用ができる制度なんてそうそうない。
超長期だからこそリスクを大きく取ることだってできる。商品も変えられるし、金融機関だって変更できる。そんな商品はiDeCoしかない。
iDeCoは手数料が意外と大きいので、そこを指摘する方もいる。でもその代わりに掛金が全額小規模企業共済等掛金で年末調整できることや、退職金代わりに使う方法は広まってはいない。
課税所得を減らす方法は特に独身会社員はかなり限られてくるので、おひとり様こそ向き合うべき現実だ。幸いなことに時間は平等なのだ。自分の持ち時間が分からない以上は取り組んだ方が良いリスクマネジメントだと思う。
自分の老後の事なのに、本当にそれでいいのか。
ぜひ考えて欲しい。
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