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はじめての資産運用でどうしても「事前に勉強してから始めたい」慎重で真面目な人に紹介したい本とか

仕事上「資産運用始めませんか?」と紹介する立場の人間の大半が(この反応は断り文句かもな……)と判断するお客様の一言があります。

それは「勉強してから、また聞きに来ます」だ。

営業が上手な人は「私が責任もってアフターフォローしますから安心してください!」と自信満々に切り返す。
転勤ありきで営業エリアが決まっている業界で無責任によく言えるものだな、とその口車に感心してしまうせいもあって、私の営業成績は常にイマイチである。

ほかの金融機関の事は分からないが、私の勤務先は概ね2年から3年で異動することが多い。長くてもせいぜい5年だろうか。国や金融機関が長期投資を推奨してはいても、初めての担当者は一生フォローをしてくれるわけではない。
という事は、どこかのタイミングで少なくとも商品や銘柄選びといった投資先については、自己判断できる程度に知識も蓄えておかないと、損する可能性があるのだ。

私は、一人一人のお客様の一生をお世話する事はできないし、営業成績もイマイチ。でも、どう勉強すれば知識を蓄えられるかは知っています。

それは良書と数学

例えば、どの本を読めば良いか。自身のライフスタイルに合った商品を選ぶには何に気を払ったら良いかくらいなら、先達の知恵を拝借するのが効率的ですよね。

もっと簡単な本無いの?と言われたこともあります。でも、分かったつもりでいるのも損なので、リンクを貼らずに紹介します。興味を持って下さった方は、是非お手に取りやすい方法で読んでください。全て日本語で読めます。


おすすめ1 敗者のゲーム(原題 Winning the Loser's Game) チャールズ・エリス著 鹿毛雄二訳 日本経済新聞出版社

インデックス投資といえばこの本。初版が1985年なので35年以上愛されている本だ。特にこうすれば儲かるとか、成功するとかは書いていない。重要なことは第1章から順番に書かれている。

そもそも証券市場と資産運用商品ってどんな関係なの?ということが分かりやすく書かれている。特にここ数年インデックス投資やロボアドが流行っているのも、納得してしまう。

特に「投資信託は商品がありすぎるから、どれ選んでも同じじゃないか」と極論に振り切れる営業マンに「でも、それって本当にそうかな」と言いたくなる一冊です。


おすすめ2 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」

みなさん「老後2,000万円問題」は覚えていますよね?
本ではないのですが、金融審議会の報告書も大変オススメです。
「受け取ってもらえなかった報告書」として有名ですが、実際に読んだことはありますか?ちなみに私の職場では誰も読んでいませんでした。

その報告書ですが、ざっくりと章立てると

  1. 現状について(高齢化社会がどんなものか直視しよう)

  2. ライフスタイルはいろいろあるけど人間年はとるから備えることが大事

  3. じゃあ、どうしたらいいのか

の3章構成でシンプルにまとめられています。

「貯蓄から投資へ」というのは、別に適当に言っているわけではないという事が図とグラフで丁寧に解説されています。
金融庁関連の報告書なのに読みやすいですし、金融知識のない人にも分かるようにかなり苦心されたのではないでしょうか。

第3章では「長期・分散・積立」というフレーズで長期継続投資によるリスク低減を分かりやすく紹介しています。
どうしても、バブル崩壊やITショック、リーマンショック、コロナショックを経験している人達は「株怖ぁ……もうやらん」と避けがちです。
事実、私もコロナショックで投資信託の基準価額が大幅下落したため、お客様へアフターフォローをする毎日でした。当然、怖いからもう止める方もいらっしゃいました。ただ、そこで止めなかった人はその後の金融相場に上手く乗れました。
ただ、投資商品でかなり明暗が分かれたので、断言はできませんが「投資を継続することが重要」と気づかされた出来事でしたし、この報告書はかなり使えると確信しました。

公文書なので当然「無料」です。初心者向けの変な本買うより断然こっちです。


おすすめ3 改訂版 金持ち父さん貧乏父さん(原題 RICH DAD POOR DAD)ロバート・キヨサキ著 白根美保子訳 筑摩書房

超ベストセラーなはずなのに日本経済に全く反映されている気がしない名著です。
読んだことがある人は多いはずなのに、私の周りには居ないという謎の本でもあります。
パーソナルファイナンスを子供でも分かるレベルで説明してくれる親切な本は少ないので、お子さんと一緒に勉強するのもいいと思います。

ちなみに改訂前初版は1997年。
奇しくも日本ではその年に山一證券が破綻しており、翌年には投資信託窓販解禁といったタイミングで発刊されているのも興味深い本です。

あらすじはというと、ロバート少年が金持ち父さんと貧乏父さんという二人の父の価値観の違い、大人の成功パターンは必ずしも未来永劫に通用するわけではないこと、どうやったら経済的自由を手に入れられるのかを学んだ30年のヒストリーだ。そして実践するポイントを丁寧に紹介している。

当然この本が未来永劫通用するかと聞かれれば、多分違うんじゃないかと思います。

でも、国に依存しない生き方は学ぶことができます。会社員のままで本当にいいの?業務委託なのに専業契約で本当にいいの?とゴーストにささやいてくる、そんな一冊です。

実は私、この本の紹介文もとても気に入っています。

『金持ち父さん 貧乏父さん』は、
将来の自分の経済状態を他人まかせにしたくないと思っている人にとってのスタート地点だ。

USAトゥデイ

かっこいい。とてもかっこいい。自立した人間になりたい私にとっては最高のキャッチコピーだ。

そうでなくても「資産運用は自己責任」という金融機関の基本的な方針がある以上は「自分の方針」は持っていないと危ないのは事実。

良い担当者に恵まれれば安心だが、全ての金融業界の人間が善良とは限らないのが現実です。自己防衛できる知識はあって損は無いと思います。


おすすめ4 Market Hack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法 広瀬隆雄著 東洋経済新報社

米国株インデックス、S&P500インデックス商品がブームになっていますよね。お勧め投資信託に必ず出てくる米国。その株式市場と投資家はいったいどんな原理で動いているのか。そこが気になる方にステップアップの可能性も含めて読んで欲しい1冊です。

米国株を一度でも齧ったことがある人で、この方の名前を知らない人はいないだろう。証券会社のコラムも多く、かなり活動的な方だ。
発行は2013年と10年近く前の本ですが、株式投資の基本的な考え方をこれ以上ないくらいに分かりやすく丁寧に書かれています。
特にすでに業績相場へ移行していると見られる2022年の株式相場でどう立ち回るのか悩んでいる人にお勧めです。


おまけ マーケットのテクニカル分析 ジョン・F・マーフィー著 長尾慎太郎監修 田村英基訳

言わずと知れた、テクニカル分析必携と言われている一冊。
この本が日本語で読めることに日本人は感謝した方が良いレベルの神本なのだが、私の数学力が足りないせいで全然読み進んでいない。
とても悲しい。
読めるけど、分からない。明らかな知識不足を実感しました。ローソク足パターンも丁寧に紹介されているので、株式投資に興味がある人はこの一冊を完全に理解するまで読み込む方がお得だと思います。


おわりに さらに数学が分かると資産運用が分かる

本のお勧めは以上となります。
しかし、本当の意味で資産運用の基礎教育となるものは数学です。
正確には算数と数学です。

みなさん、数学は得意でしょうか。
数学は苦手ではないけど数Ⅲでついていけなくなった私ですが、就職してから数学を中途半端に投げ出したことに後悔しました。
一応、スターデルタとか指数関数とか相関とかまではやっていたのに何一つ理解していなかったのね、と。

数学は自立するための道具です。個人的には、文系理系問わず数ⅡBまではしっかり勉強した方がいいんじゃないかな、と言いたい。

例えば、数学が分かるとドルコスト平均法が万能ではないこととか、複利ってすごすぎんか?とかそういった身近な事に気がつけます。
文系だからと数学を丸投げしてきた方はぜひとも、数学をやり直してみるのもお勧めです。脳トレにもなりますし、ご家庭でお子さんに算数・数学を教えられるようになりますよ。

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