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池田町「池田暮らしの七箇条」から観る行政のロジック。


北陸移住し半年が経過

北陸の県庁所在地に移住しておよそ半年が経過した。
ほとんどが東京とほぼ変わらず、会社とお家の行ったり来たりな生活が続いた感じがする。
私の今の住まいはシェアハウスの体をとっている。知人からそこを使っていいとのことで低家賃で使わせていただき、その代わりとしてある土地の管理事務所としての位置づけもあるため、いつでもほかの作業者が泊まれるよう部屋内の掃除、草刈りなどを依頼されている。
前任者もいたのだが、比較的部屋を汚く使っており、拠点は東京で週末は帰京するため、あまりその辺まで気配りしてなかったようである。それを聞いていた私は、前任者以上のことをするため、掃除だけはマメにするようにして今も使わせていただいている。

濃い地域への移住早々の洗礼

もともとそこの家のオーナーも県外からの人で、そこを管理する会社の社長や前出の前任者も県外でかつ東京の人間である。その前任者が出て行って私が管理することとなったのだが、ここのもともとの住人からの洗礼を受けることになる。
いったん引っ越した当初に家の周りを見てみたが、さっそく放り込まれていたのが、乳幼児の使用済み紙おむつ。古くから住む地元住民がほとんどでよそ者があまりいない地なので、やはりよそ者は忌み嫌われるようだ。
しかも犯人は、どうやら自治会長の娘の家のだれかのようだったので、ここはあまり探らないようにしようと思った。
またさらに先日、オーナーが借りている月極駐車場の雪かきしていた時、たばこの吸殻が雪の塊に刺さっていた。間違いなく駐車場でたばこ吸ってそのまま雪に刺して消した系のものだった。
(※のちに発覚したが、オーナーの上司にあたる社長が、3ナンバーの4WDを駐車させるため角を使いたいとかで、もともと角を契約していた方にオーナーが話してどいていただいたことがあったそう。元々停めてた地元民を追い出すとか、そりゃたばこ吸いたくなるわって思った。)

いずれにしても、こういうトラブルというのはつきものなのだなぁっということはよく理解できた。

池田町長の移住”七箇条”

そしてそんな中、福井県は池田町の町長の移住七箇条が物議を醸しているとの記事が飛び込んできた。

この記事にある七箇条を見る限り、確かに”自覚し”、”~してください。”、”(草刈など)うっとしいと思う方は池田暮らしは難しいです。”、”品定めされるのは自然です。”という表現にはトゲがあり、人を呼び込むのとは逆に作用してしまう。これでは”池田町は典型的なムラ社会で、それに従わなければ「村八分にされる」ならずとも、しんどくなりまよ。”という誤ったメッセージを与えて町のブランド力は落ちると思う。

元々の住民の声を反映するのが行政ロジックなのか。

ただ一方で、そうでもしない限り社会が維持できない現状があるようにも見える。以下の記事にもあるとおり、いわゆる田舎ぐらしで一番大変なのは草刈だと私の知人が話していたが、実際私も地方に移り住んで草刈が一番大変なことはよく解った。特にうちのようにシェアハウスの一戸建てだと、単なる草だけでなくぶっ太いツタが塀づたいに隣の家を侵略することもあり、定期的な草刈はなおさら必須。こういったところからも、田舎暮らしは気をつかわなければならない。

行政サイドとしても、現行の地方交付税で行政サービスを維持するのには限界があるし、助成金は使途が厳密に決められていて扱いが難しい。
昔から住んでよく事情を知っている住民の声の方を重要視するのは当然のことと思える。ある意味、池田町のこの7箇条の例は、同じ問題を抱えるほかのほとんどの市町村の声を代表している、という見方もできる。そういった”悲鳴”じみたものをもってみんなで助け合いを強制してでも生活を維持していく、というよりも維持せざるを得ない現状を理解し実践してもらう。それが行政のロジックなのかもしれない。

独自ルールの強制から思いやり持って各々動く世界へ

ただ、それだけでは、当然のことながら生活を維持することはできないし、そもそも人が来ないと始まらない事。北風と太陽の北風のようなもので、厳しさばかりでは人は来ない。独自のムラ社会を楽しんでもらえるような工夫やアナウンスの仕方も大事となってくる。
その一つの例として、先日行われたPHR(Personal Health Record)に関するシンポジウムで紹介されていた前橋市の事例について、関連リンクを貼っておく。

DX推進課(※DX=デジタルトランスフォーメーションの略)や未来創造課と呼ばれる部署が各市町村に存在し、こういった取り組みをしている。
(助成金の中でもカーボンニュートラルとデジタルトランスフォーメーションが一番取りやすい分野なので各市町村が力を入れるという事情もあるのだが。)
今までの慣習や常識・ムラ社会にとらわれていた世の中から、それにとらわれないZ世代にとって変わっていく中で、池田町の7箇条のような考え方は淘汰される、あるいは敢えて強制しなくても自発的に動いてくれる人が増えてくるかもしれない。そういったエネルギーを感じるところで仕事している身としては、私の世代とそれより後ろの世代に期待ができるし、そうなってもらいたいと思う(了)。


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