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時間とテクノロジー

※私が読んだ本の書き出しとざっくりした内容を書き留める読書記録です


はじめの一行

はじめに

最初に、奇妙な問いかけから始めたいと思います。
「未来はあなたの前にあるのでしょうか?それとも後ろにあるのでしょうか?」この質問その物を不審がる人は多いでしょう。あたりまえじゃないか、未来は前にあるのに決まっている。そういうイメージは、私たち日本の社会では当たり前にあります。中学校の教科書に出てくる高村光太郎の「道程」の有名な一節でも。僕の前に道はない僕の後ろに道はできるところが驚くべきことに、この「未来は前方にあり、過去は後方にある」というのは絶対的な心理ではありません。アメリカ先住民やニュージーランドのマオリ族などには、未来は後ろにあって過去が前のほうにあるというイメージがあるとされています。

時間とテクノロジー(佐々木俊尚)

いきなり面白い問いかけなので、少し長めに引用してみました。本のはじめの数行で、読者の常識を打ち砕く。こういうことをやられると、次が気になってしょうがないですね。この後本格的に時間に関する私たちの概念をいろいろと覆す話が続きます。もうそんな想像をした時点で手が伸びてしまったのが本書でした。

本書の内容

因果の物語、確率の物語、べきの物語、機械の物語

本書のテーマの割と中心にあるのが、時間です。これを例えば物理の法則から解きほぐしていくことも可能なのですが、今回はどちらかというと哲学チックな手法で時間に迫ったという印象でしょうか。
ところで、私たちが世界を認識する中で、とくに人間が記憶の集積という考え方を採ると、世界を理解する方法の一つとして物語的に理解していく、と考えられます。まずあるのが因果関係。何かの出来事が起こったから、次の結果をもたらした。そんな風に世界を理解しがちですが、実際にはそうとは言えないことも多い。たとえば、「有名大学に行ったから収入が多い」のではなく、「将来の収入が高くなるような潜在的な能力が高い人は、有名大学に入る能力も持っていることが多い」ということが言えるのではないか、といいます。これは因果関係ではなく、相関関係。

そうすると次に考えられるのは、確率の物語です。大数の法則というものが発見されて以降、世界を確率で表すことができるという考えも候補に挙がるようになってきました。しかし、一般的な確率に収まらないことが出てきて、べき乗測の物語が考えられるようになります。ここでビル・ゲイツの事例が登場します。

ビル・ゲイツが超優秀だったことを否定する人はいないと思います。しかし、超優秀だからと言って必ずしも成功するとは限りません。彼の成功のきっかけはIBMと契約することに成功したからです。当時、アップルコンピューターが個人用のパーソナルコンピューターで成功をおさめ、IBMもその分野への参入を計画しました。しかし、OSがない。急いで開発する必要があったのですが、結局自社開発をあきらめ、当時はまだ小さなスタートアップだったマイクロソフト社に開発を委託します。

ビル・ゲイツ率いるマイクロソフト社はこの時にべきの物語に乗ったのです。

そこから今度は、AIの出現による「機械の物語」がひろがってきました。なんだか意味不明な計算をし、意味不明に物事の共通点を抽出し、唐突とも思える結果を出してくるAI。しかしその唐突な結果は社会を正しく表現していたりします。まったくもって因果の物語とは分断された世界があります。

時間との関わり

とここで、ここまで紹介した、因果、確率、べき、機械といった物語と時間はいったいどんな関連があるのでしょうか。少しネタバレ的な話になりますが、世界を「因果の物語」で理解していた時期、私たちは時間的な流れの中で世界を認識していました。しかし、今はいろんな世界が同時に重なり合って存在するような「共時性」の中で生きているイメージが体感的にも強くなってきてはいないでしょうか。現在、過去、未来が明確に分類できないというか、結局、今をとらえるとしたらそこにいろんな要素が混ざり合ってる。そんな世界に生きているのではないか、ということではないかと思います。

これはあるいは量子論的世界観と重なる部分もあるのかもしれません。そういった世界観に関心を持たれている方は、楽しく読める一冊ではないかと思います。

いやーーー、読書って素晴らしいですね。

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ちなみに私はこんな本書いてる人です。


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