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心の深みへ―「うつ社会」脱出のために

※私が読んだ本の書き出しとざっくりした内容を書き留める読書記録です


はじめの一行

はじめにーーー「心の問題」を掘り下げあう

一九七〇年代に、柳田邦男さんが『マッハの恐怖』などの著作や、テレビで活躍しておられるのに接して、その明晰な分析力や着実な論理の組み立てに大いに関心していたが、まさか対談をしたり二人で著作を出したりするkとになるとは、とうてい考えてもみなかった。
いうなれば柳田さんはもっぱら外界のことに関心を持っておられるのに対して、私は内界に注目しているので、二人の接点はないだろうと、せっかちな判断をしていたからである。

心の深みへ―「うつ社会」脱出のために(河合隼雄、柳田邦男)

対談番組でも見ているかのような穏やかな前書きのように見受けます。
普通に、共著者ともいえる柳田氏の都のなれそめを語る河合氏。
著者が何かの世界で名の通った人であるというのは結構大事なことで、そういう方の本は無理に売り込もうとする前書きを描かなくとも、売れてしまうのかなとふと思ってしまいました。

本書の内容

全体の構成

本書は全七話で構成されています。一話一話はそれぞれ違ったテーマでの対談です。時期も違えば、対談の機会も違う。それぞれが雑誌などの規格による対談だと思うのですが、行ってみればこのお二人の辛みの総集編のもののように思います。一話一話が独立したテーマなので、自分の好きなテーマ、気になるテーマについてピックして読むことも可能だと思います。

第一話 はじめて門をたたく

河合氏と柳田氏の初めての対談の様子です。印象深いのは、河合先生が心理分析家として、こんなことをおっしゃっている部分。学術調査などにおいては何万人もの人のコメントをとって、普遍性を持った考えを導き出すものです。しかし、臨床家である河合先生はそれを、直接接する人一人一人の言葉を総合したときに、そういった普遍的な全体的な考えに触れることもあるようです。

河合氏は科学はこれからはそういった個々の中から出てくる普遍性に着目すべきだと語っています。これがユングの言う、集合的無意識を意識しているのかどうかはわかりませんが、興味のある話です。

第二話 何が人を幸福にするかを描く

この章で最も印象に残ったのが、二者択一を超えたところに至る考え方についてです。例えば、イデオロギー論などは白か黒か敵二者択一です。しかし実際のところは完全に白黒つけるべき問題なんてそうそうなくって、それらの間にやっぱりグレーがあるんじゃないか、というお話。

また、悩みについても書かれています。かつては多くの場合青年期に悩んだものです。この時期であると、抱えているものが少ない分、ちょっとした無茶をしながら自分のアイデンててぃを確立していくことができます。しかしこれを中年期に持ち越してしまうと、生活や家族を抱えた状態で悩まなければならない。無茶できない分、結構きつい状態になることも多いのではないか、という話がありました。

第三話 生きにくい子供の深層を探る

かつて日本では「もったいない」というものがない前提のしつけを子供に対して行ってきたといいます。高度成長や核家族化で古来からあった日本の家族システムが崩れていったという話。そういった多くの家族で役割分担をしてきたことが今は二十代の若い夫婦が二人で行わなければならなくなった。両親の負担が増え、子供へのかかわり方がずいぶん変わってきている。そういった変化に十分私たちの認識が対応しきれていないのが現在かもしれません。


こんな感じで第七話まで続きますが、ここではこの程度にしておきましょう。

本書を読んでの感想

本書のタイトルの中に「うつ社会」脱出のために、とあります。が、うつ病云々という議論を期待すると肩透かしを食らうと思います。全体を通して、人の心であったり、たましいであったり、というものが社会とずれてきているという話がたくさんあるわけで、そういったギャップが人を生きにくくしている。そんな中で、私たちはどう考え、どう生きていくか、ということが全体をとおし手のテーマになっているのではないかと感じました。だから何か具体的な悩みの答えを探して読むというよりは、今のもやもやの正体はどこにあるんだろう?といった心持で読むほうがしっくりくるのかもしれません。

そうすると、なるほど、と思える話がたくさんあるんじゃないかと思います。


いやーーー、読書って素晴らしいですね。

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ちなみに私はこんな本書いてる人です。


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