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自主経営組織のはじめ方――現場で決めるチームをつくる

※私が読んだ本の書き出しとざっくりした内容を書き留める読書記録です


はじめの一行

はじめに

長年にわたり、私たちは数多くの組織にかかわり、階層型から自主経営(セルフマネジメント)への移行を支援してきました。その過程で、さまざまな経験と知見を積むことができました。最大の学びは、どの組織にも当てはまる変革メソッドなど存在しないということです。それくらい自主経営は、組織ごとに異なる、常に新しい運営方法なのです。

自主経営組織のはじめ方――現場で決めるチームをつくる(アストリッド・フェルメール、ベン・ウェンティング)

組織というものは生き物といいますから、パターン化したノウハウというのはそうそう使えない。そういいたいのでしょうね。本書のはじめに、はさらっとしたもので、自主経営組織の概略と本書の構成が紹介してあるだけです。

本書の内容

全体構成

本書の章立ては以下の通りです。

第一章 自主経営の誕生
第二章 階層型から自主経営へ
第三章 マネジャー
第四章 間接部門
第五章 チームコーチ
第六章 自主経営チーム
第七章 解決思考のコミュニケーション
第八章 解決思考のミーティング
第九章 対立に対処する
第十章 最後に……よくある質問

本書は、特に第三章以降はかなり細かいところまで書かれています。いわばマニュアルといってもいいレベルじゃないかと思います。ですからこのブログでは主に第一章と第二章についてご案内します。

自主経営組織の誕生

19世紀の産業革命時から発展してきたマネジメントスタイルはこんな考え方をもとに考えられました。

「規則を統一して監督すれば、組織のプロセスを管理できる。そうすれば、財務的な健全性を保ち、利益を上げることができる」

こういった考えから、作業の個別化と分業化が進み、現場の意見はさほど重視されなくなりました。その結果従業員と組織の分断が起こる判明、経営陣は従業員に責任感を求めます。この矛盾を解消していこうということで様々なマネジメントスタイルが試されてきました。現場の人間こそが、その業務に精通している。だからその責任を現場に戻さなければならない、ということです。

それを現実のものにするに際してのざっくりした完成図は、まずチームメンバーは、チームの結果に対して全員で責任を負います。チームの意思決定は合意により、メンバーの一人一人が決定事項に対して個人的に責任を持ちます。マネジャーは従来のような管理ではなく、ファシリテーションを行います。ビジョン、仕事を進めるためのフレームワーク、組織の方針などについてチームと議論します。さらに、チームにはコーチが付き、必要に応じて支援や助言を行います。

経営陣から考えると、なんともリスキーな印象があって、ついついハンドルを私のを躊躇したくなる組織形態ではありますが、本書では自主経営にはこんな効果があるといいます。

・従業員満足度の向上
・顧客満足度の向上
・間接費費の節約
・コミュニケーションの簡素化
・ルールや規則の削減

翻訳者のコラムによると、このような自主経営の試みを行う会社に共通するのは、組織を「機械」から「生命体」へとらえなおすことだといいます。機械には「予測と統制」という前提があるのだそうです。緻密にデータを集めて分析することで未来は予測できるし、徹底的に考えられた戦略や計画を作れば、安定して成果を生み出すことができるという前提に立っていました。しかし、今やその前提が覆されたといいます。そういった社会の中では、組織を生命体としてとらえ、しなやかさや、困難な環境においても予測を超える進化を生み出す組織である必要があるようです。

組織の進化の過程

ここにある話は、フレデリック・ラルーの『ティール組織』からの引用になりますが、フレデリック・ラルーはその著書、ティール組織の中で5つの段階で説明しています。

衝動型組織(レッド)

人地のトップがすべて、という原始的な方法論。部族の時代に生まれたといいます。今の時代でいうと、ギャングやマフィアがこの形態をとっているといいます。非常時や敵対的な環境に適しています。トップの人間性に組織が左右され、やりすぎると逆らえばバツがあるという恐怖の夜統制に陥りがちです。

順応型組織(アンバー)

長期的な視点と正式な改装を持つ組織。大規模な組織を運営するために生まれました。現代ではカトリック教会、軍隊、公立学校システムなどが例に挙げられます。指示命令系統や業務フローなどが発明され、前例の踏襲と秩序の維持が重視されます。そのため、階層の上下間の移動が難しく、変化や競争には向いていません。

このイメージだと、役所や古い体質の起業もここに分類されそうな感じですね。

達成型組織(オレンジ)

産業革命以降に発展した、現在では最も主流となっている組織形態。現状を分析し、改善を行い、目標の達成に向けて動き、イノベーションを試行します。グローバル企業が象徴的でしょう。科学的マネジメントが重視され、実力主義が発明されました。その結果、誰もが出世できるようになり、競争に勝つことが追及され、飛躍的に生産性が高まりました。しかし、階層の複雑化による経営スピードの劣化、出世から外れることへの恐れ、機械部品のようにスキルや機能を要求されることにきょる虚無感といった兵がもあります。

個人的な印象からすると、多くの大企業はオレンジとアンバーのはざまにいる感じでしょうか。

多元型組織(グリーン)

権限委譲と多数のステークホルダーの視点を特徴とする組織。社会的意義を追求する非営利組織や、パタゴニアのような文化重視の組織が挙げられます。対話の場が多く、組織文化や関係性を重視することでメンバーの高いコミットメントを実現しています。しかし、多様な価値観をすべて受け入れようとしすぎると、意思決定に時間がかかったりします。また、組織が完全にフラットではないため、社長とそれ以外の溝が生まれやすいという短所もあります。

ティール組織

ティール組織には三つの突破口があるといいます。
①自主経営 階層や合意に頼ることなく、同僚との関係性の中で働く組織構造や仕組みがある
②全体性 誰もが本来の自分で職場に来ることができ、同僚・組織・社会との一体感を持てるような風土や慣行がある
③存在目的 組織全体が何のために存在し、将来どの方向に向かうのかを、常に追求し続ける姿勢を持つ


本書では、ティール組織における①自主経営において主に描かれた本です。

自主経営組織への移行

実務の中で経営者であったり、マネジャークラスの人が、自主経営組織、いいね!とおもっても、果たして自分たちにできるのだろうか?という不安はあるわけです。本書ではその捨てぷが解説されています。

まず一歩を踏み出す前に、自主経営とその影響について、組織のメンバーとの議論を行うことが重要だといいます。全員が意見形成にかかわることそのものが、導入プロセスの一環だといいます。当然反対意見もあるでしょう。そういった場合に経営陣は組織の方向性を定める立場にあるという反面、その反発が大きすぎる場合にはその反対意見への対処も必要となってきます。

そういった場合、一気に自主経営組織に移行するのではなく、たとえば組織の一部を切り離して自己組織化する方法も考えられます。つまり、臨機応変に、ということなのでしょう。

本書において、「移行がうまくいく条件」挙げられているので、確認しておきます。
・経営陣が「自己組織化」を十分に理解し、その原則を受け入れている。
・移行の影響について、チームメンバーと連携をとる。
・仕組みを十分に整える
・チームがどの時点で自主経営できるようになるかについて、チームメンバーと連携をとる。
・移行への準備ができている、あるいは、その意思があるチームから始める。他のチームはそれぞれのタイミングで後に続けばよい。
・発展の経過に対する評価を常に行い、自主経営の精神で問題を解決し続ける。

本書は絶対的な「正解」を提示しない

さて、1、2章のさわりの部分だけご紹介しました。この後には、非常に詳細にわたって、一つ一つの項目に関する検討が示唆されています。ただ、全体を通して、「必ずこうあるべき」という記述はほとんど見当たりません。つまり、こうすれば、ああなる、という話ではなく、組織それぞれに合った方法があるので、やりながら検討していくことが重要といいたいのではないかと思います。具体的な方法を自分たちで考えることがそもそもの自主経営組織への移行のプロセスなので、本書ではその検討項目を提供するよ、というスタンスのように思います。だからここに出てくる項目を一つ一つ、やりながら解決していくことが重要なのではないか、という風に感じましたがいかがでしょうか。


いやーーー、読書ってすばらしいですね。


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ちなみに私はこんな本書いてる人です。


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