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ミネストローネのせめぎあい

具沢山のスープを見ると、私は大人数の宴会を思い浮かべます。

最近では宴会は好きではないと言い切る人も多いけれど、私は昔から人の集まりが大好き。普段はひとりで仕事をしていることが多いし誰かとお酒を飲むことが好きだからという理由もありますが、子どものころから人の大勢いる環境で育ったせいが大きいのかもしれません。好きな人たちが集まるにぎやかな場所にいると、自分が人の輪の一部になって混ざり合って溶けていくような安心感があるんですよね。

とはいえ、会話を楽しみたいなら宴会じゃないな……というのも確か。はしゃいで笑って楽しい気分で帰るみちみち「あれ、今日は誰と何を話した?」と思い返そうとして、何も思い出せないことも多いです。飲み過ぎたせいだけではないはず。

居酒屋だと、みんなの声が時間につれ大きくなっていきます。声を張り上げて話をする声にまた別の声がかぶさって、結局「ガヤガヤした人の話し声」になってしまっています。トイレに立って通路を歩くと、右からも左からもそんな声の塊がワーンと聞こえてくる、あの感じ。話の内容なんて言葉の端々しか聞き取れません。
だから、もし誰かとじっくり話したいなら、大人数よりふたりか三人。信頼できる相手なら差し向かい、三人の会話は視点が増えて話が深くなるという良さがあります。

これ、スープでも同じだなーと思うのです。素材とじっくり向き合いたいときはあまり食材の数を使わない方がいい。逆に、にぎやかな味にしたいなら、多種類の具材を合わせていくということです。
フレッシュなトマトにたまねぎとにんにくをちょっぴり加えたら、旬のトマトをたっぷり味わえるスープになります。ここに、にんじん、キャベツ、じゃがいも、セロリ、マッシュルームと次々入れていくと、ミネストローネに限りなく近づいていきます。「がやがやした味のスープ」ですね。そのとき、トマトはどちらかといえばベースの味になっていきます。「トマトのスープ」ではなくて「トマト味のスープ」ですね。

宴会が好きなように、私はミネストローネも大好き。野菜のうまみがにぎやかに混ざり合った味がミネストローネの大きな魅力です。でもだからこそ、新鮮な野菜が手に入って素材そのものの風味を味わいたい、そういう場合は組み合わせるものを厳選して、素材の味がまっすぐ味わえるようなシンプルなスープを作ります。

がやがやスープと、じっくりスープ。素材や気分によって変わります。スープだけじゃなくてどんな料理にもいえることかもしれませんね。

今日はがやがやしたミネストローネを作ってみましょうか。

【具だくさんのミネストローネ】
材料(4~5人分):玉ねぎ 1/2個 にんじん 1/2本 セロリ 1/3本 にんにく 1片 エリンギ大1本 じゃがいも 1個 キャベツ 1/6個 トマトホール缶 1缶 ベーコン(できれば塊か厚切り)40g 白インゲン豆 200g(水煮)オリーブオイル 大さじ3 塩 小さじ1と1/2ぐらい

1 野菜とベーコンはすべて1cm角に刻む。にんにくはスライスする。
2 鍋にオリーブオイルを入れてベーコンを炒める。色づいたらにんにくを入れて香りが立つまで炒め、次にたまねぎを炒める。
3 にんじん、セロリ、エリンギ、キャベツ、じゃがいもを加え、塩も入れて野菜がしんなりするまでしっかり炒める。野菜がくったりしたら缶トマトも加えへらでつぶしながら2~3分炒める。
4トマト缶のジュースとインゲン豆を加え、さらに野菜がひたひたになるまで水を加えて2~30分煮込む。最後に水を少し加えて水分を調節し、味を見て塩でととのえる。

読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。