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大量のじゃがいもと父のポテサラ

私の両親は、父が会社を定年になった頃、二拠点生活をするべく山梨に家を持ち、近所の人から畑を借りて野菜作りをしていたんですね。父が体を壊して東京に戻ってくるまで15年近く、結構な量の野菜を作り続けていました。

東京育ちで野菜はスーパーや八百屋で買うものだった私にとって、新鮮な野菜がたっぷりというのはとても魅力的でしたが、そのうち、これは大変だぞ…ということがわかりました。というのも、畑の野菜はスーパーと違い、その時期に採れるものしかありません。きゅうりの時期にはきゅうりが毎日どんどんできて、収穫しないとまたたく間に巨大化します。冬には聖護院大根という丸くておいしいかぶらができるのですが、とても少人数では食べきれない量がゴロゴロできて、朝・昼・晩と大根です。ご近所さんも野菜を作っているので、おすそ分けどころか、さらに届いたり。

夏休みに家族で遊びに行き、畑でもぎたてのきゅうりを食べるのは楽しいイベントです。母がぬか漬けにしたきゅうりも最高でした。で、帰る日になると母が大量の野菜を持たせようとします。冷蔵庫に入らないからと断りつつも、相当な量の野菜を持ち帰ることになります。

たとえば、普段3本か4本袋に入ったきゅうりならサラダで食べて終わりですが、それではとても追いつきません。捨てるぐらいなら次は即席漬けみたいにしてみようか、炒めてみようか、スープにしようか…と、いろいろな食べ方をしているうちに、きゅうり料理のバリエーションが増えていき、扱い方も覚えるようになり、きゅうり料理にかなり強くなれたのです。

料理の基本は素材の扱い方、素材の魅力を知ることですが、こうやって「1つの素材を食べ続ける」というのは料理を上達させるには(多少食べ飽きることはあるにせよ)すごくいいんだなと、そのとき思いました。

父の自慢はじゃがいもでした。5月ごろ、一度に200kgできます。さすがに家族で食べきれず、ダンボールに詰めては親戚や友人に送りつけていました。父はよくポテトサラダを作っていて、そのレシピを同梱したいからと頼まれて、私はイラスト入りのポテサラレシピを書いて父に渡しました。マヨネーズではなく酢とオリーブオイル塩だけで作るドレッシングで作る、さっぱりしたポテサラです。じゃがいもが大量に届いてマヨネーズ味のポテサラに飽きたら、このレシピが役立ちます。(実家はポテサラといえば最初からこれでしたが)

新しい味に挑戦すると料理の楽しさがひらけます。それにはやっぱり材料がたっぷりあることって大事なんですね。父も他界し、じゃがいもは送られてこなくなってしまいました。でもあの頃を思い出してときどき単品野菜の箱買いをしています。

【父のポテサラ】
材料(2~3人分):じゃがいも 4~5個(600g)たまねぎ小1個 酢大さじ2 オリーブオイル90mL 塩小さじ2/3 粒マスタード小さじ1 (あれば)パセリ 少々

1 ドレッシングを作る。酢に塩とマスタードを混ぜ、オリーブオイルを少しずつ加えながらかき混ぜる。不透明でとろっとした感じになればOK。
2 じゃがいもは皮つきのままゆでるか蒸す。熱いうちに皮をむき(やけどしないように)、半分に切ってから1センチ幅ぐらいにカットする。熱いうちににドレッシングを大さじ2ほど加えて全体を混ぜて粗熱が取れるまでさます。
3 たまねぎを薄切りにして軽く塩を振って5分おき、水にとってさらす。ポテサラが少し冷めたら残りのドレッシングとたまねぎを混ぜる。好みでパセリのみじん切りを混ぜる。



読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。