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ひとり暮らしに寄りそう料理本5選

ひとり暮らしで自炊する人にお聞きしたいのですが、レシピ本を見て困ることはありませんか?
ふつうレシピ本は2~4人前が普通で、しかも材料の種類が多かったりすると、余ってしまいます。それに、2人分のレシピを単に半量にしても味が決まらないことや調理しにくいことも。調理器具やキッチンの広さにも制限があるでしょうし、献立のシステムから変えていかないと難しいのです。

そこで今日は、ひとり分のレシピ本で、ひとり暮らし事情に寄り添って作られていると思う料理本を5冊、ご紹介したいと思います。

ベターホーム協会『ひとり分の和食』

まずは教科書的な一冊から。ベターホーム協会編の、ひとり分の和食の本です。和食ということもありますが、頭にだしの取り方があることからして、料理の学校って感じですね。その次に割とページをとって、小鍋、小さな土鍋の使いこなしについて書かれていて、すばらしい!と思いました。ひとりの自炊って、鍋の選び方すごく重要です。

レシピもひとり分作るということがよく考えられていて、決してたくさん素材を使うものも出てこないし、特別な調味料も出てきません。オーソドックスな、そしてどれもごはんのおかずとしてしっかり成り立つ一品ばかり。

章立てが、まず肉のおかず、それから丼ものや麺類、そのあとで魚、最後に野菜の小さなおかずという順番になっているのは、今の人たちのとっつきやすさを考えたんだなと思います。普通に考えたら肉、魚、丼や麺ですよね。レンジ調理も入ってるし。

教科書的な、という表現は、里芋やごぼう、あるいは魚など、一人暮らしだとわざわざ使わないかもしれないなあ……と思われる、でも料理をする上では使いたい素材がきっちり網羅されていて、学ぶ人に完全に迎合はしていないところ。ちょっと表現は固いですが、一人暮らしといってもちゃんと料理をしたい人には、おすすめできる真面目な本です。

メニュー例
●豚肉のみそくわ焼き
●厚揚げのひき肉あん
●ささみのごま焼き
●トマトすき焼き
●かつおのづけ丼
●ゴーヤチャンプルー  など

※頭の写真に入ってないのは、kindleで買っちゃったからです。

瀬尾幸子『一人ぶんから作れるラクうまごはん』

料理レシピ本大賞の常連・瀬尾幸子さんは第二回で『ラクうまごはんのコツ』で大賞をとられていますが、ここでは一人ぶんにフォーカスしていて第一回で入賞受賞されている同シリーズのこちらをチョイス。ここで紹介した中では一番野菜がどっさり食べられるレシピで、こんなごはんを一人暮らしの子供が食べていたら安心する親は多い、みたいな感じですね。

大きな特長として、前半に野菜や肉をゆでておいて、それを使いまわしておかずを作るという方法が紹介されています。
第一回レシピ本大賞の大賞作は飛田和緒さんの『常備菜』で、この後空前の「作り置きブーム」がはじまります。この本が出た頃はまだそれほど確立していなかったと思います。
作り置きは好みのわかれるところですが、「簡単に、余らせたくない、だけどちゃんと料理したものが食べたい」という人には最適で、ゆで肉をゆで汁ごと保存とか、すごくいいと思います。
野菜、肉、魚それぞれに料理の基本みたいなことが織り込まれていて、おそらくこの本で料理を作っていくと、かなりのことができるようになるはず。

あと、「ひらひら肉とひき肉は火が通りやすい。だから短時おかずの強い味方」「魚料理は1人分なら刺身用パックを利用しましょう」「電子レンジはじつは一人分のごはんこそ、手軽においしくつくれるのです」といった感じで、それ手抜きじゃないよ、むしろそっちがいいんだよと力強く言ってくれる先生が頼もしい。

いつも思うけど、瀬尾幸子さんの料理のすぐに作れそう感はすごい。それでいて、これ食べたい!って思わせる。天才ですね。

メニュー例
●小松菜と油揚げの卵とじ
●ダブルだしの塩ちゃんこ汁
●ゆで鶏スライス(つけダレ4種紹介)
●牛肉と春菊の韓国風さっと煮
●ブリと長ネギの水炊き
●レンジカボチャ煮  など

はらぺこグリズリー『世界一美味しい煮卵の作り方 家メシ食堂ひとりぶん100レシピ』

いま、昨年のレシピ本大賞である『世界一美味しい手抜きごはん』が売れに売れているグリズリーさんですが、ここでは「ひとりぶん100レシピ」とあるこちらを。というか、私はこの本が出たときの衝撃の方が大きかったんですよね。

それまでのレシピ本が基本的にファミリーの「豊かさ」を追求していたことに対して、この本はシングルの「貧しさ」に注目して書かれている。レシピ本の系譜において、たぶんエポックメイキングな本なんですよ。

作り手の視点で見ると、グリズリーさんの本は、「やることを決めている」のではなく「やらないことを決めている」料理本です。これは前書きにも書かれていますが、珍しい食材や調味料は絶対使わない、高価な素材は使わない。「適量」や「少々」という表記も一切なし。

ターゲティングも「一人暮らし=コンビニ食や外食に慣れた人」たちで、レシピの味付けはそうした料理をイメージしています。麺、米、肉、卵を中心に、コクのあるしっかりした味つけ。こむずかしい野菜料理もない。
ちょっとけなしているように見えるかもしれませんが、むしろ逆で、すごいのです。現代人の舌をよく理解していて目線が低い。おそらく、ご自身が既存のレシピ本に不満があったんじゃないでしょうか。2冊出した本が2冊ともレシピ本大賞をとるメガヒットになったという結果を見てもわかります。

新書で料理本というのも新鮮で、スペースぎゅうぎゅうなページに3ステップの写真が入っているところにこだわりを感じました。味のイメージがつきやすいものが多いというのも、再現性につながります。どの点をとってもエッジが立っています。

この本にはミートソース、ロールキャベツ、コロッケなど、割と手間のかかる思う料理も入っています。300円ちょいで作れるガトーショコラまで!
たまねぎを炒めるみたいな作業は、おそらくより作りやすさを重視したのか、新刊ではレンジ加熱に変わったりしていますので、レシピとしての作りやすさを求めるなら「手抜きごはん」のほうがおすすめかな。

メニュー例
●世界で一番美味しい煮卵
●タダごとではない旨さのアボカドの食べ方
●至福のチャーシュー丼
●母の唐揚げ
●カルボナーラうどん
●本格絶品ガトーショコラ など

山口祐加『週3レシピ 家ごはんはこれくらいがちょうどいい』

仲の良い山口さんの新刊です。私がオビに推薦書いているので、なるべく客観的にレビューしますね。
この本の最大のポイントは、料理を単に調理だけでなく、買い物からはじまるオペレーションとしてとらえているところ(“ループ”という言葉で表現されています)。
「週に3回自炊する」「その3回で買った食材を使い切る」というところが着地点です。材料を余らせたくない、なるべくキッチンをコンパクトにしておきたいという人向けですね。

構成に特徴があります。まず、最初の見開きで、今月はこれを食べよう!と主役素材がアナウンスされ、3日で作る料理が紹介されます。
次に、見開きで買い物のリストがあります。旬の野菜のこともありますし、そぼろや蒸し鶏などが主役になるときもあり、野菜の目利きや下ごしらえが説明されています。
で、それをふまえてそれぞれのレシピ。全部作り終えると、すべての食材が使い切れるようになっているというわけ。

とにかく目的がクリアで明確。目的は食材使い切りなので、献立が決まっているのはきゅうくつ、という人は別の本を読んだ方がいいですね。レシピ本というより自炊ノウハウの本とご本人も言い切っています。もちろん1品ずつ作ってもOKですが、買った食材をきれいに使い切れる快感を味わってみるの、おすすめです。

一汁一菜のうち「菜」のほうは、炒め物、あえもの、どんぶりや焼きそばなど、本当に作りやすくてシンプルな料理。うまいものをその若さで一生分食べているのではという山口さんならではの、安定感ある「絶対うまい組み合わせ」です。外食や中食を利用することも考えたら家ではこれぐらい作れれば十分。そういう潔さも気持ちよい。自炊の幸せを味わうのって難しいことじゃないんだよなーと、あらためて思うなど。

オビには「きどらない、りきまない、ここちよい。週3と言わず、毎日作りたくなる。」という、本を読んで感じたままの言葉をお送りしました。

あと、イラストかわいい。

メニュー例
●トマト卵炒め
●蒸し鶏ごはん
●刺身の薬味だれ和え
●夏野菜のトマト煮込み
●ねぎとさばのスープ
●そぼろ和え麺  など

印度カリー子『ひとりぶんのスパイスカレー』

「スパイスカレー」という、非常にハードルの高そうな、でも作ってみたいなと思う料理を、完成度の高いひとりぶんレシピにしてみせたこの本。読めば読むほどよくできています。

「グレイビー」と呼ばれる、スパイスカレーの素のようなものをまず作り、それに具や水分を加えることでさまざまなカレーに展開させていきます。そもそもこのグレイビーがものすごくシンプルなつくり。スパイスもたった3つだけで、えっ、これでいいの?と思わせるのですが、実際作ってみると、このグレイビーのすごさがわかります。

あとは、ひき肉を入れてキーマカレー、チキンを入れたらチキンカレー、ココナッツミルクでのばしてココナッツカレー、豆入りのビーンズカレー、カボチャカレー、鯖缶カレー……無限。

こんなにおいしいスパイスカレーがこれほどシンプルにできるということが目からうろこですし、グレイビーは作り置きがきく。印度カリー子さんはスパイスカレーの普及を目指し、レシピに関しては標準化するところに注力していると他の記事で読みました。

スパイスカレーというのは非常に奥深い世界で、この道に入るほとんどの人がカレー沼の深みにはまっていく中、カリー子さんは非常に冷静にカレーとの距離感を保っていて、でも熱量と愛はちゃんとあって、すごくいいんですよね。この本についてはひとり暮らしじゃない人にも是非読んでほしい。と思います。カリー子さんにもお会いしてみたいな。

メニュー例
●ベイガンキーマ(なすとひき肉のカレー)
●たまごカレー
●バターチキン
●チャナマサラ(ひよこ豆のカレー)
●パンプキンカレー
●ぶりのカレー  など

++++

さて、ひとり分料理の本、いかがでしたでしょうか。料理するといっても、自分が料理に何を求めているかによって、選ぶ本は全く違うものになると思います。だからこそ、料理本がこんなにたくさんあるんですが、選ぶとなると迷ってしまいますよね。今回はなるべくバラエティを持たせて選んでみました。ぜひ、あなたに合う一冊を選んでみてください。


ここからは宣伝になってしまいますが、私の本もひとり暮らしにはわりかし悪くないですよ。ちょっと多めなので、残ったら鍋ごと冷蔵庫に入れて、またあたためて食べればよいのです。








読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。