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砂糖ひとさじの理由

料理が好きな方やプロの料理家には、レシピサイトに一般の方が投稿する、十分な検証がされていないあやふやなレシピが入っているのはいかがなものか、という方がわりといます。じつは私も料理を仕事にする前はそう思っていました。

スープ作家になってあるとき、ミネストローネについて調べていたんですね。ミネストローネはイタリアの家庭料理です。日本の味噌汁みたいにそれぞれの家庭の味、地域の味があります。それでふと、クックパッドでミネストローネのレシピを調べてみました。

ちなみに今現在、クックパッドでミネストローネと検索すると4800以上のレシピがあります。それを片っ端から見ていったんです。定番がたまねぎ、にんにく、にんじん、セロリ、キャベツ、トマト、じゃがいも。それから、ピーマン、ブロッコリー、きのこ、ズッキーニ、いんげん、コーン、白菜などが入るものもありますし、トマトのかわりにジュースを使う人もいました。イタリアではかなりの確率で入る豆は意外と少なく、パスタは思ったより少ない印象。肉はソーセージかベーコン、鶏が入るのが多い。実にバラエティに富んでいます。

そのうち、ケチャップや砂糖を使うレシピが結構多いな…ということに目がとまりました。ケチャップは香料が独特です。入れるとケチャップ味になってしまうのにな、なぜこういうレシピになるかと考えると、スープの酸味をケチャップや砂糖の甘みでやわらげているのです。そのままだと子どもが「これ酸っぱくて食べられない」と言うから。

さらに、なぜ酸っぱくなるんだろうと考えるとこれはもう明らかで、トマトの入れすぎです。トマトの水煮缶をひと缶全部入れてしまうせいです。日本の一般的な家族の食べる4~5人分のミネストローネを作るとき、1缶では多すぎる。でもほかの料理のあてもないし缶詰を半分だけ残したくない。それでケチャップや砂糖で味のバランスをとるのです。

当然ながら、イタリアの本場のミネストローネとは違ってきす。ある意味、邪道といいますか。
でも、と思うのです。トマト缶を残したくないから全部使っちゃおう、野菜だけじゃ寂しいから鶏もブイヨンキューブも入れちゃおう。子供が酸っぱいっていうから砂糖ひとさじ足してみよう…本場の味を忠実に作って子供に拒否されるか、砂糖をひとさじ隠し味に使ったスープを子供においしいと食べさせるか。あなたが食卓をあずかる人ならどちらをとるでしょうか。

ネットが家庭料理に及ぼした影響はプラスもマイナスもはかり知れません。でも、このミネストローネに入れるひとさじの砂糖は、料理をする多くの方たちの無意識の集積であるぶん、きわめて現代的な合理性を持った方法ですし、そうしたレシピとの出会いから私たち料理家も学ぶことがたくさんあります。

今日のレシピはミネストローネ。ケチャップも砂糖も使いませんが、キッチンの都合をなるべく考えて作ってみました。

【キッチンのご都合ミネストローネ】
材料(3~4人分):キャンベルオニオンスープ1缶 カットトマト缶1缶 豆ドライパック缶小1缶(種類はお好みで) 好みの野菜何でも(例:キャベツ小1/4個、いんげん5~6本 にんにく1片) ベーコン40g ショートパスタ80g オリーブオイル、塩、粉チーズ

1 オニオンスープ缶、トマト缶、豆缶を鍋にすべてあける。オリーブオイルをまわしかけ、水200mLと塩を少々加えて火をつけ、煮たてる。
2 キャベツを手でちぎって入れ、いんげんはハサミでカットしながら入れる。にんにくは皮をむいてつぶして入れる。ベーコンとショートパスタも入れ15分ほど煮込む。味を見て足りなければ塩でととのえる。粉チーズやタバスコなどはお好みで。






読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。