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はじめに~料理のピラティス

トレーニングの方法って、昔と大きく変わってきたと思いませんか?たとえば筋トレでも、しゃかりきに腕立て伏せや腹筋を頑張るのはひとむかし前の話。今は、ストレッチやピラティスなどのエクササイズを組み合わせて、体の内側にある筋肉「インナーマッスル」をコントロールできるようにエクササイズをする選手が増えています。インナーマッスルを鍛えると体幹がしっかりと定まり、体全体をしなやかに効率よく使えるようになるそうです。

これは、料理の上達法にも取り込めるなと感じました。
料理の基礎を一から覚えるのは、どちらかといえば料理の腕立てや腹筋に近いものがあります。でも、スポーツによって筋肉のつける場所や理想のつけ方が変わるように(ラグビー選手と水泳選手とマラソン選手では全く体形も違いますよね)、料理のテクニックだって、和食が中心の人、中華が好きな人、経済料理優先という人、その人が家で料理するやり方によって必要なものが違うんじゃないでしょうか。

いまやネットを頼りに、誰もが料理を学べる時代です。だしのとりかたも、包丁の使い方も、魚のさばき方も、わかりやすい動画で教わることができます。問題はその情報が多すぎて、どこからはじめればいいか判断できないということ。そして、自分がどんな筋肉をつけるべきかの判断ができないということです。簡単そうに見えて難しい料理、簡単なのに難しそうに見える表現が、さらに私たちを迷わせます。

それと、もうひとつ。たとえ基本を学んで料理が上達したとしても、日々の料理の悩みが調理技術だけで解決するわけではないということです。悩みは技術とは全く別のところからやってくる。というか、降ってくる。

料理の基本自体は、すごく大事だなって思っています。
ちゃんとした“だし”のとりかた。おいしい肉じゃがの調味料の配合。たまねぎのみじん切りやキャベツの千切りの手順。卵焼きをうまく巻くコツ。合理的で、おいしくできる方法を知れば、料理上手になれるはずです。

私自身も料理を始めたころ、こうした料理の基本を覚えたものです。初級者向けの料理本を読んだり母に聞いたりしながら上達と失敗を繰り返しつつ料理して、まあ、家庭料理ならある程度スムーズにできるようになりました。

でも、と思うのです。今になってふりかえると、同じ料理を身につけるにも、もうちょっと効率よく上達する方法があったんじゃないかな。

いまや料理なんて、しなくてもなんとかなる時代です。一歩外に出れば、外食、デリバリー、冷凍食品やレトルト、お惣菜と、食べる手段はたくさんあります。そうした中で仕事でもない料理をするモチベーションを保つことって、それほど簡単なことじゃありません。我慢する理由のない悩みは不満に変わりやすいものです。

それでも、料理は日常的に自分を助けてくれる技術です。男も女もなく、簡単な料理をいくつか覚えたら大きな武器を手に入れたようなものです。

もし自分の手で料理をすることに価値があると思えるなら、教科書に書いてあるような料理の基本だけではなく、「何をどう学ぶか」、さらに「自分はいま何のためにこの作業をしているのか」「この状況でどうするべきか」というような、問いを立てたうえで解決する力を身につけることは、すごく役立ちます。
予想外のことや制限の多い自分のキッチンに立ったとき、自分を支えてくれるのは、単なる知識や技術ではありません。たとえれば料理のインナーマッスルだからです。それは料理を超えて、生きるためのスキルにもなるはずです。

と、いうことで、料理の全体像をつかんで自分なりの方法を考えられるような考え方を鍛えるエクササイズをやってみたいと思いました。インナーマッスルを鍛えるのですから、料理のピラティス、とでもいえばよいでしょうか。

・味付けってどんな仕組み?
・組み合わせのコツってあるの?
・だしってそもそも何?
・献立を立てるのがなぜ難しいの?

こんなふうに、私が主婦生活の中で体験から身につけ、スープ作家として活動するなかで整理してきた、家庭料理のもっともシンプルで大きなとらえかたを、技術、知識、考え方などに分けてこれから少しずつ共有してみようと思います。

一回5分ぐらいの軽い筋トレをするような気持ちで、少しずつ。これを読んだあなたが、毎日の料理を楽にそして楽しく自分のものにしていく力が備わりますように。そして長年やっているくせに、いまだに毎日の料理に迷い悩み続ける私が一緒に成長できますように。

料理に関する小さなコラムを「やりたくなるカテイカ」というマガジンに次々放り込んでおきますので、よかったら読んでくださいね。コメントももらえたらうれしいです。


読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。