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にんじんしりしり器は、なぜ人にすすめたくなる道具なのか

にんじんしりしり、という沖縄の郷土料理があります。千切りのにんじんを卵などと一緒に油炒めした料理です。このにんじんしりしりを作るときに使う千切り器が、しりしり器です。

しりしり器は要するにスライサーなのですが、その最も大きな特徴は「よく切れない」ということです。しりしり器でおろしたにんじんは、よく切れるスライサーと比べると、切り口がギザギザしていて形も不ぞろいです。でもそのおかげで油や味のしみこみがよく、おいしくできるというわけです。

私は数年前にこのにんじんしりしり器を買って以来、愛用しています。にんじんを2本おろすと、小さなボウルに山盛りのにんじん千切りができます。そのにんじんを少し多めのサラダ油でよく炒めます。塩は不要です。ひたすらにんじんだけを炒めていると、生っぽかったにんじんの香りが甘く変化します。そうしたら火からおろして大きめのお皿に広げてさまします。この「シンプルにんじんしりしり」は、スープにも炒め物にもサンドイッチにもオムレツにも使えて本当に便利な常備菜。といってもそれほど持ちがいいわけではなく、しまうときには保存容器に梅干しを半分に割ったものを防腐剤代わりに入れておきます。
にんじんサラダのにんじんは生で作るときもこのしりしり器ですが、炒めたにんじんで作るのもおいしいものです。

このしりしり器、なぜか人に勧めたくなる道具なんですよね。1500円という、鍋や包丁ほどの値段ではないこともあります。このしりしり器の仕上がりが手作業でできないものだというせいもあります。(私が持っているものに限っては)木の枠のレトロで味のあるデザインだからかもしれません。
でも、やはり薦めたくなる一番の原因は「しりしり器」という、口にするとどことなく快感のあるネーミングではないでしょうか。

沖縄では千切りのことをしりしりというらしいのですが、それはこのしりしり器で野菜をおろすと、しりしり、しりしり、と音がするせいだという話もあります。いずれにしても耳障りがよく、つい口に出して言いたくなるんですよね。私が何かにつけ、にんじんしりしり器っていう道具があってね、と人にしりしり器をすすめているのは、そんな他愛ない理由からなのです。

しりしり器を使ってにんじんをおろしていると、人が愛するものって、機能や性能だけじゃないよなーと思います。しりしり。

【にんじんのシンプルしりしり】
材料(作りやすい量):にんじん中2本、サラダオイル大さじ1~2

1 にんじんを千切りにする。(皮はむいてもむかなくてもよい)
2 フライパンに大さじ1の油を熱し、にんじんを炒める。油を吸うので、途中で油が足りなくなるようなら少し足しながら、ゆっくり炒める。
3 にんじんから甘い香りがしてきたら、火を止める。そのまま肉や魚料理のつけ合わせにしてもよいし、さまざまな料理に使えます。


読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。