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塩と自信

料理の本の打ち合わせのときに「どうして女性の料理は塩味が薄いんだろう」という話題になったことがある。

もちろん女性で濃い味つけの人もいる。でも、たしかに女性は男性に比べて塩分少なめを好む傾向にある。女性は家庭での料理担当で、家族の栄養管理をすることも多いからというのも一つの理由だろう。

もうひとつ、女性は男性に比べて自己決定を下したがらない性質があるからじゃないかという話をした。社会的なものか生物的なものか、裏付けもないきわめて感覚的な話で、あくまで個人的な感想としてだけれど。そういう私も塩が甘い。

料理は切る大きさや形、火加減、煮る時間、味付けと、自己決定の連続だ。自分の決定をよしと思える人でないと、迷いが出て失敗しやすい。しかし一方、成功しないと自信はつかない。自信をつけるか、料理を成功させるか。それはニワトリと卵の関係で、考え出すときりがない。

実際、レストランのシェフになるつもりでもなければ、料理における作業そのものはじつに簡単なものなのだけれど、その自己決定の瞬間だけは、一歩前に踏み出す必要がある。
どんなシンプルな一皿の料理にも、責任と自分の「これでいい」が知らず知らずに乗ってしまうものだ。女性に限らず、責任回避したい傾向のある人は、料理をその作業以上に難しく感じると思う。

とくに塩は過ぎると台無しになるから、使う人には決断が迫られる。そこを突破してしっかり塩を効かせられるかどうか。いや、塩の量というよりは、この自信にこそ味の説得力が出るんだなと思う。決して塩のススメではない。逆に無塩でも「これが私の味よ」と言い切れば、それはそれで成り立つものだ。

そんなことを考えながら、今日もスープを作っています。塩分の摂りすぎにはくれぐれもご注意を。


読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。