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胡椒の効かせどころ

もっとも私たちになじみの深いスパイス、それはいうまでもなく胡椒です。フレンチの煮込みからインスタントラーメンまで、料理のときの利用範囲の幅広さでは他のスパイスの追随を許しません。

その胡椒、私たちはよく、「塩胡椒」とセットのように使うことがあります。ふたつが一緒になった「塩こしょう」なる商品もあり、使っている方も多いのではないでしょうか。何か炒めて、最後に片手でパッパと振るときにはとても便利なものです。とはいえ塩と胡椒はそもそも使いどころが違います。

胡椒は下ごしらえの肉や魚の臭み消しに使うような目的では、料理の序盤で使います。たとえばポトフを作るとき、かたまりの肉に塩と胡椒をすり込んだりするような場合です。胡椒の辛みはわりと熱に強いので、加えてから煮込んでも大丈夫です。一方で、胡椒のあのさわやかな香りを利用したいときはなるべく料理の最後に使います。ラーメン屋では、テーブルに運ばれてきてから胡椒をふりかけますよね。香りは加熱と時間で飛んでしまいやすいのでなるべく最後の方で加えるのが得策です。

それに、胡椒を使わないほうがいいケースも案外あるなと、スープを作っていて気がつきました。とろみをつけたかぶのスープの仕上げに胡椒を何の気なしに振って、せっかくやさしい味に仕上がっていたのをだいなしにしてしまったことがあります。
胡椒は臭み消しの効果が抜群なので肉や魚ととても相性がよいのですが、強い香りや辛みがあるため、使いようによっては料理の繊細な味を壊してしまうのです。むしろ胡椒をかけないほうがその野菜の味がより感じられるんだなと、そのとき思いました。野菜だけで作るミネストローネなんかも胡椒は使わないか、使っても少量がいいようなので、味にアクセントをつけたいときはオリーブオイルを振るようにしています。

もちろん、胡椒をしっかり効かせると抜群においしくなるスープもたくさんあります。あめ色に炒めたたまねぎで作るオニオンスープなどは、あらびき胡椒をがつっと効かせますし、鶏ごぼうの和風スープなんかに振ってみたら胡椒の香りがごぼうの香りと重なり合っておいしいです。

塩と胡椒をセット感覚で使っていると、何も考えなくても手が動いて同じような感覚で味をつけられてしまうし、ある程度味に奥行きも出てそれなりの味になります。楽といえば楽なのかもしれません。でも、どこで塩を、そしてどこで胡椒を使うかを考えただけで、私のスープは大きく変わりました。同時に野菜それぞれの味が出て、ひとつひとつのスープが個性豊かに感じられるようになったのです。

そうそう、胡椒って案外甘い味にも合うんです。ホットチョコレートやいちごのスープに胡椒を振ってみてください。とても大人っぽい味になります。

【胡椒を効かせたいちごのスープ】
材料:(約2人前・作りやすい量)いちご1パック 砂糖大さじ3 片栗粉 小さじ2 あらびき胡椒 少々

1いちごは洗ってからヘタをとって半割にし、鍋に入れ砂糖をふりかけて15分ほど置く。
2鍋をまずは中火、温まりかけたら弱火にして、ゆっくり加熱する。砂糖が煮溶けて沸騰してきたら、水300mLを加えてあたためる。
3味をみて砂糖で調節する。片栗粉を水で溶いてとろみをつける。器に盛り、仕上げに胡椒を一振りする。

読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。