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スロー・クックでいこう

スープ作家の有賀薫です。
2020年の私のテーマは「スロー・クック」です。

現代人の一番の課題は、時間ではないでしょうか。
寸暇を惜しむ忙しい人たちの時短料理、手抜き料理全盛の時代に、なぜスロー?と感じるかもしれません。もっと短い時間で、もっと手早く、もっと簡単に。それこそが時間を大切にすることだという人も多いでしょう。でも、もうみんなの合理化はギリギリまで進んでいるのではないでしょうか?

スロー・クックといっても、長い時間かけて料理しようというのではありません。短くてもいいから、ゆっくりと、時間を大切にしながら料理しませんか、という話です。なぜなら、それこそが時間の問題を解決する鍵だからです。

足りないのは、時間の「長さ」ではありません「厚み」なのです。

焦りつつ、手を抜いて品数を揃えるぐらいなら、1品をのんびり作った方がはるかに楽しく豊かです。スロー・クックがめざすのは、そういうことです。むやみに時間をかける丁寧さではなく、時間に奥行きやふくらみを持たせたいのです。

レシピを作るとき、簡単でも、なるべく調理の面白さを残すような工夫をしています。食材の新しい組み合わせ、調味料の使い方や切り方で感じる変化、見た目の面白さ。それは心落ちつけてゆっくり作れば、きっともっと味わえます。

もう少し視野を広げて時間を考えてみたらどうなるでしょう。ポトフは時間こそかかりますが、無駄な手間がなく、時間とおいしさがちゃんと比例する料理です。鍋は「作る・煮る・盛り付ける」という調理過程を食卓に合体させることで、食卓のコミュニケーションを深めています。ホットクックやスープジャーは、道具に火の番をまかせて別の作業に集中する時間を生み出します。どれも時間に厚みが出る料理法だと思います。私が去年作ったミングルも、実は料理時間の意識を変化させる目的がありました。

がんばらないけど、ちゃんとやる。焦らずゆっくり、まっすぐおいしさに近づく。何よりも時間を必要としている現代人の、これからのライフスタイルになりえます。そういう時間のことを意識しながら、スロー・クックがどんなものか、ひとつずつしっかりと発信していく2020年にしていきたい。そんな気持ちで今年の初noteを書きました。

今年もよろしくお願いします。家庭料理の新しい流れを一緒に作っていきましょう。


読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。