見出し画像

たとえ50個の鍋があっても

いま、50個ぐらい鍋があると思うんですよ。うちに。
コレクター癖はたぶんそんなにないほうです。それまでは数個の鍋で十分にやっていました。でも、スープ作家としてレシピを作るようになったら、おすすめの鍋についてものすごく聞かれるんです。使ってないでいい加減なことも言いにくいなと思って、あれこれ試すようになりました。

「どんな鍋がいいですか?」これは本当に答えにくい質問です。たとえば私が一番好きな鍋は、ル・クルーゼのココット・ロンド。撮影にもよく使うので、20センチのものだけでも3つ持っています。ル・クルーゼは素材のジャンルとしては「鋳鉄にほうろうびきした鍋」なので、ストウブやバーミキュラなんかと同じグループなんですね。なので、ちょっと詳しい人には「ストウブとどっちがいいんですか?」と突っ込まれたりします。

いろいろ調べたり、使ってみての実感として、機能的なことだけ見ると、ストウブやバーミキュラのほうが、密閉性や蒸気の回収率が高く性能がいいみたいです。ストウブはデザインもスタイリッシュですよね。
でも私はなぜか、ル・クルーゼが好きなのです。あの鍋底から立ち上がりのカーブに私の使うへらが沿う感じや丸っこい素朴な持ち手、心の明るくなるカラフルさ、そういうすべてが自分にしっくりくるんです。そういうのって、人との相性みたいなもので、スペックのいい人だから好きになるわけじゃない。
好きだけど、誰にでもル・クルーゼをお勧めするかというと、そうでもないです。腕の細い女性には重すぎますし、洗うところまで考えた日常の鍋としてはやはりステンレスやアルミなど、軽めのゆきひらみたいな鍋がとりまわしやすいのです。それにほうろうは火にかけっぱなしたりするとすぐ割れてダメになる。もちろん落とすのもなし。案外デリケートです。

鍋の選び方で一番感じるのは、大は小を兼ねないということ。料理の内容や量、具の大きさに合わせてかなり細かくサイズを選ぶと、気持ちよく料理できます。
ル・クルーゼ、ストウブ、バーミキュラ。フィスラーにビタクラフト、T-fal、無水鍋。ホットクックやシャトルシェフ、大同電鍋、レコルトに、メスティンも。ベストな鍋を探そうとどんどん鍋を買っていったら棚からあふれてしまいました。災害時にはこの鍋たちを総動員すれば、数十リットルは水を溜めておけます。

でも結局、肝心の鍋については、50個比べてもベスト鍋がみつかるわけでもなく、作るシーンや料理を無視しては選べないということがわかっただけでした。鍋も一長一短、絶対これ!という鍋はないということです。

初心者の方なら、まずはみそ汁や少量のスープを作るための小鍋、次に深型のテフロンのフライパン、そしてやや大きめの厚手の煮込み鍋。この3つを起点に必要な鍋を増やしていくとよさそうです。あと、鍋を買おうと思っている人は、絶対に売り場で実物を見てから買いましょう。道具は体との相性です。

500gの塊肉でポトフを作るときは、20センチのル・クルーゼが出番です。ぐつぐつ。

【塩豚ポトフ】
材料(作りやすい量):豚肩ロースかたまり肉500g 塩大さじ1、胡椒小さじ1/2、ネギの青いところ・にんにくなど 適宜 じゃがいも3個


豚のかたまり肉に塩と胡椒をすりこんでペーパーに包み、ビニール袋などに入れて1~2日置く。

ペーパーから肉をとりだし、水でさっと塩を洗い流して20cm径の鍋に入れる。肉の肩がかぶるぐらい、水1000mL程度を加えて中火にかけ、アクが大きく出てきたらすくって香味野菜をあれば何か加え、弱火にして30分ほどコトコト煮込む。

皮をむいたじゃがいもを加えて(じゃがいもが大きいときは1/2に)、そのまま柔らかくなるまで煮込む。串がスッと通ったら味をみて、塩でととのえる。



読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。