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にぼしとわたし

どんなにおいしくても、手間がかかったり、その家の経済状況に合わなかったりするようなら、その食材や調味料は長続きしません。家の定番になって毎日出番のある食材というのは、何かしらその人にとって「おいしい」だけではなく「無理がない」ものだと思うのです。

私にとっての「にぼし」はまさに、そういう存在です。毎日の味噌汁のだし、どうする?となったとき、もちろんかつおやこんぶやしいたけ、顆粒だしやだしパックも使います。でも、いちばん出番が多いのはにぼしなんです。手間と味の両方をかけ合わせて答えを出したとき、顆粒だしやだしパックのような便利なものと比べてもにぼしのパフォーマンスが勝つと、自分が心のどこかで判断しているからでしょう。

にぼしは文字通り小魚をゆでてから乾燥させたもので、じゃこ、いりこなんて呼び方もしますよね。にぼし用の魚は何種類かあるうち、イワシ(カタクチイワシ)が一般的。大きさがいろいろあって売り場で迷うところですが使う本数を増減すればいいだけです。まあ、6~7センチぐらいの大きさのが便利かな。

にぼしを買ってくると小さなジップロックコンテナにひとつかみ入れ、残りは袋の口をしっかり縛って冷凍庫に入れてしまいます。にぼしは酸化が早いので冷凍保存です。ひとつかみぐらいならすぐ使い切れますし、手の届きやすい棚に常温保存しているというわけです。

レシピ本やネットには頭やはらわたを取る、とありますが、私の母はそのままポーンと鍋に入れて水を加えて煮出していました。これでもいいのです。
食べてみて雑味が気になるなら頭とお腹をとって、ついでに半分に割くとだしが出やすくなります。私はそうしています。二人分の味噌汁に6~7尾も入れればいいので、ほんとにあっという間です。

中火よりちょっと弱いぐらいで水から煮出し、沸騰後5分くらい。あらかじめ30分ぐらい浸けておくと、よりうまみが出ます。これも絶対!と思わなくて大丈夫です。
にぼしのよいところは取り出さずにそのまま具としても食べられることで、だしがら問題もありません。入れっぱなしだから煮出す時間もアバウト。私は沸騰したらすぐ具材を入れて煮はじめてしまうこともあります。具材がじわじわ煮えるうちに、だしも追いかけるように出てきます。

このお気楽さがにぼしを料理に取り入れる最大の魅力。にぼしのだしには強い味わいと香りがあり、とくに味噌との相性は抜群です。
にぼしだしは単品野菜の煮物にも向いています。ごぼうとにぼし、かぼちゃとにぼし、切り干し大根とにぼし。韓国風の具だくさんスープにもにぼしを使うと奥行きが出ます。これらも入れっぱなしで大丈夫です。

味噌汁からぴょっこりにぼしが出てきたら、当たり!と喜ぶのも忘れずに。

【にぼしだしによく合う、大根と油揚げの味噌汁】
材料(2人分):にぼし5~7尾 大根4cm 油揚げ1/2枚 味噌大さじ2 水450mL 

1鍋に水とにぼしを入れ、中弱火にかける。大根は細切り、油揚げも細めに切る。
2鍋が煮立って5分ほどしたら、大根を加えて煮る。大根がやわらかくなったら油揚げを加え、味噌を溶き入れて再度あたためる。


読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。