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うちの味噌汁

スープ作家として毎朝のスープを作り始める前からずっと、私は味噌汁を作り続けてきました。結婚してから約30年ぐらい、夕飯にはほとんど毎日。ハンバーグや麻婆豆腐みたいな洋風や中華のおかずでもスープより味噌汁のほうが多かったのです。

朝のスープこそ手をかえ品をかえ毎日バラエティに富んだものを作っている私ですが、夜ごはんの味噌汁はもっとずっといい加減です。定番は豆腐とねぎ、わかめと油揚げ、ほうれんそうと油揚げ、なすとたまねぎ。おなじ具材のくりかえしで、豆腐やねぎの切り方が変わったり、夏はみょうがが入ったり、たまに豆腐が厚揚げになったりするものの、翌日には定番に戻ります。

家の食事を作るときのだしは、まじめな日はいりこか昆布。どちらも水から煮出せばだしがすぐ出てそのまま食べられるのでよく使います。今使っているいりこは、香川のやまくに、というところのもの。
でも、だしパックもよく利用するし、もっと急ぐときは顆粒だしに頼ることもあります。兼業主婦が味噌汁にどれぐらい手間をかけるかは、昼間の仕事を終えて力がどれぐらい残っているかにもよるのです。

味噌は長年、実家で使っていたのと同じ仙台みそを使っていましたが、近所で買いにくくなってしまい生協の味噌に変えました。ごく普通の赤味噌です。目分量で入れるので同じ銘柄であることが大事なのです。専用の容器に入れ替えもせずプラスチックのパックのままおたまを直接突っ込んで使っています。味噌濾しも使わないので、うちの味噌汁の最後はざらっとしています。私はそれが好きなのです。

そんな風に長年味噌汁を作ってきましたが、仕事としてスープを作り始めてからここ最近、仕事で作ったスープが夕飯によく出るようになりました。私としては目が回るほど忙しい中で味噌汁を作らなくてすむこともあり、和食のときもスープを出すようになったのです。せっかく作ったスープがもったいないですしね。

ところがつい最近、ごはんの話をしていたら、夫が「僕はすっきりした味噌汁が好きだな」みたいなことをふと言ったのです。うちの夫は食事のことで絶対に文句を言わない人で、どんな料理でも黙って全部食べます。そのときも文句をつけられた感じは全然しなかったのですが、はっとしました。いつのまにか家のごはんを仕事の料理が侵食していたなと思ったからです。

仕事で作るスープの場合、野菜も本来の旬より先取りだったり、この食材を使ってください、みたいな注文も入ります。肉や魚入りのこってりとヘビーなものも多いです。もちろんおいしく作ってあるので悪くはないのですが、他のおかずとちょっと合わないなと感じることもありました。

夫の何気ないひとことで、いつの間にかうちの定番だった味噌汁がいつもの場所になかったことに気づきました。なにより仕事のスープが家ごはんに入ってくると仕事モードも抜けません。定番の味噌汁は私にとっても必要なものだったのです。

その日はいりこでだしをとって、豆腐とねぎの味噌汁を作りました。体が覚えたいつもの手順で味噌汁を作る、そのこと自体も、気持ちをリセットしてくれるのです。

定番は大事だなって話でした。

【定番豆腐の味噌汁】
材料:だし500mL(いりこ5~6尾)豆腐1/2丁 ねぎ6~7cm 味噌大さじ2

1いりこの頭と内臓をとって割いたものを鍋に入れて水を加え、中弱火で10分ぐらい煮る。豆腐をさいの目に切る。ねぎは斜め薄切り。
2豆腐を鍋に入れてあたため、味噌を溶き入れる。
3最後にねぎを入れて火を止め、余熱でねぎに火を通す。

読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。