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だしパック大研究! 2015.6.8スープラボ・レポート

有賀 薫

6月のスープ・ラボは、東京・日本橋から始まります。
そう、今、日本橋はだしの老舗や販売店が集中。熱いだし合戦が繰り広げられている和だしスポットなのです。

かつおぶしのにんべん。

昆布の奥井海生堂。

だしのニューウェーブ、茅乃舎。これらの専門店はコレド室町に出店中です。このほかにも食材の富沢商店や干物店にもだしパック発見!

もちろん昔からの乾物類の老舗も堂々と。こちら八木長本店。

そして何といっても、日本橋には三越と高島屋という、デパ地下食品売場の二大巨頭がそびえたっています。顧客年齢層の高いデパートですから、和の食材はかなり充実。だしパックも数えきれないほど置いてあります。

そんな日本橋に出かけて買い集めただしパックが、こちら!

もちろん、すべてではありません。手持ちの資金が尽きました(笑)
今回のスープラボは、この中から15種類の味比べを延々するという、ラボ始まって以来の過酷なプログラムです。

いきなり端から試してもわかりにくいので、だしパック選びのポイントに沿って味見してもらうことにします。さあ、味比べスタート!

1.「塩分」と「調味料」は、だしパック大別のポイント

だしパックの原材料になるメインの素材は、昆布、鰹や鯖やあごなど魚のふし、椎茸、野菜。こういったものの粉末やチップです。削り節などを製造するときに出る粉を使うようなこともあります。
こうした素材のみで作られる無添加のものが、だしパックのひとつのタイプ。
そして、素材にプラス、塩をはじめとする調味料が使われているものがもうひとつのタイプ。
だしパックの味においてはこの差が一番大きいのです。その違いを味わってもらうために最初に比べていただいたのが、こちらのふたつ。

右:あご入り兵四郎だし(味の兵四郎) 30パック1800円(@60円)
左:おだしのパック・黄のじん(うね乃) 18パック1100円(@61円)

どちらも日本橋三越で購入したもの。他のデパートでも割と見かけるポピュラーなだしパックです。1パック当たりの価格もほぼ同じです。でもパックを開けてみると…

こちらが「兵四郎だし」。

こっちは「黄のじん」。

かなり違いますね。兵四郎だしには、塩、砂糖、そしてうまみ調味料が入っています。
味見をしてみるとその差は歴然。塩分や、人工的な調味料が入っているものは、強いうまみを舌に感じます。「兵四郎のだし」は、このまま三つ葉やねぎを散らしてお吸い物にしてもいいぐらいの塩味とうまみがあります。
一方、何も入っていない「黄のじん」は、このままだと物足りない。でも、用意した塩をパラリと振って飲みなおすとぐんとうまみが増します。塩味は、うまみを膨らませることができるからです。

「どちらがうまみが強いか」というと、実は塩やうまみ調味料が入っている兵四郎なんです。わかりやすい美味しさというのでしょうか。「兵四郎のだし」は人気のだしなのですが、そのことがよくわかる味わいです。
ただ、「黄のじん」の無塩のだしが美味しくないわけではありません。むしろ昆布・鰹だし本来の味に近いのはこちらです。だしパックはそれだけで完結ではなく、味噌汁やお吸い物、煮物にするときに調味料を加えることをお忘れなく。

右:だしまかせ・鰹昆布節(山政) 14パック550円(@39.2円)
左:和風だし(高島屋) 5パック380円(@76円)

「だしまかせ」は塩分もうまみもしっかり強め。調味料が入っているタイプです。一方高島屋のPVである「和風だし」は魚っぽいけれどうまみは淡めで、素材のみのタイプ。
パックの中身をお皿に開けて触ってみると、顆粒だしのような「だしまかせ」に対し、高島屋「和風だし」は鰹や煮干しなど魚の粉っぽさがあります。

旨味を加えてあるだしパックと、そうでないだしパック。味比べしてみればすぐわかるのですが、パッケージを見ただけで選ぶのは実は案外難しいのです。
「だしまかせ」の原材料名に「たんぱく加水分解物」と表記されています。これは動植物由来の原料を加工して作った人工的な旨味成分なのですが、なぜか「化学調味料不使用」っていうことができるんです。パッケージの表に大きく「化学調味料不使用」と書かれていると、ナチュラルなものに感じてしまいますよね。(あ、だしまかせには化学調味料不使用とは書いてないですが)

必ず、裏を返して原材料名を確認しましょう。ほかにも旨味となる「酵母エキス」だしを出やすくする「でんぷん分解物」などがあり、これらはどれも自然由来で化学調味料ではないものの、鰹節や昆布、椎茸そのものとはやっぱりすこーし違う気がします。

ちなみに化学調味料は現在は「うまみ調味料(アミノ酸等)」というような表記になっています。昔と違って自然由来のもの(さとうきびとか)が原料になっていることが理由のひとつです。ただ、うまみ調味料が入っている場合は、「化学調味料不使用」とは表記できないのです。

こんな話をしましたが、スープラボの目的は化学調味料や人工的な成分を糾弾することではありません。「人工的=安全ではない」「人工的=美味しくない」ということも軽々しく言いたくないと思っています。安全や美味しさはとても主観的なものだからです。
私自身に化学的な知識が薄く、どこからが自然なのかという線引きできないのでまた別の機会に話を送りたいのですが、ここでは、そうした成分が入っているものはうまみが強力!ということをはっきり感じられるような組み合わせで味見をしてみました。

案外真面目に聞いている研究員たち。

袋からだして中身も味見!

調味料でしっかり味をつけてあるものは、そのままでもふりかけみたいで美味しいです。

2.昆布、鰹、あご、好みの素材をみつけよう!

素材と塩とうまみ調味料。基本的なだしパックの構成がわかったら、2セット目はは素材の中身で味比べです。昆布だし、あごだし、鰹だし、椎茸入りのだし、煮干しだしの5種類で、魚の違いでのだしの味を比べます。

上右:海生堂のだしパック(奥井海生堂) 8パック658円(@82.2円)
下右:旨味自慢万能便利(まるてん)12パック1000円(@83.3円)
上左:あごだしパック(松井商店) 5パック900円(@180円)
下中:珠味(千代の一番) 10パック600円(@60円)
下左:煮干しだし(茅乃舎) 5パック386円(@77.2円)

まず、上右の「海生堂だしパック」と下右のまるてんの「旨味自慢万能便利」は、どちらも昆布・鰹だしです。ただし、奥井海生堂は福井県に昆布蔵を構える昆布の老舗。一方まるてんは鰹節製造の会社。伊勢の波切節は奈良時代に朝廷に献上されていたという一説もある鰹節です。だから同じ昆布かつおだしでも、昆布の風味が前に出ているか、それとも鰹が出るか、両社の個性がはっきり表れます。奥井海生堂のだしには昆布らしさのある濃いだしがとれる羅臼昆布が使われており、まるてんのだしには、普通の鰹節より高級な枯節が使われています。

あご、椎茸、煮干しだしの3社は、それぞれの素材の個性がはっきり出ます。
松井商店「あごだしパック」は、あご(飛び魚)の骨を焼いて粉砕したもの。今回の味比べでもっとも高額のだしパックですが、あごだしは総じて値段がお高め。魚の臭みが少なくうまみが強いので、具の味を生かしたいお吸い物や料理に向きますが、鰹節や鯖節ほどのパンチではありません。松井商店のものは無添加です。
「珠味」は椎茸は淡く感じる程度で昆布や鰹がバランスよくミックスされたものでした。無添加。
「煮干しだし」は茅乃舎の製品で、調味されていて飲みやすいタイプ。

結構、好みが分かれるものです!

このほか鯖や宗田鰹や鰯など、さまざまな素材を合わせたミックスだしもあります。量とのバランスもあると思いますが、より味の強い魚の個性がまず先に感じられ、昆布や椎茸などは後味としてほんのり感じます。組み合わせのバランスがよいと、より複雑で奥行きのある味となりますし、バランスが悪いと雑味と感じられます。

実はお値段的には非常にこなれているものが多く、私たちがふだん使うだしパックはこのミックスタイプが多いかもしれません。今回の味見には入れていませんでしたがふたつ紹介しておきます。

右:うまかだし混合(中嶋屋本店) 10パック500円(@50円)
左:だしパック(八木長本店) 20パック(@27.5円)

「うまかだし」は鯖節、いわし節、鰹節、昆布のミックス。無添加。
八木長本店の「だしミニパック」は鯖、むろ鯵、鰹、鰯の節と椎茸のミックス。酵母エキスが入っています。

3.にんべん・茅乃舎だしパック対決!

さて、素材の違いも感じていただくことができました。
最後の3セットめは、今日本橋で小さなだしブームを起こしている2大だしメーカーのだしを徹底比較したいと思います。

右上:茅乃舎だし(茅乃舎) 5パック386円(@77.2円)
右下:茅乃舎極みだし(茅乃舎) 5パック648円(@129.6円)
左上:薫る味だし(にんべん) 6パック540円(@90円)
左下:だしぱっく鰹・昆布(にんべん) 6パック648円(@108円)
写真下右:だしぱっく混合(にんべん)10パック432円(@43.2円)
写真下左:野菜だし(茅乃舎) 5パック386円(@77.2円)

茅乃舎、にんべんからタイプ違いのそれぞれ3点です。

茅乃舎は、福岡の食品メーカー・久原本家の経営する自然食レストランから生まれたブランド名。やさしい味わいのだしは大人気で、通販はもとより、日本橋、六本木ミッドタウン、高島屋など都内の直営店でも売れに売れています。

一方、にんべんのだしパック3つ。「薫る味だし」には塩、砂糖、しょうゆを使用、あとの2つは無塩。そして3つとも素材である昆布、鰹、鯖や椎茸などの食品以外に、旨味を加える調味料は一切入っていません。

さて、両者のだしパック比べ。茅乃舎のだしは基本的に「味つき」です。塩分も、そして酵母エキスやでんぷん分解物など、旨味を加える成分が入っています。茅乃舎のだしパックには「化学調味料・保存料無添加」とあって、その表記に嘘はないのですが、旨味をそういう形で加えているという点はここで明記しておかないとちょっと不公平かもしれません。

茅乃舎のだしは、基本的にどれも安定的。バランスの良い「茅乃舎のだし」に比べ、「極みだし」は、枯節を原材料に使っているという、すっきりした味わいです。塩も薄く感じます。
また、変わり種の「野菜だし」は、たまねぎの香りがほんのり。野菜だけとは思えないほどうまみも強く、洋風の料理にも重宝しそうなだしです。

一方、にんべんは3種が全く違うタイプ。「薫る味だし」は、店頭でそのまま飲んで美味しいだしと説明を受けた通り、お吸い物として成立しているようなだし。うまみが結構強いので、人工的な味を加えているのかと思い、実はラボの後でにんべんに問い合わせてみたところ、熱をかけない製法でうまみや香りを残したそうです。
「だしぱっく 昆布・鰹」は、開けてみると鰹節や昆布の形がしっかり残った、素材そのものという感じのパックです。この商品は普通に昆布と鰹節を使ってとるだしに匹敵する味に感じました。
「だしぱっく 混合」は、バランスがよく、値段的にもこなれた使いやすいだしです。

両雄対決!と言ったものの、あまりにタイプが違うので比較するというよりは、シーンや好みで使い分けるといいね、みたいな話に落ち着きました。

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そうそう、今回自作しただしパックについてもちょっとだけ触れておきます。

昆布、鰹節、椎茸をだしパックに入れて。

枕崎の本枯節、道南真昆布、そして対馬の原木椎茸。小さくして袋詰め。

こんなになりました。だしをとってみましたが、昆布やしいたけの味がうまく出てなかった。粉砕の大きさなど、研究の余地ありです。

さて、こんな感じで怒涛のだしのトライアスロンもようやく終了。ここからはだしパックを使ったスープ・タイムです。

今日のスープは“だしバイキング”です。
薄い塩味をつけたおだしにお好みの具を入れて食べてください。だしはたっぷりありますので、お好きなだけどうぞ。実際、いろいろなだしパックで試してみました。

具は、焼き鳥、アスパラ、焼おあげ、焼トマト、焼しいたけ、たまごやき、そして素麺。山椒の実や針しょうが、クレソンやおかきをトッピングに用意しています。

研究員のみなさま思い思いの具を入れて!

さて、今月のラボもようやくお開き。とてもとても長いレポートでしたが、いかがでしたか。だしパック選びのお手伝いになれば、幸いです。

写真協力:サトウトモヱさん

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有賀 薫

読んでくださってありがとうございました。日本をスープの国にする野望を持っています。サポートがたまったらあたらしい鍋を買ってレポートしますね。

有賀 薫
スープ作家。日本をスープの国にする野望。新しい食卓の定番をめざすスープ本『ライフ・スープ』(プレジデント社)が9月末発売です。