見出し画像

私の読書●小説家志望の読書日記⑭ 中村文則『何もかも憂鬱な夜に』

 再読。
 タイトルとは裏腹に、この小説には救いがある。いろいろな要素が含まれているが、私が一番感じるのは、次の言葉。
 自殺を試みた子供の頃の主人公(孤児)に、施設長が言う言葉。

 ・・・・・・・・・・

 お前は、何も分からん。

 ベートーヴェンも、バッハも知らない。シェークスピアを読んだこともなければ、カフカや安部公房の天才も知らない。ビル・エヴァンスのピアノも。

 黒澤明の映画も、フェリーニも観たことがない。京都の寺院も、ゴッホもピカソだってまだだろう。

 お前は、まだ何も知らない。この世界に、どれだけ素晴らしいものがあるのかを。俺が言うものは、全部見ろ。

・・・・・・・・・・・

 「素晴らしいもの」を、味わい、《分かち合えれば》、それは幸福なことである。



Webライター 兼 添削人。あなたのサポートはnoteを運営するうえで有効に活用させていただきます。