|20からつづく|
ナポレオン戦争を背景にロシアそのものを描き出したというべき歴史小説、トルストイの『戦争と平和』。ああいうのが「三人称神視点」といわれるものなのかなぁ、と確言できませんが思っています(総登場人物559人!)。
アンドレイ、ピョートル、ニコライ、マリア、ナターシャというように主要登場人物がいるとはいえ、「多視点」という感じもしませんね。
あいにく本を手放してしまって今ページを繰って叙述方法を確認することができません。
吉村昭さんの歴史小説はまた独特のもので、小説と定義できるかもよくわかりません。「記録小説」というようにもいわれているようです。
というので、今手元にある中村文則さんのかなり特殊な小説「三つのボール」を、少し長くなりますが引用してみます。
この小説には人間(擬人化された動物やモノも含む)が登場しません。
短編小説ですが、ずっとこの調子で進みます。
ほんの少し、「見える」「見えない」「わからない」等、主体(視点)のようなものが現れていますが、注意しないとわからないくらいです。
こういう「視点」の小説もあるんだと面白く思いました。
(ちなみにこの小説、最後の方に思わず「あ」と言いたくなる展開があります。)
|22|につづく