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老いて食べたいデザートは和菓子ですか、洋菓子ですか?(小原信治)

ところてんは和菓子じゃないという先入観


 放送でも話していたが、海辺の町で暮らすのに欠かせない道具のひとつに、「天突き」がある。木の部分に「心太」と書いてある奴だ。心太と書いて「ところてん」と読むことを僕はこの町で暮らすようになって初めて知った。
 春のワカメが終わり、梅雨が明けた頃からこの町では鮮魚店はもちろん、精肉店の軒先や農家の直売所にも「天草」という紅い海藻を干して黄色くなったものが並ぶ。近所の方に頂いたりもする。
 冷たい水でよく洗って、貝の欠片やゴミを落とし、水と少量の酢を沸かしたもので40分ほど煮溶かしていく。とろみのついた液を布で濾して型に入れ、常温まで冷ましたところで冷蔵庫で凝固させると、不透明な板状のところてんのできあがりだ。
 完成までに2時間と多少の手間は掛かるけれど、市販のものとは比べものにならないくらいの風味がある。そもそも市販のところてんは、天草ではなく粉寒天を煮溶かしたものだったり、輸入品の天草で作っていたりするものがほとんど。国産の天草で作ったところてんというだけで貴重なんだそうだ。
 という寒天談義が今回の藤村くんからのお題のベースになっているのだろう。が、問題は「ところてん」は和菓子なのかという議論だ。菓子とつくとどうしても甘いものをイメージしてしまう。じゃあ煎餅は和菓子じゃないのかと言われれば、いや、菓子だよね、と目が覚める。
 僕らは砂糖に毒され過ぎているのだろう。それは、子どもの頃から砂糖のたっぷり入った甘い菓子で育ってしまったせいでもある。

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