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老いて最後の人類のひとりになったとしたら、誰に向けて何を語りますか?(小原信治)

世界の終わりが見たかった

 世界の終わりを夢想している子どもだった。爆音とともに校庭の半分を米軍機の黒い影が覆い隠す。米ソが水爆の発射ボタンに指を置いて睨み合っていた70年代の話だ。幼いながらに緊迫した空気を肌で感じていたんだとも思う。夢も希望もなかった。大人になったら何になるかなんて考える必要がなかった。世界は自分が大人になる前に終わる。そう思っていたのだから。

 夢想するだけだった世界の終わりを見せてくれたのが映画「猿の惑星」だった。人類の文明が滅亡した後の世界を見事に映像化してくれた。浜辺で朽ち果てた自由の女神像という映画史に残る名シーン。人類の滅亡を描いた作品の公開自体は「博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」の方が四年早かったけれど、個人的には「猿の惑星」を先に観たのでそこから受けた衝撃と影響の方が比べものにならないぐらい大きい。11歳の時に金曜ロードショーで観て以来、百回以上繰り返し観ているこの「猿の惑星」シリーズ五作品が僕の厭世的な人生観を形成したと言っても過言ではない。

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