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老いて不感症になりたくないものは?(藤村公洋)

アートなんかいらない?

心に残っているアート(にまつわる)体験を3つ挙げろと言われたら、、そうだな、ちょっと迷うかも知れない。うーんとね。まいったな。

4つじゃダメですか?

と、自分で勝手に設問しておきながら答えに窮する、というトホホな現象は、なんというかある種“アート的”ともいえるのではあるまいか。などと言ってみる。

いかんいかん。

ケムにまくためにアートを持ち出したりしたらますますアート不感症のかたの反感を買い→不要不急の外出は控えましょう案件へとひとっ飛びではアーリませんか。発言には気をつけてくれたまえ。

コホン。えー、まず初めに立場を明確にしておきますと、僕は今のところアートに対して好意的な目を向けているし、年に数回とはいえ美術館やギャラリーに通うアートの味方という立ち位置でございます。

コロナ禍であるこの2年間にも、こたおさんという現役芸大生画家の展示に2回、坂口恭平展に2回、黒坂麻衣展、酒巻剛好写真展、安西水丸展、彫刻家田島享央己展、谷口ジロー展、横尾忠則展、おかんアート展、んーと、それくらいかな、足を運びましたしね。

とはいえね、今回の作品の中で語り部となるアート不感症の主人公もかつては「アート多感症」という経歴だったことを考えれば僕もうかうかしていられないのですよ。その立場がいつひっくり返るかは分からないでしょ。

そしてそして、アートというものは立場を、概念を、美意識を、ひっくり返すのが主な目的のひとつであることに鑑みれば、ひっくり返った末に不感症となったところでそれは、そこまで含めて、「アートの勝利」と言えなくもない。

言えなくもない。

“言えなくもない”っていい言葉ですよね。

これって英訳できるのかしら。とても日本的な情緒のあるぐずぐずにあいまいな言葉でございましょ?そんなあいまいtension(©︎バービーボーイズ)な態度こそ、侘び寂びと並んで我らが得意とするところでございますよ。

そうだ、脱線ついでに言えば「嫌いじゃない」も好きなのよ。特にね、「好きか嫌いかと言われれば、そうだな、嫌いじゃない」って言い回しする人がね、もうたまらない。YESかNOかって自分で設問してるのにさ、答えがファジーってのが最高にクールじゃないですか。まさにクールジャパン。嫌いじゃない。

アートに触れる理由


8月2日放送『小原信治 渋谷のラジオの惑星』はまもなく公開される『アートなんかいらない!』での映画メシ企画でございました。

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