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映画『名も無き世界のエンドロール』公開によせて

 いよいよ、明日、1月29日に映画『名も無き世界のエンドロール』が公開となります!

 本当は、もうね、みんな観に来てね!来いよ!来ないと腹を刃物でえぐるよ!と言いたいくらいなのですが、昨今の状況、それに伴う緊急事態宣言などもあって、なかなかね、みなさん絶対来てください、と言いにくくなってしまった中での公開となりました。

 撮影は2019年夏で、その時には世の中がこんなことになるとは思いもせず、「一日あれば、世界は変わっちゃうんだよ」という作中のセリフよろしく、日常生活が変わらずに続いていくなんて保証はどこにもないんだな、と、僕も改めて思いました。普通に、なんの心配もない中で皆さんに観てもらえたらよかったのになあ、というのはどうしても考えちゃうんですけれども。

 でも、すべてひっくるめて前向きにとらえるとするならば、本作に込められたテーマ、伝えるべき想いは、今のこの時期だからこそより多くの人に伝わるのではないか、という気もしています。思えば、この映画の原作を執筆していたのは、東日本大震災が起きた真っただ中のことでした。今と同じように、エンタメ業界は危機に瀕していて、社会全体が命の在り方、日常という「当たり前のもの」がいかに脆いものかを痛感していたと思います。

 先日行われた五大都市最速試写会の後、たくさんの方がSNSに感想を投稿してくださいましてですね。もちろんね、すべての人に100%満足してもらえる作品というものを作るのは非常に難しくて、中にはご満足いただけなかった方もいるかもしれない。そもそも、原作も好き嫌い分かれる作品でありましたしね。それでも、多くの方が、愛の、絆の大切さを感じて、コメントを残して下さって、僕はようやく、この物語を書いてよかったなあ、と、自分がここまで生きてきたことの意味のようなものを感じることができて、すごくほっとした気分になりました。

 映画化の企画が立ち上がってからは、原作者という立場を超えて、映画にも、そして付随するdTVドラマにもいろいろ口出しをさせていただいて、正直、うんざりされるんじゃないかな、と思うくらいめちゃくちゃいろいろ指摘をさせてもらったんですけれども、その結果、原作者としても、いちクリエイターとしても納得できる作品に仕上げて頂けたと思っていますし、少なくとも僕は、ほら、僕の小説をこんなにいい映画にして頂いたんですよ、と、胸を張って言える作品になったと思っております。

 監督も、原作に込めた思いを細かいところまで汲んでくださったと思いますし、直接のやり取りはありませんでしたが、岩田剛典さん、新田真剣佑さんをはじめとする俳優の皆さん、スタッフさん、エキストラさん、そのほか協力して頂いた皆さん、ほんとうに真摯に作品と向き合って下さったと思います。お会いしてお礼を申し上げる機会もなかなか作れなかったのですが、この場を借りて、皆様にお礼を申し上げたいと思います。ほんとうに、ありがとうございました。

 本作は、非常事態宣言下での公開となります。映画館自体は換気に優れている場所で、現在のところクラスターの発生事例もないということで、比較的安全に楽しんで頂ける場所だとは思います。ただ、今はあらゆる場所が絶対に安全だとは言い切れないわけで、それでも劇場でご覧ください、と言うことのジレンマを感じながらも、やはり映画館に来て欲しい、一人でも多くの人に観て欲しい、というのが本音でもあります。

 皆さん、どうか、一人の感染者も出さないよう、コロナ対策は万全にして、劇場にお越しください。マスク着用、手洗い・消毒を徹底してください。当日、お食事は一人でさっと済ませるように。映画を観た後に、仲間と飲み屋にでも行って語り合いたい!という方もいらっしゃるかもしれませんが、ぐっとこらえて、オンライン感想戦にしましょう。あれだ、吉野家さんでテイクアウトするとかね。


 本作を通して、一人でも多くの方の心に何か大切なものが残ればいいなと思います。映画『名も無き世界のエンドロール』dTVオリジナルドラマ『Re:名も無き世界のエンドロール~Half a year later~』、原作小説『名も無き世界のエンドロール』、そして続編小説『彩無き世界のノスタルジア』と、映画だけにとどまらない作品世界を、隅々まで楽しんで頂ければと思います。何卒よろしくお願い申し上げます。


小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp