見出し画像

ご質問にお答えします(3)「応募する文学新人賞の選び方」

 モノカキTIPS、今回は質問をいただきました!
 ネタ提供ありがとうございます、、、!

画像1

 行成さま、とは大変恐縮でございます。いいんですよ、おいこのクソ薫、とかでも。いや、それは傷つくわ。嘘ついた。

 なるほど、自分が書いた小説をどの賞に応募すべきか、どうやって選ぶとよいのか?というご質問ですね。ちなみに、僕が応募したのは集英社さんの「小説すばる新人賞」でしたけれども、今回は、当時のことを思い出しつつ、お話してみようかなと思います。

■僕が「小すば新人賞」を選んだ理由

 僕が『名も無き世界のエンドロール(当時は『マチルダ』というタイトルでしたが)』を書いたのは、ほんとにただの趣味のつもりだったんですけども、読んでくれた友人が「応募してみたら?」と勧めてくれたもので、じゃあどっかダメもとで応募してみようかなあ、などと考えたのが、新人賞応募のきっかけでございました。

 ただ、恥ずかしながら、当時は小説というものとはほぼ無縁で、たまに本買ってきて読む、という程度だったもので、まずどんな文学新人賞があるのかもまったくわからない、という状態。なので、読書が趣味の知人に相談したのですよ。もし送るなら、どの新人賞がよいのだろうか?と。

 で、まず、ド基礎中のド基礎、小説のジャンルはなんなのか、と聞かれまして。ジャンル?はて、、、?と、頭にはてなマーク出ましたね。新人賞に、純文学系エンタメ系があるのを知らなかったもので。

 で、僕の作品は「エンタメ系」で、かつ「ミステリ」や「時代物」といった明確なカテゴライズもできないので、エンタメ系なんでもござれなのは、「小説すばる新人賞」か、「野生時代フロンティア文学賞(現在は、「小説野生時代新人賞」に改称)」ではないか、というのが知人の見解でございました。実に的確。

 で、どっちにしようかなあと思ったんですけども、小すば新人賞の応募数はライト系を除く長編エンタメ系新人賞の中ではぶっちぎりでして、僕が送る頃は毎年1300本くらい応募があったんですよ(ちなみに、僕の年は1400本を超え、中村理聖さんが受賞した第27回は最高記録で1600本超え。ここ数年は1300本超くらいで推移)。なので、どうせ応募するなら競争率高い方を目指そう!と思いまして、小説すばる新人賞に送ることが決定したわけです。

■応募するときのポイント

 原稿の送り先を決める時はですね、とにかく自分の作品と賞のカテゴリが合っているか、を確認することに尽きると思います。下読み経験者の方にお話を聞いたところによると、結構カテゴリエラーで落とさざるを得ない作品が、どの賞でもあるらしいんですよ。カテエラ作品になってしまうと、どれだけ内容がよくても土俵にすら上がれんわけなので、まずは賞の傾向をしっかり掴むといいと思います。

 文学賞の傾向とか、受賞作をまとめているサイトもあるので、参考にしてみてはいかがでしょう。

 でも、そういうサイトなんかでは、僕が応募した小すば新人賞の傾向として、「青春ものが受賞率高し」と書かれていることが多いなあ、と思うんですよね。でも、小すばの編集さんは、面白けりゃなんでもいい、とおっしゃっておりましたけど。

 なので、賞の傾向の実情を掴むためには、過去の受賞作を読んでみるのが手っ取り早いと思います。僕も、応募原稿送る前に、結構過去の受賞作読みましたね。受賞時に話題になった朝井リョウさんの『桐島、部活やめるってよ』、受賞作が即ミリオンセラー(すごすぎる)という村山由佳大先生の『天使の卵』、同い年の飛鳥井千砂さんの『はるがいったら』などなど、、、
 その中で、三崎亜記さんの『となり町戦争』に出会いまして。「となり町との戦争のお知らせ」で始まる、世界観が不思議な小説なんですけど、こういった世界観の受賞作があるなら、僕の応募作もきっとカテゴリエラーにはなるまい、と思いました。

 過去の受賞作は読んどいた方がいいと思いますけど、選考の先生方の作風は気にしない方がいいかな。「選考がこの作家さんなら、こういうジャンルがウケるのではないか」とか考えがち(僕も考えて、選考の先生方の本を読みましたがw)だと思うんですけど、別に、自分の作風と読むもんの嗜好は違いますし、選考の先生方もそういうのを取っ払って選考しますから。
 むしろ、ご自分の作品と同ジャンルの小説は、評価基準のハードルが上がったりしてね、、、あんまり、こういうのは狙わんほうがいいですね。

 あと、これは個人の考え方次第ですけども、「受賞作が本になるか」もチェックしておいた方がいいですね。賞によっては、本にしてもらえるかは未定、というところも結構あるんですよね。
 当然、出版&デビューが確約されている賞の方が人気で、全体的なレベルも上がります。でも、そうじゃない賞だと競争率下がりますから、受賞する可能性は高くなるわけです。とりあえず賞が獲りたい、副賞のお金が欲しい、という時は後者もねらい目ですね。
 小説家としてデビューしたい!という目標をお持ちなら、当然前者を狙った方がいいです。狭き門ですけど、チャレンジのし甲斐はあると思いますよ。ちなみに、小すば新人賞でしたら、受賞作は集英社さんから「絶対に」刊行されますので、受賞すれば(問題でも起こさない限り)作家デビューも確定でございます。

 

■結論

 ということで、公募新人賞の選び方として必須なのは、賞の「カテゴリを正確に把握すること」の一点のみじゃないかな、と思います。そこさえちゃんと押さえられていれば、あとは、選考の先生が大好き、とか、賞金額が高い、とかで選んでも構わないですね。


ただね……、僕が送っていたかもしれない「野生時代フロンティア文学賞」ですけども、2012年(第三回)の受賞作は、今をときめく芦沢央さんの『罪の余白』でございましてね……。

 そっちに送ってたら、僕は受賞できなかったんじゃないかな(笑)。そして、小説家にもきっとなっていなかった。小すばを選んだ自分グッジョブでございます。

 そう考えると、応募先って結構運命の分かれ目ですよね。ほとんどの新人賞が禁止しているけども、同一作品の複数応募したくなる気持ちもわからんでもない(やっちゃだめですよ。受賞したとしてもトラブるんで)。でも、そればっかりは運だし、迷ってもしかたないことではありますけどね。

--------------------------------------------------------------------
 

 最後に、めちゃくちゃ迷わせるようなことをほろっと言ってしまった気もしますけども、まあ「もしこっちの賞に送っていたら……」みたいなことを考え出すときりがないですから、カテゴリだけ気にして、あとは思い切って送ってしまいましょう。頑張ってくださいー。


モノカキTIPSでは、みなさまからのご質問をお待ちしております。今回ね、同じような質問来ているかもしれませんが、と気を使って頂きましたけども、僕の質問箱とかめちゃくちゃ過疎っていてすかすかですので、全然大丈夫ですのでね!

創作以外の質問でも構いませんので、遠慮なくどしどしお送りくださいませ。

 よかったら、小説すばる新人賞の傾向把握におひとついかがですか。

小説家。2012年「名も無き世界のエンドロール」で第25回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。仙台出身。ちくちくと小説を書いております。■お仕事のご依頼などこちら→ loudspirits-offer@yahoo.co.jp