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大きな時計台の有る村 


大きな時計台の有る村  S3号  アクリル画


いつ誰が建てたのか村人達は知りません
時計守は何代も続いていますが
そのいきさつについては
全く言い継がれていないのです

この時計台は高さ20メートル以上もあって
しかも標高300メートル程の頂に建っているので
四方八方しほうはっぽう近隣の村々のどこからでも
時間を知る事が出来ます

時計台には時計守と言う 時を知らせる人が居ます
時計守は年令や性別を問わず 時計台が見える地域から
几帳面きちょうめんで人望が厚く責任感の強い人が
選出されます

選ばれたその人には 時計台のすぐ下に
自宅が準備されます
時計守は一日に4回キッチリと
6時間おきに針を合わせ  
時を知らせる鐘を鳴らさなければなりません

 時計台の内部には螺旋階段らせんかいだんが有り
その階段は100段にも及びます
上り下りで200段余り 
それを一日4往復しなければならないのです 
そして体力が続く限り一生の仕事となるのです

今 この職務にいている時計守は
9代目に当たります
40才の時に任され来年4月には80才になる
高齢の男性です
最近は階段の上り下りに少し限界を
感じ始めているらしく
ちょっと弱気な発言も聞こえて来ます

名誉有るこの仕事を全うしなければとの思いと
体力のおとろえの狭間はざまで迷っているのかもしれません
次の担い手にバトンを渡すタイミングが
つかめないまま いちにちいちにちが過ぎて行きますが
本人はきっと この歴史をつなぐ仕事に携われる
自分に誇りと喜びをみしめながら
生きているのに違いないのです
一日でも長く勤まる事を願いつつ
毎日を送っているのだと思います  


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