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守護者の条件 ~黒猫・二代目~

我が家には30年ほど前から「邪払いの黒猫」がいる。

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「猫が30年も生きるわけないだろう!」というツッコミありがとう。

確かに最近は猫も長寿化しているが、それでも平均的な寿命は16歳から18歳あたりだ。
実際、我が家の初代・黒猫も、享年18歳である。

だから今日の主役は「邪払いの黒猫・二代目」なのだ。

■家庭内後継問題

黒猫初代が10歳を越えてから気になっていたことがある。それは
「守護役の跡目は誰が継ぐのか」
ノリでこのような役職を作ってしまった以上、私だって一応考える。

何しろ、こちらはノリだったのに、初代は見事にその役目を果たしているのだ。これぞ、瓢箪から駒。
更に初代は、猫なのに生真面目・几帳面な性格だ。
だから引き継ぎは必ず行われるだろう、と思っていた。

この頃、我が家には初代を合わせると4匹の猫がいた。年齢順に並べると以下の通り。

  • キジトラ長老(雌)

  • 初代(雌)

  • エリンギ王子(雄)

  • 巨猫(雄)

長老と初代
エリンギと巨猫

「黒猫」という条件だけならば、跡目は巨猫で決まりだろう。
巨猫は元野良のかなり大きな雄で、美しく青光りする黒い毛並みの猫だった。条件や順当さを考えたらコイツで間違いない。
だが、なんでだかピンと来ない。
過去、冗談でも「守護役を任せた!」と言い切った時の、あのハマる感じがないのだ。

その理由が分かったのは、数年後にエリンギが急死し、その空いた枠へ新しい猫が飛び込んできた時だった。

隻眼の黒猫(雌)

生後2週間で保護された隻眼の雌猫。
気ままで度胸の座った、その割に繊細な性格の黒猫娘。
初代とは10歳以上離れたこの小娘が「二代目」になったのだ。

■守護者の条件

どうして黒猫娘が二代目だと分かったか?は、後で語る事にして、先に「なぜ、巨猫ではなく黒猫娘が選ばれたか?」について考えよう。

二代目の就任が確認されるまで、自分の勘はさておき「初代の好み」と「年功序列」で、跡目を継ぐのは巨猫だろうと思っていた。
そもそも、当時は巨猫以外に黒猫はいなかったし、初代はこの巨大すぎる猫を息子のように可愛がっていたからだ。

そして黒猫娘がやってきたが、初代は彼女に関心を持っていなかった。
(そりゃ、老婆が幼稚園児に何かを期待するような話だしね)
それでも二代目になったのは、黒猫娘なのだ。

そこは"実力主義"や"適材"という条件で選んだのか。猫なのに。
いや、「猫だからこその実力主義」か!

人の霊感に個人差があるように、 猫にも当然、個体差があるだろう。
そして、人も女のほうが霊的な感性が高いと言われるが、 猫も同じく雌のほうが強いのかもしれない。

それとも、黒猫であっても「秘密のおパンツ※」があると駄目なんだろうか?
巨猫は実に黒々しいが、裏返すと「秘密のおパンツ」があったから。

※秘密のおパンツとは黒猫の腹に一部分生えている白い毛の事。
世間では「エンジェルマーク」と呼ばれるが、私はパンツだと思っている。 一日一回、猫をひっくり返し「漢のぉぉぉ~ビキニパ~ンツ」と腹を摘まむのが、かつての日課。

あとは「気質」
猫は毛色で性格傾向が分かれるという説がある。
黒猫は甘えん坊で大人しく、賢い個体が多いらしい。

確かに初代も黒猫娘も基本は大人しい。特に黒猫娘は片目が潰れているせいか、カーテン登りもしないし、ミッドナイト運動会も殆どしない。
だが、それと戦闘能力は別らしい。

以前、2度ほど野良猫が家に侵入したが…… 自分より一回り大きな野良を鬼の形相で追い回していた。
そして、先住の巨猫を一方的にぶん殴っている姿を度々見かける。

この「やるときはやる」という空条承太郎的性格が、 うちの守護役になるための条件なのかもしれない。

そして、これは今だから思うのだが、巨猫では寿命が足らなかった。
巨猫は、元々かなり臆病な性格だったし、保護してしばらくしてから結石持ちになり、最終的に13~14歳で他界してしまった。

以前、ダンナが言っていたのだが、お役目のある動物というのは"色んな意味で強い"のだそうだ。

黒猫娘は、生後2週間で母猫に捨て置かれてしまった猫だ。
一緒に置き去りにされた兄弟は、保護される前に死んでしまった。
彼女は片目を失っても、生き延びて我が家に辿り着いた。
そして、それ以降は病気らしい病気をしない。

初代も病気一つした事なく、 腎不全が進んで足がおぼつかなくなっても、 私が帰る時には玄関まで来ていた。

おそらく、こういった「強さの総合点」をある程度満たすことが、守護者になるための条件なのだ。

■二代目の就任

あくまで後付けのような「守護者の条件」を先に語ったが、今度は「なぜ私が黒猫娘が二代目だと気付いたか?」を説明しよう。

それは、初代が末期の腎不全で余命宣告されたあたりだ。
初代には「肝炎になった長老に威嚇をして寄り付きもしなかった」という事件があったのだが、それと同じことを黒猫娘がやったのだ。

それまで初代にウザ絡みムーブを展開し続けた黒猫娘が、突然威嚇しかしなくなった。
この時も、初代の時同様「病院の匂いがついたせいか?」とも思ったが、他の猫や犬が病院に行っても特に変化はないため、初代の"何か"にだけ反応しているようだ。
更に、犬、巨猫が病気になった時も同様である。

ちなみに、この状態が続くのは黒猫娘的にストレスらしく、巨猫が病気になったのをきっかけに"ストレスハゲ"ができ、今に至っても治っていない。
(こういうところが繊細)

更に黒猫娘が二代目に就任してから、我が家では「知らないけれど見覚えのある猫(の霊)」を視なくなった。

初代がいた頃、私はロードキルされている猫を見かけると「うちに来て飯を食っていけ」と声をかけていた。
そのせいか……たまに、家の猫に混じって知らないが見覚えのある柄の猫が飯を食っていたりする。
その柄をよく思い返せば……数日前に道で死んでいた猫と同じ柄なのだ。

初代は、そういう猫を受け入れ、飯を食わせ、送り出していたようなのだが、二代目は完全にシャットアウトしてしまうようだ。
ここは、初代と二代目の性格の違いだろう。
(二代目は野良猫をギャンギャンに追い回して、毛を毟り取る猫なので)

それに気付いてから、ロードキル猫に「うちに来い」と言うのはやめた。
せっかく来てもらっても門前払いは、逆に可哀想だからだ。

■資質が先か役目が先か

これらのことは、本当に私の思い過ごしなのかもしれない。
しかし、犬にしろ猫にしろ、多頭飼いをしている人なら「コイツ、明らかになんか違うんだよなぁ」という個体が1匹2匹混ざる、というのは感覚的に分かっていただけるだろう。

私はあくまで趣味の範疇だが、今までの人生でそれなりの数の犬猫と関わってきていると思う。
その中には何匹か黒猫もいたが、こうゆう特殊な話が付いて回るのは初代と二代目だけだ。

うちに来るからそうゆう猫になるのか、そうゆう猫だからうちに来るのか。鶏が先か卵が先かという話で、私とダンナは「半々なんじゃね?」なんて話はしている。

今年で二代目も13歳。
私の記憶が確かなら二代目がやってきたのは、初代が15歳の頃だ。
自分の寿命を考えると、あと1匹子猫を飼えるものか?と考えたりするのだが、やはり3代目は来るのだろうか?

とりあえず、二代目には末永く元気でいて欲しいものである。

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