狂おしいほど好きなものに出会ってしまった瞬間
誰になんと言われようとも、自分にとって大好きなものに出会った時の衝撃は、何年経っても忘れられず、その時のことを思い出すだけで、胸がきゅーっとする。私の好きなものの一つは、ロックだ。ロックと出会い、その中でも3回、苦しいほど胸を締め付けられ、そこから逃れられないと思った出会いがあった。
エレファントカシマシ
ザ・クロマニヨンズ
oasis
【エレファントカシマシ】
今でも鮮明に覚えている。2012年5月頃、当時かなり落ち込むことがあり、気が滅入ったままボーッと家でYouTubeがオススメしてくる音楽の動画を眺めていた。昔聴いていた馴染みのあるミスチルやスピッツなどが流れてきた中に、それは急にでてきた。そう「エレファントカシマシ」だ。エレカシの武道館ライブ映像で「悲しみの果て」が流れた瞬間、「パンッ」と脳内に音が鳴った気がした。「悲しみの果ては、素晴らしい日々を送っていこうぜ」と汗びっしょりになりながら歌うロックバンドを観て、脳内に電気が走ったのを覚えている。
私は当時、音楽は流行りのものをなんとなく聴く感じの人間だった。歌詞もあまりに気しなかったし、メロディーが好きだな位しか思わず、ほんとになんとなくしか聴いていなかった。
そこに突如あらわれた「エレファントカシマシ」だ。なんとなく聴いたことのあるバンドという認識しかなかったが、私がロックの魅力に引きずり込まれた瞬間だった。
シンプルなステージに、4人の男性がかき鳴らす音。ボーカルからの熱気。「悲しみの果て」の動画を何回も何回も聴いて、体中の血が湧き上がってくるのを感じた。「もっともっと聴きたい、生で直接聴いてみたい」その欲求が一瞬のうちに頂点に達した。体が勝手に動きだし、すぐエレカシを調べ、ファンクラブがあることを知った。ファンクラブに入った方が、ライブを観れる機会があると書かれていたので、その日のうちに申し込みをした。
そして、私の人生の中で忘れられないライブをみることになる。
2012年10月14日に、東京日比谷野外音楽堂で、エレカシのライブが行われる。そのチケットに当たったのだ。生まれてはじめて「ライブ」というものに行けることになったし、それがエレカシのライブということで、ものすごく興奮したのを覚えている。
そして、ライブ4日前あともう少しで生歌が聴けると思っていた時にでた衝撃的なニュース。 「エレファントカシマシ、宮本浩次。急性感音難聴。ライブ活動休止」一緒にライブに行く姉から「今ニュースになってるよ!!」と連絡があり、テレビをつけたら、アナウンサーが話していた。まさかこのタイミングで!?ガーンと頭を殴られた気分だった。しかし、こればかりはしょうがない。ボーカルの宮本さんの大事な耳が治るのを祈るしかないと思った。
そして、10月14日前に、自分の携帯に公式ファンクラブからメールが届いていた。「宮本の強い希望によりアコースティックによるライブを行います」と。また従来のバンド編成ではない為、チケットは払い戻しも可能と書かれていた。
一緒にいく予定の姉にすぐ連絡をし、ライブにいけることを伝え、二人で大喜びの声を上げた。
ライブ当日になり、姉と一緒に会場に入った。日比谷野外音楽堂…それは、エレカシファンにとっても聖地と呼ばれている会場で、毎年ライブをしている場所だ。夕暮れになり、少し肌寒いなか周りのファンもざわざわしながら、始まるのをまっていた。
時間になり、ステージの照明が変わった。
一人の男性がステージに出てきた。「本物の宮本さんだ」。画面越しではなく、目の前に生身の姿でだ。椅子に座り、アコースティックギターで歌いだした。「世をあげて、春の景色を語るとき~」聴いた瞬間、固まった。
今までの人生で聴いたことがない響の歌声だった。胸がぎゅーっとなった。声量、歌う技術が上手いのは、もちろん分かる。けれど、それ以外の何かに自分が反応している。何か分からないけれど、目を放したくないし、全部を聴きたいと思った。そして、私が聴きたかった「悲しみの果て」を歌いだした時に、自然と涙がでてきた。「歌」を聴いて泣いたのがこれが初めてだった。心の中に蓋をしていた、自分の何かが解放された気がした。一本のギターと歌声だけで、人間はこんなにも心揺さぶられるのか。音楽の力を肌で感じ、泣きながら聴きいっていた。途中、宮本さんの話が入ったり、ファンの温かく見守る感じも心地よかった。最後に、他のメンバーの3人も出てきて、一曲だけ、バンド形式で「ズレてるほうがいい」を演奏した。ここで、生まれて初めて、バンド形式の音を聴いた。今思うと音を少し、小さくして演奏していたのかと思うが、初めて聴いた私にとっては、心臓が飛び出るくらい爆音に聴こえた。4人全員で演奏する「ロックバンドってすごい」と私の心に刻まれた。そして、飾らないありのままの感情をむき出しにする武骨な演奏に心撃ち抜かれた。そして、このチケットは払い戻しせずに、今でも大事にとっている。
【ザ・クロマニヨンズ】
エレカシを大好きになり、2014年1月11日にエレファントカシマシデビュー25周年記念スペシャルライブにも行ってきた。その日のライブが終わった後の夜である。公式メールより、福岡で「ザ・クロマニヨンズ」との対バンを行うと発表があった。この時思ったのは、「エレカシが観たい」であった。クロマニヨンズは、「ロックの世界ですごい有名といわれてる、元ブルーハーツの人達」というものすごい表面的なことしか分かっていなかった。今思えば、もっと早く知っておけばと後悔の日々だがしょうがない。
今では、「ヒロトー」「マーシー」「コビー」「カツジー」とライブでは、叫んでいるが、この時点では、「甲本ヒロト」しか認識していなかった。
そして、私の中で初めて「ライブ遠征」というものに、踏み出した瞬間だった。私は、関東に住んでいる。そして、一人でどこかに泊まるという経験は、仕事の出張くらいで、しかも数える程度しかしたことがなかった。
まだ、そんなに女性の一人旅プランも充実していなかったような世の中のだった気がする。ここで、私の好きなものへの執念が開花することになった。「本当に好きなことは、一人でも諦めずにどうにかする」という事だ。チケットもチケットぴあとかではなく、地方のチケットサイトからの抽選だった。勝手が分からなかったが、とにかく申し込みをし、抽選にあたるかどうかも分からないが、「当たったら福岡に一人で行ってみよう」と決めた。
そして、後日当選メールが届いた。
「これはもう行くしかない」。初めて、一人で飛行機を予約し、まったく地理も分かっていない福岡のホテルと会場までのルートをGoogleで確認し決めた。当日現地についた時、X(旧Twitter)でエレカシファンの方とも仲良くなり、始まる前に現地で交流をしたりして、ファン同士の交流というのも初めて経験した。
開演時間になり、エレカシとクロマニヨンズ、どちらが先に演奏するか、どきどきしていた、そして先にエレカシが出てきた。なんとなく前の方に行けたので、「うわー近い」と思いながらエレカシを堪能していた。そしてもみくちゃになりながらも大満足し、次がクロマニヨンズなので、私は後ろに下がり、クロマニヨンズファンの背中を観ながら、出てくるのを待っていた。
この時、私はコビさん側で観ていた。
クロマニヨンズが出てくるなり、ファンの歓声がものすごかった。そして、ヒロトがあの独特な動きで登場し、他のメンバーはニコニコしながら出てきてたのが印象的だった。(エレカシは、どちらかというと鬼気迫る感じが多い)恥ずかしながら、その時クロマニヨンズの曲は、まったく知らなかった。だけど、知らなくてよかったと思った。知らなくても一曲目始まった瞬間から、ドカンと雷が落ちた。音がでかい。なんかものすごい疾走感。そして、なによりも「ものすごい楽しい」という気持ちが湧き上がってきた。どんどん曲が流れていき、体が勝手にこぶしを挙げていた。ヒロトの笑顔の破壊力と、しゃべりだすとなんて優しい口調なんだろうと驚いた。ロックンローラーだから、もっとオラオラしているのかと思ったら、「ものすごく優しい、、、」と思った。そして、マーシーのギターを聴いて、初めてギターという楽器に興味をもった。エレカシのギターは、ギタリストの石くんとボーカルの宮本さん、そして、当時の助っ人のヒラマミキオさんの3人が奏でている。なので、クロマニヨンズは、ギター一本で演奏しているから、より鮮明に「真島昌利」というギタリストだけの音色が聴こえてきた。「ギターが歌ってる」とはこのことかと思った。素人ながらもギターの音が多いわけじゃないのに、すごく耳に残るフレーズだし、かっこいいと感じた。
ベースのコビさんとドラムのカツジさんの出す音も一音一音がバシッと聴こえてきた気がして「なんだこのかっこいいバンドは」と思った。確か、最後の曲が「ストンプ」だった気がするが、その時にはもう心はクロマニヨンズに染まっていた。終わった後に、ものすごい充実感になり、エレカシを観に来たけれど、クロマニヨンズを知れた喜びがとても大きかった。
そして、その後もエレカシを中心にライブ遠征には行っていたが、クロマニヨンズも関東でやっているライブには、いくようになっていった。
自分の中で、クロマニヨンズの存在が一番大きく変わった時期は、2022年のシックス・キックス・ロックンロールのツアーだ。コロナで世の中がいろいろストップしていたが、少しづつ再開し始めたころだ。私は、仕事でいろいろ重なって、突然眩暈と吐き気がして自力で立ち上がれなくなり、家族に付き添ってもらい病院にいった。病院では、初めてMRIや点滴をしたりして、検査をした結果、メニエール病だと言われた。とにかくこの病気はストレスを発散させること。異変を感じたら無理をしないこと。と、お医者さんに言われた。確かに、コロナで家にいることが多くなったし、友人ともなかなか会えない、仕事のストレスはたまる一方だった。自分の好きな事で何がしたいと考えるとやはり、「ライブに行きたい」だった。そして、すでにツアーをしていたクロマニヨンズのライブがこれから家の近くでやるということと、まだチケットが残っていることが分かった。とにかく、「ストレスを発散したい」「楽しいことがしたい」「心が解放されたい」。チケットを購入し、左耳に違和感を感じながらもライブ会場にいった。まだ、声出しは禁止の時だ。みんなマスクをしていて、いつもと違う空間。1番後ろの席だったけれど、ライブの音を聴いた瞬間、またあの何かが弾ける感覚がおこった。声は出ないけれど、心の中が叫んでいる。「楽しい」「もっともっとやって欲しい」ヒロトの声、マーシーのギター、コビのベース、カツジのドラム、すべての音が体にぶつかって、自分の中に溜まっているドロッとした感情を吹き飛ばしてくれた。そして素直に、好きなことを全力でしているクロマニヨンズをみて、私もそうありたいと思った。好きな事が分かっているのに、できていない自分にも嫌気がさしていたのにも気がつけた。そこから、クロマニヨンズのライブが聴きたくて聴きたくてしょうがなくなった。クロマニヨンズのスケジュールと自分の仕事のスケジュールを見比べては、いける日を増やしていった。行けば、本当に毎回楽しい。楽しくない日なんてない。だから行ける場所であれば、どこにでも行きたいと毎回思っている。
【oasis】
クロマニヨンズをより一層聴くようになったら、ヒロトとマーシーのことをもっと深く知りたくなった。ヒロトとマーシーは、御存じの通り、ものすごい音楽に詳しい。知らないものはないんじゃいかと思うくらい音楽について博識だ。その影響で、私も知らないアーティストを聴いてみようという感情が生まれてきた。
特に私は「歌詞」で好きになるという傾向が強かった。なので、洋楽は、いい事言っているんだろうなと思いつつ、和訳も読んだりしたが、メロディーと英語と日本語歌詞が上手く脳内処理できずに、なんとなく頭に完全には入ってこなかった。なのでそこそこ聴いて「嫌いじゃない」「普通に好き」くらいで終わることが多かった。しかし、ヒロトとマーシーのように、「音楽という広い海にもっと出てみたい」「知らない曲を知りたい」という思いがだんだん強くなってきた時、「ノエルギャラガー・4年ぶり来日」というのが目に入ってきた。弟のリアムも同じ年に、サマソニに出ていることは、知っていた。「元oasis」というフレーズに心が引っかかった。なぜだが分からないが、観に行ってみたいとその時思い、ノエルのソロライブの抽選に申し込みをした。そして、二日間東京で開催されるうちの1日が運よく当たった為、東京ガーデンシアターに一人で観に行ってみることにした。
oasisは、なんとなく「昔CMとかで聴いたことあるな」と思いながら、初めて海外アーティスのソロライブを体験することになった。なので、ノエルのソロ曲は、一曲も知らないままライブを聴いていた。最初は、「やっぱりぜんぜん知らないなー」と思って他のファンの様子を観つつ聴いている感じだった。しかし突然それは、やってきた。英語は、まったく分からないがメロディーラインを聴いていると、心が弾む曲が流れた。ノエルの歌声がなんとなく聞き取れた「Tonight! … Tonight! Gonna let that dream take flight」「Don't stop believing what you know」脳内で、たぶん前向きことを言っているんだろうなと思ったくらいの理解力だったが、妙にリズムとフレーズが残った。
ライブの後半は、oasisの曲だった。「The Masterplan」、「Live Forever」、「Don't Look Back In Anger」ここら辺は、聴いたことがあるし、「Don't Look Back In Anger」は、最後みんなで歌う場面が楽しかった。ライブ終了後、あの心に残った曲が聴きたくなって「レコード買おう」と思い、すぐノエルの新アルバムのレコードとCD両方を注文した。
届いてすぐ、CDについている和訳を読みつつ聴きなおした。なんとなく心に残ってた、ノエルの曲は「We're Gonna Get There In The End」という歌だった。和訳を読んだ瞬間に、「あぁ自分が感じたことは、間違いじゃなかったんだ」と思った。
ミントさんの素晴らしい和訳
そこから、ノエルとoasisの曲をYouTubeの動画であさり始めた。そして、衝撃波がきた曲がoasisの「Whatever」だ。前から聴いたことがあったし、ものすごい有名な曲だって知っていたが、歌詞の内容までは、理解していなかった。いろんなバージョンの動画が上がっているが、このネブワースとノエルがソロで歌っているバージョンが特に気にって何回も見ている。「どんなものにでもなれる」この言葉だけで、頑張れる勇気がでてくる。そして、このメロディーがとにかく好きだと思った。
いろんな曲を聴くうちに、ノエルとリアムの人柄にも興味が出てきた。喧嘩別れしたというのは、なんとなくわかっていたし、喧嘩してるとそれがネットニュースになったりしているのも知っていた。いろんな動画や過去のインタビューを読むと、口癖がF××ワードで、みんなそれをネタにしていたりする。けれど、破天荒なようだけど、2人ともとても優しい面をもっているのも分かる。完全にギャップにやられた。心の奥の奥は、優しくて、まっすぐな人達なんだと。それが曲に出てきているんだと思った。そして、自分たちの心に正直に生きているんだと感じた。そこが、エレカシやクロマニヨンズと同じ、内面の奥底の部分が似ているんじゃないかと思った。
ここから怒涛のノエル熱とoasis熱が上がってきた。
ノエルが韓国のインタビューで、2024の夏は、韓国と日本のフェスにでると口を滑らせて、それがフジロック最終日だと分かった。また、ノエルの歌声が聴きたい。海外アーティストだからしょっちゅう観れるチャンスもない。いてもたっていられなくて、フジロックに行ったことがないけれど、どうしてもまた生で聴きたくて、なんとかなるかと行く決心をした。
そして、フジロックに行く前に、oasisのレコードも集め始めどんどん沼にはまっていった。
特にネブワースのライブ音源は、聴いた瞬間に心臓の鼓動が早くなったのがわかった。
このレコードが私を「oasis大好き人間」にした決定打となった。知ってる曲は、なんとなく歌詞が分かる。けれどはじめて聴いた曲が何個も入っていた、その全ての歌声とメロディーが胸に響いた。
そう、歌詞で好きになるタイプの私が、歌詞が分からなくても聴いた瞬間に、胸の真ん中がギューっとなって苦しくて悶えた。そして苦しいのに、ずっと聴きつづけていたいそんな感情が溢れてきた。昔ヒロトが、「子供の頃ラジオから流れてきた音楽に感動して、畳をかきむしって、涙を流した」と言っていた、あの現象と同じようなものなのかと思った。そして、エレカシとクロマニヨンズに胸打たれた感覚と似ていた。
「出会ってしまった」と思った、「狂おしいほど好きなもの」に
そして後日、フジロックで、ノエルの生歌を聴き号泣している自分がいた。雨に打たれながら、ノエルの「Whatever」を聴いていた時は、雨なんだか涙なのか分からないほど、頬に流れて行く感触があった。ただただ幸せな一時で、大好きだと思った。
フジロックから帰ってきても頭はoasisでいっぱいだった。ノエルがイギリスでライブをしている情報を観ては、「いいなー」と思っていた。そして、リアムもいつか生で観たいと思っていた。リアムもライブをしている情報が流れては、動画をあさっていた。「お金貯めて海外遠征するか?」と思い始めた時に、まさかの「oasis再結成」が流れた。
タイミングがよすぎる。この流れに逆らってはいけないと思って、いま走り続けている。
まだまだ、たくさんの楽しみがあることの幸せを噛み締めながら、「好きな気持ち」を自分に正直にして、生きていこうと思う。
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