〈神嘗〉のお話。
厳しい夏が終わり、すっかり秋の気配になりました。
emeraldの五季のブレンドは、今週末より秋の〈神嘗(かんなめ)〉に切り替わります。
今日は、その〈神嘗〉のお話を書いてみます。
1・emeraldの五季、秋は陰陽の切り替わり
2・五柱の女神、秋は豊穣の〈大宜都比売(オホゲツヒメ)命〉
3・秋のブレンド〈神嘗〉
1・emeraldの五季、秋は陰陽の切り替わり
まずは、emeraldの季節観から。日本では「四季」という言葉がありますが、漢方の世界では、季節は5つに分かれます。「春・土用(梅雨)・夏・秋・冬」です。これは、中国思想のもととなっている、道教の「陰陽五行」に基づきます。
「陰陽五行」というのは、この世界の仕組みを説いた哲学で、宇宙には「陰陽」の相対する二つのエネルギーがあり、さらに万物は5つのグループに分けられるというものです。
「陰陽」の「陰」は受け身の静かなエネルギー。内側にこもり、精神や外に見えない部分を育みます。要素でいうと〈夜・月・女性・冬〉など。
「陽」は、能動的でアクティブなエネルギー。外側に向けて働きかけていく物質的、現実的な部分を言います。要素でいうと〈昼・太陽・男性・夏〉など。この正反対の二つのエネルギーが、生まれては消え、ぐるぐるとお互いにバランスを取りながら、宇宙は成り立っていると言われています。
「五行」は、この世の中の森羅万象は「木火土金水」の5つの自然元素に基づく性質のグループに分けられるというもので、方角、色、季節、臓腑、感情などあらゆるものを5つに分けます。
季節は、5つ目の季節、「土用」があります。これはもともとが〈季節と季節の間〉の季節である土用だったわけですが、中国では雨期である「長夏」という時期が秋前にあり、それを呼ぶことにもなりました。日本に伝わった際に、日本の雨期である「梅雨」が担うことになり、emeraldでも梅雨の季節を用いています。
五季についてはまた別にしっかり書いたほうがよさそうです〇
では、〈秋〉という季節を漢方的に見るとどういうものか。
先ほど〈陰陽〉の考え方が出てきましたが、一年を陰陽で見ると、陽の季節が〈春・夏〉、陰の季節が〈秋・冬〉となります。梅雨は中庸と考えていいでしょう。
アクティブな生命エネルギーである陽気が生まれるのが春、だんだんと育っていって夏には外側へ向かう元気なエネルギーは最高潮に達します。
重陽を過ぎて、次第に〈陰〉のエネルギーが生まれ、増えていくのが秋。すっかり陰の世界となり、眠りの季節のなかでつぎのサイクルの命の種を育むのが冬というわけです。
一年が陰陽のサイクルにのっとっているのがわかると思います。
秋は極まった陽気から〈陰」の世界へ転換を行う大事な季節です。ゆっくりとスピードを落とし、外側へ向いていた眼を内側へぐるんと、それも静かに穏やかに転じていきます。まるでメビウスの輪のように。
眠っている状態の冬から春が生まれる特別な時季とはまた違った特質があります。起きているなかで静かにエネルギーの転換を促していく・・・なかなかできることではありません。やさしく、穏やかで、しっかりとした土台のあるような、そんな大地のようなエネルギー。
次の女神の話へと続きます。
2・五柱の女神、秋は豊穣の〈大宜都比売(オホゲツヒメ)命〉
emeraldの五季のブレンドでは、それぞれに日本神話に出てくる女神を配置しています。「五柱の女神」と呼んでいます。
春は清らかな流れを司る瀬織津姫命、梅雨はふたつの世界の境界をくくる菊理姫命、夏は情熱の炎を燃やす木花咲夜姫命、冬は混沌の眠り・黄泉の世界を司る母神・伊邪那美命、そして秋は、日本の大地母神である豊穣と収穫の女神・大宜都姫命です。
本来、五行によれば、梅雨が黄色で、秋は白にあたるのですが、わたしの五季のブレンドでは特別に色を入れ替えています。秋のあたたかさ、豊穣には稲穂の黄金色がよかったし、「白山」ともいわれる菊理姫さんはどちらにも属さない境界を司る(さらにとてもミステリアスな姫)という性質と梅雨のmysiticalなイメージを白に重ねたかったからです。
というのも、そもそもこの五柱の女神は、絵描きでもあるわたしkaoruの2019年にNew York ブルックリンで行われた「New Era The Japan Goddesses」というわたしの個展のために描かれた女神のシリーズに絵に基づくからです。この個展は五季の特徴に合わせて日本神話(瀬織津姫は神話には出てきませんが主要な位置にあります)の主要な女神をその特質から選んで担ってもらうという構成でつくっていました。
さて、秋の大宜都姫命(オホゲツヒメノミコト)という女神は、日本の大地母神と言っていいと思います。ギリシャ神話ではデメテルという女神がいますが、大宜都姫命はアジア版の豊穣と収穫の女神です。
神話の中では、天界を追放された須佐之男命がおなかが空いたといい、大宜都姫命のもとを訪れると、口や鼻、耳、お尻などの穴、つまり体の中から米や稗、粟などの雑穀や蛾(お蚕様)、山の獣などを出して与えます。
これを見ていた須佐之男命が汚いと怒って大宜都姫命斬り殺してしまうしまうというエピソードです。
大宜都姫命は乞食の中での名前、日本書紀のほうでは〈保食神(ウケモチカミ)〉という名前で体から出すものが若干違いますがおおむね、同じこと。「ケ」というのが「食べ物」のことですから、どちらも「偉大な食べ物の神様」の意味となります。〈保食神〉は名前を見ればわかりますね。
上のエピソードの紹介は、二柱のエピソードを混ぜています。
また、「アジアの」と書いたのは意味があります。この女性が斬り殺される。そしてばらばらになった遺体を土に埋めるとそこから農作物が生まれるいう逸話の型があります。これは〈ハイヌウェレ型神話〉と呼ばれるもので、環太平洋の島々に残る神話の型です。タロイモなどのイモ類は種芋を土に埋めるのですが、そこから〈命を生み出す〉イメージが、女や女神と重なったためと思います。
ここからはわたしの大宜都姫命のイメージ。
黄金色の長い髪をゆったりととたゆたせて、ふっくらとしたからだに金色の繻子の袈裟をまとっています。耳飾りや腕輪もしていて、周りには鹿やうさぎや山野の生き物が寄ってきて、その袈裟の前身ごろに大地の恵みを抱えています。
優しく、包容力があり、献身的で奉仕のこころを持った慈しみのエネルギー。きっと須佐之男命に殺されても怒りもせず、ただまた大地に戻って、ほかの命を育むことを望んだと思うのです。
3・秋のブレンド〈神嘗〉
そんな豊穣の女神・大宜都姫命から、秋のブレンド〈神嘗〉もノンカフェインん誰でも飲めるやさしい味わいのお茶に仕立てました。
今では珍しくなった釜炒りの丸粒麦茶をブレンド前に挽いてベースにしています。五穀豊穣を願い、煎り玄米を加えて香ばしさを出しています。
漢方では秋は〈肺〉という呼吸器系や乾燥をいたわる季節。
のど痛や咳にきく枇杷の葉や金柑、大腸の乾燥をケアして便秘をよくするはぶ茶(決明子)。はぶ茶はコーヒーのような香りも加えてくれます。
また、夏で消耗した元気を補うなつめも加えました。10分、15分とおくと甘みも感じられます。
枇杷の葉は昔から日本の万能薬草で、焼酎につけて枇杷の葉エキスをつくったり、枇杷の葉温灸をしてがんの手当をしたりと薬効の強さで知られてきました。
お子さまが飲んでもおいしく安心な、五季の中で一番優しく飲みやすい味わいのブレンドだと思います。
お茶の詳しいご案内はオンラインストアにございますので、のぞいていみてくださいね。
また、お買い上げごとに、〈秋の養生アドバイスシート〉が付いていて、秋の薬膳食材のご案内などをしています。
季節のブレンド・秋 〈神嘗 かんなめ〉(teabag 10P) | emerald magic... (stores.jp)
ここまでお読みいただきありがとうございました。
実は深いストーリーがあった五季のブレンド。冬や春と続いていきますので、お楽しみにお待ちください。
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