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純粋なセレディンピティはインターネットで起きるのか

私の母は携帯を持たない。インターネットが繋がっていると、人から連絡が来る”かもしれない”状態になることに耐えられないからだ。

知らない場所に行く時は父に地図を印刷してもらい、外出時に用事がある時は公衆電話からかかってくる。母は困ることは何もないそうだが、私たち家族からすると外で待ち合わせた時の急な遅刻連絡もできないし、災害時の不安もあるしで色々と困りごとはある。

そんな母が、この度タブレットを所有することになった。Androidから出ている大型の黒いタブレットで、インターネットやyoutubeは問題なく見れるが、なぜか何度試してもGoogleへのログインができない。謎のタブレットだ。

きっかけは、いわゆる推し活だ。母は数年に一度アーティストに大ハマりするのだが、去年からとあるピアニストを猛烈に推している。それまでもハープ演奏者や中国俳優など”推し”は存在していたが、「インターネット嫌い」のアイデンティティを変えてタブレット購入に至らせたのは今回が初めてだ。

「youtubeって、インターネットとは違って簡単なんだって!」と突っ込みどころ満載の発言をしつつ、タブレットを自由自在に操っている。残念ながらGoogleへのログインだけはできないタブレットなので、youtubeのチャンネル登録も、いいね!もできないことだけが不服のようだ。

母がタブレット生活に慣れてきた頃、とある発言に驚かされた。

「Aさん(例のピアニスト)が弾く予定の曲を検索した後にyoutubeを見たら、なんと同じ曲が出てきたの!これって運命じゃない?やっぱりAさんとはご縁があるんだわ」

冗談で言っているのではない、本気でご縁を感じているのだ。

インターネットが当たり前の世界に生きている私たちは、自分が調べた内容と一致する広告や検索結果が別のサービスで表示されても、ご縁を感じることはない。むしろ何度も同じものが表示されて、鬱陶しいと思うかもしれないぐらいだ。

ECサイトのリコメンド、動画配信サイトのおすすめ動画、マッチングアプリのおすすめユーザー。インターネットでは、あらゆる場所で自分に合う(と判断された)ものが提示される。

純粋な偶然の出逢い、セレディンピティはインターネット上で起きるのだろうか?

でも、自分の好きな人と「ご縁がある」と思えている方が幸せだ。母にはこのまま楽しくインターネットを活用して推し活を続けて頂きたいと思う。

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