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気持ちを伝える授受表現

職場のFBに載せたものです。中上級、N2程度の学習者を対象に想定しています。

寒くなってきましたね。みなさん、お元気ですか。札幌はもうすぐ紅葉できれいになります。
学生:「紅葉が見たいんですが、どこに行けばいいですか。」
(おっ、「~んですが」が上手に言えた!)(←先生の心の声)
先生:「近いところなら中島(なかじま)公園、少し遠くてもいいなら芸術の森もいいですよ。」
学生:「そうですか。ありがとうございました。」
 
こういうとき、学生はあとで何と言うでしょうか。
「先生は中島公園がいいとおっしゃいました。」
尊敬語、すばらしい! でも……
「先生が中島公園がいいと教えてくださいました。」
こう言ってほしいです(「先生に中島公園がいいと教えていただきました」もいいです)。
 
みなさんは「~てくださいました」「~ていただきました」を習ったとき、どう思いましたか? 「長い」「言いにくい」「どうしてこの文法を使いますか?」と思った人はいませんか。
 
「先生が私に日本語を教えました。ありがとうございます。」はい、文法は正しいです。
でも、「教えてくださいました」と言うと、「うれしい」「ありがとう」という気持ちを伝えます。
文法には、この〔気持ちを伝える〕ことがとても多いです。
 
「日本に来たとき、先輩が私を手伝いました。」これだと「感謝してないの? 失礼だね」と感じます。
「日本に来たとき、先輩が私を手伝ってくださいました。」こう言うと感謝の気持ちがわかります。
 
次回は気持ちを伝える文法についてもう少し説明します。


秋の中島公園 フリー素材photoAC

こんにちは。寒くなりました。紅葉の季節も終わって、次は雪です。
前回は「先生が中島公園がいいと教えてくださいました。」についての話でした。
 
相手が友達なら何と言いますか?
そう、「友達が中島公園がいいと教えてくれました。」です。
友達だから「くれました」はいらないんじゃない? 友達でもこの長い文法を使うの?
そう思った人はいませんか。
い る ん で す。
 
「友達が中島公園がいいと教えました。」これでは気持ちを伝えません。(もうこの人に教えるのはいやだな、やめよう)と友達が思うかもしれません。
「友達が中島公園がいいと教えました。うれしかったです。」これは?
うーん。「うれしい」と伝えるのを忘れたから後で付けました、という感じがします。
せっかく「教えてくれました」という文法があるのです。これで伝えましょうよ。
 
逆に、あなたが友達に教えたときに何と言いますか。
わかりますよ、「私は友達に中島公園がいいと教えてあげました。」でしょう? と思った人はいますか。
そうですね、そう思いますよね。でもこれはどんな気持ちを伝えますか。
「私は親切ですよ、私に感謝してください」という気持ちを伝えてしまうかもしれません。
この場合は「友達に中島公園がいいと教えました」(「伝えました」でもいいです)でいいんです。
 
混乱してしまいましたか。次回、もう少し整理しましょう。
【写真は雪の中島公園です。フリー素材photoAC】


雪の中島公園 フリー素材photoAC

みなさん、こんにちは。寒いですね。もう少しで札幌も完全な冬になります。
雪を見たことがない人もいますか? 写真をお見せしますね。
 
↑いま、「お見せしますね」と書きました。「見せてあげますね」ではありません。
覚えていますか?「あげます」を付けると「私が親切だから見せます。感謝してください」という気持ちを伝えてしまいます。だからこういうときは「お~します」(謙譲語です。覚えていますか)を使うといいです。
 
初級で習ったことがありませんか。先生が重そうな荷物を持っているとき、
「先生、持ってあげましょうか」?
「先生、お持ちしましょうか」〇 これがいいです。
 
友達に言うときは? 「持とうか?」または「持つ?」です。
でも、ここからがまた難しいのですが、友達ですから「持ってあげようか?」を(感謝してほしいの? なんかいやだな)と思わない人もいるかもしれません。気持ちの問題ですから、みんな違うでしょう。相手の反応を見たり、「いま、いやなこと言っちゃったかな」と正直に聞いたりして、どんな言葉を使ったらいいのか決めていけばいいと思います。
 
面倒だなぁ、と思いましたか。そうですね。
でも、言葉は気持ちを伝えますし、「言葉」とは「うれしい」「いやだ」などの単語だけではなく、文法も「ね」や「よ」などの最後の一つも、イントネーションも言葉です。良い人間関係、コミュニケーションのために練習しましょうね。


冬の札幌の川

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