見出し画像

カオナビのヘルススコア徹底大解剖!~スコア設計編~

みなさんはじめまして、カオナビカスタマーエンゲージメント本部でCSOpsグループのマネージャーをしています佐伯と申します!

今日はカオナビで運用しているヘルススコアについてご紹介をしていきたいと思います。

実はこのヘルススコア、自分で言うのもおかしいのですが紆余曲折しまくりながら全てが完成するまでに約1年ほどかかったなかなかの大作wでございまして、今ではこのヘルススコアがCS活動にも浸透し部内の共通言語に育ってきました。

noteではカオナビのヘルススコアが定着・浸透するまでの道のりを前編・後編に分けてご紹介していきます!前編は『スコア設計編』ということで、設計手順や考え方についてまとめていこうと思います。

こんな人におススメ

  • カスタマーサクセスに従事している方

  • ヘルススコアを導入したいが、何からどう進めれば良いかわからない方

  • ヘルススコア自体はあるが、上手く運用されておらず見直しを検討している方


なぜヘルススコアを見直したか

実はカオナビ社ではもともとヘルススコア自体は存在していたのですが、ここ数年でいくつもの機能アップデートがあったことや、CS組織もかなり大きくなってきたことを受け、より効果的な運用をしていくために、このタイミングでヘルススコアをリニューアルすることを決めました!

今回の大きな見直しポイントは2点です。

1.ヘルススコアとCSMのアクションが連動してしている状態をつくる

これはあるあるだと思うのですが、結局ヘルススコアをつくっても現場のアクションと連動していない状態だといつの間にか使われなくなってしまうんですよね。顧客数もCSM(カスタマーサクセスマネージャー)も増えていくなかで、誰もが同じ品質で顧客サポートができる状態にするには「スコアを見ればとるべきアクションがわかる」状態になることが必要だと考えリニューアルに踏み切りました。

2.あるべき顧客体験に沿ったスコア設計にする

直近2年ほどでカオナビはいくつもの機能アップデートを重ねてきました。当然提供できる顧客体験も進化していくわけですが、スコアのリニューアルが追いついておらず、実態との乖離が起きている状態でした。改めて顧客に体験してほしいストーリーを描きなおしスコアを連動させていく、スコアを達成すれば、顧客が目指すべきGOALを達成できる状態を作りたいと考えました。

どのように設計を進めたか

では実際どのように設計を進めたか、大まかには以下の6STEPで検討を進めていきました。

  1. 目的の認識合わせ

  2. あるべき顧客状態を定義する

  3. 指標の洗い出しと絞り込み

  4. スコアリング

  5. スコアの妥当性検証

  6. 実装

1.目的の認識合わせ

まずリニューアルに踏み切る前に、ヘルススコアがなぜ必要なのか、ヘルススコアをつかってどうなりたいのかということをプロジェクトメンバーで話し合いました。

結論カオナビ社のヘルススコアは「解約抑止」のためのスコアとすることにしました。もちろんアップセルの検知に使えるのでは?という意見も上がったりはしましたが、あれもこれも…となってしまうと見るべき項目も複雑化しメッセージもブレます。そのため目的は1つに絞ることにしました。

2.あるべき顧客状態を定義する

次に、どんな状態になったら顧客が解約しない状態といえるのか、DEARフレームの観点を参考に整理していきました。(DEARフレームワークとはGainsight社が提唱するヘルススコアを測定する際に用いるフレームワークのことです!)

▲ALL STAR SAAS BLOG【SaaS CS集中講座 第4回】ヘルススコアの基礎知識と設計プロセス、運用のポイントは?より

カオナビのヘルススコアではまずはDeployment、Engabement、Adoptionの3つを定義することに決めました。ROI(製品の価値を感じているか)という観点については今持っているデータで取ることが難しいため、初期スコープからは除外しています。

下記にカオナビでのDEARフレームの考え方をまとめていきます。

Deployment:『ユーザーが正しく利用開始できている状態とは何か』
正しく利用開始できている状態を『一般従業員に従業員データベースを公開した状態』とし、これをオンボード完了の定義とすることにしました。一般従業員にとっての必要ツールになることが解約抑止に直結すると考えているためです。

Engagement:『ステークホルダーとエンゲージできている状態とは何か』
下記3つの要素が揃ってエンゲージしている状態といえると定義しました。

  1. 顧客の能動的なアクションがあること(セミナーやコミュニティへの参加、サポートデスクの利用など)

  2. CSMからの能動的なアクションがあること(一定期間のなかでMTGや電話などで顧客と接点が持てているか)

  3. キーマンとリレーションがつくれていること(契約責任者のありたい姿がヒアリングでき活用提案ができているか)

これはカオナビ社からのサポート活動だけではなく、お客様自身のアクションも促していきたいという意思を込めています。

Adoption:『製品を広く/深く活用してくれている状態とは何か』
カオナビでデータを一元化するだけに留まらず、定期的に従業員データが更新がされ常にデータが最新状態になっている、さらには人材情報の可視化分析まで行えている状態と定義しました。

3.見るべき指標の洗い出しと絞り込み

あるべきGOAL状態が決まったら、Deployment、Engagement、Adoptionそれぞれの観点で見るべき指標を精査していきます。

絞り込みの手順は…

現場感覚を元に”解約抑止”に効く項目を絞る
ヘルススコアの目的は「解約抑止」なので、様々ある指標のなかでもこれは解約抑止において大切だろうというもののみに絞っていきます。色々残したくなるのですが、目的に立ち返って判断!を忘れずに…(教訓)

計測可能なものに絞る
そもそも数値として取れないものに関しては除外していきます。

ただし、現在取っていない情報でも、取るべき情報に関しては残していき、開発チームとも調整をしていきました。例えばDeploymentにおける具体的な考え方は下記のようなイメージです。

ユーザーが正しく利用開始できている状態=『一般従業員にデータベースを公開した状態』を達成するために必要な項目を現場感覚を元に洗い出し、各項目の完了状態を計測する方法を洗い出していきます。

▼Deployment 利用開始に必要なタスク一覧と計測方法イメージ

※顧客データに関して、当社の利用規約に準拠しデータ内容閲覧不可、データ量のみを計測しています

また、本筋から外れますがこの項目一覧は初期設定ガイドとも連動したかたちにしており、ガイドに沿ってカオナビの設定を進めていけば、オンボードが完了しヘルススコアも上がる設計になっています。ユーザー体験とCSMの体験とスコアが連動することを強く意識しています!

4.スコアリング

項目が決まったら各指標の配点(重み付け)を決めスコアリングしていきます。解約への影響度の高いものは配点を高く、影響度の中/低のものは配点を低くし、全部で100点になるように設計しました。

配点バランスは後から調整する前提でここでは現場感覚を元に重みづけをしていきます。

5.スコアの妥当性検証

スコアリングまで完了したら、ヘルススコアとしての精度を高めていくために解約との相関や、各指標のクリア率割合を調査し閾値や配点の微調整をしていきました。

妥当性検証ポイント➀:解約との相関調査
この設定ができていないと解約が起きやすいのでは?という仮説を元に設計した各指標について解約との相関を確かめていきます。特に相関の強い項目は配点を上げたりと微調整はしましたが、大体は現場感と合っている感覚でした。検証データが十分に蓄積されていない場合は現場感覚でまずは走ってみるのも一つかなと思います。

妥当性検証ポイント➁:各指標のクリア率(難易度)調査
各指標のクリア率を見ながら難易度を調整していきます。難易度が高すぎても低すぎてもいけないので、指標によりますがバランスを見つつ7割ほどがクリアできている状態になるように閾値を調整しました。今回は解約予備軍の洗い出しが目的なので、クリア率の閾値はあえて少し高めです。

6.実装

解約との相関も出て、確からしい数字になったところでいよいよ実装へ。
カオナビではVisualforce(Salesforceにプログラムを書いて好きな機能を追加できる)を使って可視化しています。

実際の画面イメージを少しだけ…

スコアの推移や各項目のクリア率がパっと見れるようになっています(こちらはSalesforceに精通したメンバーが作成してくれました。大感謝…!)。週次でデータが最新化される仕組みで、CSMは日々このヘルススコア画面を見て顧客状態を確認しています。

また日々のモニタリングはSalesforceのダッシュボードを活用し以下の要素を見える化しています。

  • スコア割合

  • スコア分布

  • 各項目クリア率

  • 担当ごとのスコア平均

またこれらを組織ごと、個人ごとで見れるように設計し個人のCS活動はもちろん、組織のマネジメントにおいても活用できる状態にしています。

▼ダッシュボードイメージ

まとめとヘルススコアリニューアルで見えた兆し

今日はヘルススコアリニューアルに至るまでの過程をご紹介してみました!同じようなお悩みをお持ちの方の少しでも参考になれば嬉しいです。

noteを書きながら、ヘルススコアの検討だけに限った話ではないですが「目的に立ち返る」って大事だなーと感じました。この手の議論は検討が進むほど各論に走りがちで…私も何度も横道に逸れては戻ってきてを繰り返していました(汗)

「迷ったら目的に立ち返る」念仏…念仏…

そして常に目的に対して今の運用が正しいのか?と現状を疑う視点も大切ですね。当然プロダクトも組織も変化していくものです。その変化に柔軟に対応していくこと、今のやり方に固執しすぎないこともヘルススコア運用の肝になると思っています。

紆余曲折しながら作り上げたヘルススコアですが、見るべき指標が共通化されたことで、顧客対応の優先度とやるべきことが明らかになったと感じています。

実際に顧客対応をしているメンバーからも
「危ない顧客が明らかになり、解約が決定する前にアプローチできた!」
「顧客が何に躓いているかわかるので、ヘルススコアを元に提案ができるようになった!」
などなど嬉しいお声をいただけるようになりました。

また、結果としても解約率改善に寄与することができ、守りの基盤として価値を発揮できている手ごたえを感じています💪✨

次回予告

次回はヘルススコアの運用について詳しく書いていこうと思います!
アラート設計についてや、現場への浸透策、さらにはKPI検討まで…むしろヘルススコアにおいて何より重要なのは、運用をいかに回すかということだと思っています。

私たちも試行錯誤のなかですが、等身大の取組みをお伝えできれば・・・!
それではまた次回に!お読みいただきありがとうございました。

書いた人