緊急車両と一般車の事故

令和6年2月22日午前7時頃、大阪府守口市の交差点で、緊急走行中のパトカーと一般車両が出合い頭に衝突する事故が発生し、乗用車を運転していた40代の男性が胸を打ち、病院に搬送されました(意識あり)。

この事故の発生の瞬間を映したドライブレコーダーがX(旧Twitter)に投稿され、リプ欄では物議が醸されています。この点について、今回、徹底解説したいと思います。

【1】緊急走行中のルール
緊急走行と言えば、道交法が適用されないと想像される方も多いと思いますが、これは誤りです。確かに、免除される義務も多いですが、全てが免除されるわけではありません。詳しくは別の記事で解説しようと思うため、今回は、関係する部分のみに絞って解説します。

道交法39条2項では、緊急車両は、「法令の規定により停止しなければならない場合においても、停止することを要しない」と規定されています。「法令の…ない場合」とは、具体的には、一時停止標識や赤信号による停止義務のことを指します。この規定により、緊急車両は、赤信号でも交差点を通過することができます。しかし、この規定には続きがあります。

この場合においては、他の交通に注意して徐行しなければならない

文字通り、赤信号で通過する場合には、注意義務徐行義務が課されます。これは、緊急車両への優先義務が無い歩行者等の存在や優先義務が守られずに交差点に進入してくる他の交通が考えられる為です。つまり、赤信号を通過することは出来ても、これらの義務は当然に課せられているわけです。

また、道交法41条では、緊急車両が免除される規定が列挙されていますが、道交法36条4項に定める、交差点侵入時の注意義務安全運転義務は含まれていませんので、このことからも同様のことが言えます。

【2】過失割合
緊急車両(赤信号)と一般車両(青信号)が交差点の出会い頭で衝突した場合、基本過失割合は、緊急車両:一般車両=2:8となります。

これは、前述した義務が緊急車両側に課せられているが故に、緊急車両にも多少の過失責任が認められています。しかし、一般車両は、注意義務・安全運転義務に加えて、緊急車両に対する優先義務が課せられている為、当然、緊急車両よりも過失が大きくなります。

もちろん、この過失割合は、「基本」である為、諸般の事情により修正され得ることに十分注意してください。

【3】緊急車両の運転講習・指導
法的な義務ではありませんが、各組織では、緊急車両を運転する者に対して、特別な講習・指導を実施しています。その中で、赤信号通過時には、一時停止をし、安全確認を実施するように指導が行われるケースが多いです。これは、緊急車両の事故が、交差点で最も多く発生しており、最も危険な場所・場所である為です。何度も申し上げますが、あくまで講習・指導における話であり、法的な義務ではないことに注意してください。

【4】まとめ
このように、あらゆる義務が免除されている緊急車両であっても、安全運転を行う義務は免除されていません。しかし、だからと言って緊急車両が安全運転をしてくれると過信した運転をしてはいけません。この二つの観点が混合したことによって、今回の事故に対して、物議が醸されています。法的義務と道徳(安全運転)上のマナーを区別して、検討することが重要です。

参照
https://x.com/neyajin99/status/1760435543496925446?s=20
道路交通法 | e-Gov法令検索
syobo14_02B.pdf (ff-inc.co.jp)
kinnkyuujidousya_sanitized.pdf (city.kofu.yamanashi.jp)
緊急自動車の交通事故防止について/茨城県警察 (pref.ibaraki.jp)

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