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水泳指導 できなくって困ってた成人女性編 バタフライ編

カッコよく「バタフライで泳ぎたい!」
これは水泳を趣味として始めたばかりの人には憧れる方が多いようである。

一昔前には、有名な女性俳優…ってか吉永小百合さんの出演するCMで
バタフライを泳いでるのがあったりして特に人気があった。

そんな頃、
ある新設の、公共のプールへ転勤になりバタフライ指導を担当することになった
初レッスン 2レーンに20名以上の方が集まった

始まる直前の会話で
皆さん、バタフライには憧れるものの「あれは疲れるからなぁ…」と言う声が多く
やや自信のある方、中心のレッスンという位置付けのようだった

新任コーチの初レッスンとのことで、10名以上の方がジャグジーに浸かりながら
興味深げにこちらを見ている
レッスンのレーンではないが、隣のレーンの人も数名
あまり泳がずにこちらに注目
参加者含めどうも潜在的に35名以上の方が関心があるようだ…

ちょっと緊張する気持ちもあったが
「今日は、楽に泳げる魔法のバタフライをお伝えさせていただきます」
「レッスンの内容は、これまでのコーチとずいぶん違うかも知れませんが
皆さんに魔法をかける為なので、30分騙されながら泳いでみてください」
と言ってみたら
揃って声を上げて笑ってくれた
さすが、大阪のおっちゃんおばちゃんw

ツカミはオッケーと言うことでレッスンを進める……

レッスン後…
結構な人数が引き続き個人で練習している…

私は、ジャグジーで体を休めながら
近くにいた先ほどまでレッスンに参加してくれていた
60代くらいの男性に

「皆さん熱心ですよねぇ…あんなに大勢レッスン後も
まだ練習してるし…」と話しかけると
「いやぁ、今までのレッスンだとしんどくて終わった後は
みんなすぐ帰ってたんやで、コーチの魔法が効いて今日は
全然疲れなかったから、みんな続けて泳いでるんや」との返事、
すると近くにいた別のおっちゃんが
「バタフライで疲れへんって?みんな上手やねんなぁ
俺なんか見よう見まねで3カキもすりゃすぐ疲れるでぇ」と
割って入ってきた……大阪スタイルw

すると先ほどの男性
「このコーチのレッスン受けたらそんなことないでぇ
簡単やし楽に泳げるんや」
「そうなん!!来週のレッスン入ってみよ」とは、
さらに会話に割って入ってきたご婦人の声…
参加へのお礼もそこそこに
次の準備へ向かった…

翌週、
「おいおいおいおいお…ちょっと多すぎないか?」とは、わたしの心の声
レッスン開始に合わせて2レーンに40名くらい集まって待っている

私は、監視員を呼んでインカムを借り
事務所でデスクワーク中の支配人に3レーン使う許可を取り付ける
ちょうど、市のお偉いさん?ってか担当局の係の人も来ていて
ギャラリーへ様子を観に来られた

開始直前、50名近い参加者
正直、3レーンでも狭い…が、ぶつからないようにお互いに気をつけるよう
注意を述べてからスタート

レッスン後、
終わるまで待ってくれていた市役所の方にも声をかけていただき
支配人もご機嫌な様子…で
「個人レッスンのコースを増やして担当してほしい」と要請を受けた…

……「既に、月100時間近くレッスン(水に入る)してるんだけど…」とは私の心の声
結局、新たなプログラムを空き時間へ入れるための調整を
支配人と話し合い、計画書を作成(自分で自分の首を絞めてる気分)
市の担当局へ提出できる段取りを取る

すぐに、承認されて
個人レッスンの新コース受付開始…
申込書には「バタフライ希望の声が9割」
水泳初挑戦の方が1割ってか
定員10名ですけど倍くらい申し込み…正直、期待値が高くて…ちょっと重い…
実際のところ体もテンションも重い…のだが切り替えて
当日のレッスンスタート

個人レッスンは60分、合計4回(週1回)
個々に
ヒアリングすると
「いつも30分のレッスンでバタフライを受けているがもっと教わりたい」8名
「他所のスクールで5年通っているがずっとバタフライが泳ぎきれないのが悩み
友人がここのプールで習い始めて
すぐに泳げるようになったと聞いて申し込んでみた」1名
「水が怖くてプールが初めてだが、ここのコーチなら魔法が使えてバタフライが泳げるようになると聞いた…」1名
「えっと…ナニソレ、マホウってナンデスカ……誰だ〜受け付けたのは…
バタフライノレッスンデスヨ…」心の底からの怒りの声…もちろん声には出さない…


1週目のレッスン
いつもの8名…こちらは問題なし
慌ててネタを開放しないように…(自分が飽きてしまうから)
いつもより念入りに個人アドバイスを増やして、
且つうるさくない程度にレッスンすれば良し

悩みの婦人…
5年もやっているとのことであらかたの練習方法は
受けてきたということだが、普段通っているスクールが割れているので
内容も見当が付く…つまり行き詰まりやすいポイントも
予測がつく…
しかし、魔法には、かなり懐疑的なご様子
まあ、5年でできないって真剣に悩んでるならそうなるかなぁ
とりあえず、ポイントを絞って魔法をかける
癖がつきすぎてて魔法もかかりにくいが
念入りに
バタフライにありがちな誤解を解いていく

問題は、プール初めてのご婦人…
「魔法………どこまで拡大解釈すればそうなる…」とは心の声
とりあえずプールサイドに座るところからスタート
歩く練習も手を取って行う…徐々に一人で歩けるようになってきた
このご婦人、身長はそこまで高くないが、
この段階では、間違えても顔をつけようとしないように
重々、言含めておく
歩けると次のチャレンジで顔をつけたがるが…
これは怖い思いをするので必ず補助付きで始める
顔をつけようとすると重心が前にずれて足が浮きやすくなる
バランスが崩れると水の中だろうと陸だろうと転ける
そもそも怖いのを堪えて水に入っているのに転けると
マイナス100から再スタートになりかねない…
いやぁ…バタフライ完泳は果てしなく遠い…


そんなこんなの4週目
いつもの8名…
「50メートル泳いでも疲れない」と
テンション高めで喜び合っている
 心の声、「ヨシヨシ、これなら成功でしょう」

悩めるご婦人…
3週目にバッチリ魔法がかかって25m完泳 5年目にして初!
4週目には、バタフライのターンも覚えて50mに到達
ご婦人からは、涙しながら感謝を述べられた…
 心の声、「本当は今までたくさん練習してきたから
 ちょっとのスパイスで出来たんですけど…」

問題のご婦人…
なんと、クロールで泳げるように…
まあ、10~12.5mだけど
息継ぎも1回挟むくらいならなんとか崩れないかなぁってところ
本人も大喜び…
 心の声、「よくやった、自分…よくやった、バタフライの指導するつもりだったからびっくりしたけど…なんか違うけど…十分だろう」

反省、ツカミのために
大仰にアピールしすぎた…
まあ結果オーライということで…

指導は一つではない
レッスンを受けに来る人の数だけある
常に成功するわけではないが
共通の目標を持ち共通の言語があれば
コーチはできる

ここでいう共通の言語は、母国語とかではなく
その人が普段使いする言葉に噛み砕くということである。
だから、その人のボキャブラリーを知るためにも
関心の高いことを知る(例えで使いやすい)ためにも
コミュニケーションが必要だ

精一杯の努力には
給料以外にも感動の支給がある
年間1000時間をはるかに越える入水レッスンを
長年続けたせいで
もう、健康でいられないようだが
懐かしい良い思い出である




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