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都市圏の空きビルが住宅に転用されコワーキングができると:今日のアウトテイク#240(2024-07-15)

<アウトテイク>
・SNSに投稿するのではなく、これを自分SNSとした投稿
・記事として仕上げる前の思索の断片、または下書き
・一部、筆が乗ってきて文字数多いのもあり〼
・たまに過去に書いたネタを展開する場合も
・コワーキング関連のネタが多め
・要するに「伊藤の現在地点」
・いずれKindle本にまとめる予定


#今日のBGM

※昨日、あるオンラインイベントでこのバンドの名前が出たので聴いてみた。これはなんと、2000年の曲らしく、ずいぶん長いキャリアのバンドだった。今まで全然シラナカッタ。いい感じね。

#今日のコトバ

"ジャズは一人の天才の孤独な作業によっては生じない。が、本当の演奏者達の精神は、なにげなくはじめられた一つの貧乏ゆすりからでもジャズをひき出してみせるだろう。"
(山下洋輔)

#都市圏の空きビルが住宅に転用されコワーキングができると

昨日、アメリカのコワーキング分布が徐々に郊外へと移ってることを書いたところだが、

ワシントンD.C.では、空きオフィスビルを住宅やその他の商業スペースに変換することを計画しているという記事があったので共有する。

ニューヨークやサンフランシスコなどアメリカの大都市のオフィスビルの空室率はどんどん上がり続けている。つい6日前も、サンフランシスコのオフィスの空室率が37%に急上昇したというリポートもあったところ。

サンフランシスコのオフィスはパンデミック以前は稼働率100%だった。しかし、COVID-19の大流行により、多くの企業が経費節減のために賃貸契約を破棄したり、あるいは在宅勤務を受け入れることで、オフィススペースの継続利用を断念した。

ところが、それでリモートワークの実現可能性と費用対効果に気づいた。2021年と2022年に規制が撤廃された後も、リモートワークやハイブリッドワークが常態化して多くの企業がオフィスを使用しなくなった。

他に景気の先行き不透明感、高インフレ、保険料の上昇、AIと自動化の台頭、eコマースの継続的な台頭、犯罪率の上昇などの複合的な原因があるが、2022年10月から本格化したハイテク業界の大量解雇がこれに拍車をかけ、大規模な複合オフィスや長期賃貸の必要性を一気に消し去ってしまった。

2023年の第2四半期には、シリコンバレーの長年の有力企業であるグーグル、アマゾン、インテル、リフト、ヤフー、メタ 、セールスフォースから数万人の削減が行われ、市内の企業でも多くの企業、非技術系企業のレイオフ が行われた。

この一連のプロセスはサンフランシスコに限らず、全米の(というか、世界中の、いずれ日本も)大都市で大なり小なり起こっている。

ピッツバーグのオフィスの空室率は3月時点で27%だったが、2028年までに50%の空室率と多数の差し押さえが予測されるというからオソロシイ。

一方、ボストンは2029年までにオフィススペースの価値は20~30%、商業不動産価格全体では12~18%下落すると予想され、今後5年間で累積12億~15億ドルの収益不足に直面することになるらしい。これまたなんと。


そんな中、ワシントンD.C.は、空きオフィスビルを住宅や小売スペース、レストラン、ホテルなどの他の用途に転換する「Office to Anything=オフィスを他のものに」プログラムを発表した。リモートワーカーに対応しダウンタウンを活性化するための施策だが、このプログラムでは15年間の固定資産税が凍結される。それはスゴイ。

ワシントンDCの政府庁舎は職員のリモートワークが増えたせいで空っぽになり、公共建築物改革委員会(PBRB)の調査によると、首都の本部スペースは平均12%しか使用されていない、というオドロキの事実については先日書いた。

こうした実情から空っぽのオフィスビルを他に転用するというアイデアは、すでに実は他の都市でも始まっている。

オフィスの空室率が4月にほぼ20%に達したテキサス州オースティンでも、住宅への転換を図ろうとしている。

シカゴの今年第2四半期のオフィス空室率は16.3%で、全米平均の13.8%を大きく上回っている。同市は、オフィスを住宅やホテルに転換する不動産開発業者に1億5000万ドルの補助金を交付する計画を発表した。

まさに「Office to Anything」。このプログラムはもっと広がる気配がする。

で、ちょっと考えた。

こうしたプログラムが実現すると、ダウンタウン(都市圏)に住むワーカーが増え、町に活気も戻るだろうが、これ、見方を変えると郊外型コワーキングの「職住近接」の逆を行く、都市圏型コワーキングの「職住近接」の萌芽となるのではないか。

これまでも何度も書いてるが、パンデミック以降、通勤しなくなったため、自宅に近いところでワークスペースを必要とするワーカーが増え、結果的に生活圏内にある郊外型コワーキングスペースが世界中で増えている。

もし、ダウンタウンにワーカーが戻って来るとしても、オフィスには戻らない可能性は高いと思う。だとしたら、オフィスから住宅に転換した建物内に共用ワークスペース、つまりコワーキングスペースが開設されるのは自然の流れだろう。

事実、ニューヨークの高級アパートメントにはすでにコワーキングが必須となっている。

郊外に住むワーカーが自宅の近隣のコワーキングを使うのと同じく、都市圏に住むワーカーのそばにもコワーキングが整備されていく、次はきっとそういうフェーズなのだろう。デベロッパーはそこも織り込み済みで開発していくのではないかしらね。

そうすると、今のところ郊外へ移りつつあるコワーキングの分布も、都市圏に戻る可能性があるかもしれない。オモシロイですね。ただし、あくまでそれは企業が商業用物件を賃貸するオフィスではない。ワーカーが共用で利用するコワーキングスペースだ。

いずれにしても生活圏内にコワーキングが求められることに変わりはない。


ちなみに、昨日の記事によるとワシントンD.C.は、この第2四半期のコワーキングスペース数は258箇所で、前四半期より13個所増えている。今後、コワーキングは当分の間増え続けるのは間違いない。これはワシントンD.C.に限らない。

そして、ワーカーの生活の拠点がどこであるか、そこを起点にコワーキングが整備されていく。そうして、健全にワークライフバランスが図られる。リモートワークがそれを可能にした。そのことに気づいた企業もワーカーも今後、これを放棄することはないだろう。したら、ちょっと神経を疑うなぁ。

ということで、今日はこのへんで。

(カバー画像:Vlad Tchompalov


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