「修理する権利」をコワーキングで行使することについて:今日のアウトテイク#244(2024-07-19)
<アウトテイク>
・SNSに投稿するのではなく、これを自分SNSとした投稿
・記事として仕上げる前の思索の断片、または下書き
・一部、筆が乗ってきて文字数多いのもあり〼
・たまに過去に書いたネタを展開する場合も
・コワーキング関連のネタが多め
・要するに「伊藤の現在地点」
・いずれKindle本にまとめる予定
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#「修理する権利」をコワーキングで行使することについて
モノを捨てないで修理しようという動きがイギリス中で盛んになっている、という記事が非常に楽しいので共有する。もちろん、コワーキングにも絡む。
以下、ザクっと概要を。
オランダで2009年に始まったリペアカフェ運動や EU が施行した「Right to Repair(修理する権利)」法に触発され、英国全土で市民ボランティアが修理を行うリペアカフェの新たな文化が広がっている。
「修理する権利」については、社会運動のひとつとしてここでも書いた。
例えば、St Margaret’s House では、1970年代のラジオやコーヒーメーカー、トースターなどが修理のために持ち込まれている。
また、Restart Projectでは、女性に芝刈り機からランプまであらゆるものの修理方法を教える修理スキルシェア「Rosie the Restarter」を実施している。
Tech-Takebackでも小学生に基本的な電気トラブルシューティングと修理スキルを教えるワークショップを開講する一方で、回収した家電を寄付するチャリティも行っている。
また、Share and Repair Bathでは、修理の傍ら、低所得家庭への寄付プロジェクトや、小学生を対象とした廃棄物の削減と修理のトレーニングも行っているが、併せて、空気清浄機からカーペットクリーナーまで、貸し出し可能な電気製品のライブラリーを備えたハイストリートショップを併設している。ここは、2017年に定年退職した女性が起ち上げたショップだ。
そうかと思うと、RE:MAKE NEWPORTでは電気製品を含む家庭用品を改修のために寄付する店とつながっていて、失業後の復職ルートとして地元の人々に修理技術を教える無料イベントを開催している。
さらに、Unbroken Solutionsでは電気製品や電子機器廃棄物に取り組むベストプラクティスの事例を記録するカツドウをしている。
よく読むとこのプロジェクトは、長年にわたってアメリカに制裁されてきたキューバに、モノをサルベージして修理する文化が根づいたことに端を発しているらしい。
もうここまで来ると、一部の酔狂が勝手に騒いでいるのではなく、立派な住民運動、いや、社会運動として成立している。その証拠に、こうした施設がイギリス国内に580箇所(!)もある。
「修理する権利」は、そもそも「壊れたら新品に買い換えろ」というメーカーの姿勢に疑問を投げかけたことから始まっている。これまで修理はメーカーもしくはメーカーが指定した業者にしかさせない、パーツは純正品しか許さない、という条件下で当然修理費が高く設定されてきた。すると、「修理するより買った方が安い」となり、どんどん破棄されることになった。要するに一部の企業の利益のためにいろんなもの(地球もそのひとつ)が犠牲になっていたわけだ。
ちなみにイギリスは平均して1年間に36,681トン、1世帯あたり1kgの家庭用電気・電子機器を廃棄しているとか。修理文化の復活は環境にも貢献するし、廃棄物の削減と再利用により炭素排出削減が期待されている。
ただ、1990年代以降、洋服や電気製品の修理や改修を行うショップが減少しているため技術が不足している、と。ここでも人手不足だが、別のリポートでは2030年までに英国内で3万人の雇用を生むとも予測されている。そうなってほしいと、他人さまの国のことだが思ってしまう。
あるいは、捨てずに修理するという行為を通して、修理を依頼する者と修理する者、あるいは修理する者同士が、一緒に物を修理し、役に立っていると感じることで本当の「仲間意識」も生まれているという。これなんかは、副次効果とはいえ、人間の持つ本性そのもので非常に喜ばしい。
そして、そんな多くの人々のカツドウが続く中、2021年、欧州の活動家グループ「Right to Repair Europe」のキャンペーンにより、冷蔵庫、ランプ、テレビ、ディスプレイ・ユニット、食器洗い機、洗濯機に対する欧州初の「修理する権利」措置が発効した。スバラシイ。
余談だが、ここのサイトの画像がいい。「使い捨て商品はもう要らない」「ゴミにするのはやめよう」と書かれたプラカードを持って、「私たちは、修理にまつわるシステム変革を推進する欧州の組織の連合体です」と主張している。積み上げられた修理品(元廃棄品)がその主張を判りやすく象徴している。
ついでに、この記事のカバー画像はThe Restart Projectのトップページから拝借しているが、右のマニキュアが剥げながらも修理しているのは明らかに女性だ。とてもいい写真。クリックすると拡大するので、ぜひ見ていただきたい。
こうした動きを受けて、マイクロソフト、アップル、グーグルなど巨大テック企業は「修理する権利」への対応を始めた。遅きに失したとはこのことだろうが、それでもまだまだ十分ではない模様。
なお、米のニューヨーク州でも、2022年6月に電子機器を対象にした「修理する権利」を定める法案を可決している。
で、いつものように、では日本はどうなのかと振り返っていろいろ調べてみたが、今のところ、全然、進んでいない。実は法律の壁が立ちはだかっている。
詳しくはこちらを参照いただきたい。
要するに、「技術基準適合証明(いわゆる技適)」マークの付いた機器を、資格を持たない個人が修理すると電波法違反に問われる可能性があるらしい。バカバカしいと思いません?なんで、そんな法律がいまどきあるのだろう。どこかの誰かの既得権益が守られてるとしか思えない。
ところで、ここまで2,900文字余りも費やして長々と書いてきたのも、この「修理したもの」を「共有」し、その方法も「教え合う」というカツドウは、コワーキング曼荼羅にある「シェアリングエコノミー」であり、「学び」でもある、ということを言いたかったから。
コワーキングがシェアリングエコノミーのひとつの方法論としてリペアカフェをやっても全然いいと思うのだがどうだろう。
例えば、コワーキングには仕事をするためにパソコンを持ち込む人が多いが、その中には壊れてしまったパソコンを持て余している人もいるはず。いや、多いはず。なら、それを修理してまた誰かが使えるようにする。
あるいは壊れていないけれども使わなくなったパソコンでもいい。それを、調整して使いたい人に貸し出す、もしくは安価で誰かに提供する。パソコンでなくとも、スマホやタブレットでもいい。いや、電子機器に限らず、この記事にもあったが衣服や家庭用品でもいい。
もちろん、古物商許可とかの手続きは必要だが、ま、それも取ればいいだけの話だ。それより、必要としている人と共有する、シェアする、というカツドウが、コワーキングにあってもいいのではないか。
コワーキングの基本理念の根幹は「相互扶助」、つまり助け合いだ。シェアリングエコノミーはその考えにマッチする。というか、コワーキング(Coworking)自体がシェアのひとつの形態だから、このアイデアは親和性が高いと思う。
実は、カフーツにも使わなくなったWindowsPCが、えーと、5〜6台ある。Macも3台。あれを再生して活用してもらえればウレシイ。
ついでに、リペア教室もあったら尚いい。教え、学ぶ場としてのコワーキングを大いに使ってもらいたい。
そうして、「修理する権利」をコワーキングという仕組みを利用して行使する。いいんじゃないでしょうか。
あ、そうか、パソコン修理をしているワーカーさんとコラボすればいいいのか。そうですね。
ということで、今日はこのへんで。
(カバー画像:restartproject.org)
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